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イタリアデザインの行方
私たちの年代が魅了されたイタリアデザインは、すでに過去のものとなった。今年のサローネの印象を45年間ミラノで活躍するデザイナー蓮池槇郎氏に尋ねると、「最後の足掻きだ」と冷ややかな返答が返ってきた。私は、2015年に開催予定されているミラノEXPO (テーマ : 地球を養う、生活のためのエネルギー、プロデューサー : ステファノ・ボエリ)に向けて、イタリアデザイン界は巻き返しに出ると予測している。また、そうあって欲しい。イタリアのモノづくりの現場は中国ほか他国に移っているが、確かなモノづくりとセンスはまだ歴然と残っている。これからもイタリアの底力を信じたい。
今回、フィエラ、フォリ等を限られた時間内で視察し目についたのは、メンフィスデザインの復活だ。リナシェンテデパートの地下一階のデザインストアでは復刻モデルが販売されていた。市内を歩くとカンペールのショップで什器として使われていた[写真1]。他の店舗でも80年代メンフィス風デザインが目についた。
イタリアデザイン界が出口を求め80年の全盛時代を取り戻したいという気持ちは分からないでもない。また、前回より顕在化し始めた環境への取り組みも興味深い。ハイテクを使わないスタイルは、地球規模での汎用性を考えると重要だ。いずれにしても「DOMUS」誌の編集長に一年限りで復帰したアレッサンドロ・メンディーニ、アンドレア・ブランジ、ミケーレ・デ・ルッキらイタリアデザイン界の重鎮たちの動きに注目したい。
見本市会場
見本市会場フィエラは、クッチーナによる効果もあり予想以上に人出があった。
なかでもパトリシア・ウルキオラの会場デザインのMOROSO、アントニオ・チッテリオによるVITRAのホームスタイリングの提案、フィリップ・スタルクを筆頭に相変わらず存在感を維持するKartell(ブラック&ホワイト)、コンスタンチン・グルチッチ、マルセル・ワンダース、深澤直人ほかトップデザイナーがデザインを提供するMAGIS、いずれもイタリアを代表する会社だけに持ち味をアピールするのには十分な内容・構成だった。
個人的には、ロンドンベースで活躍する安積伸がLapalma社より発表した「AP Stool」が印象深い。本人曰く、柳宗理のバタフライチェアへのオマージュだという。スツールの完成度は高い。
サテリテはすっかり定着し、さらに総合展示コーナーが新たに設置され全貌が見やすくなっていたのが好印象。休憩スペースにおかれたMAGISのトーマス・ヘアールウィックによる轆轤で作られた様な「Spun Chair」に座り楽しむ姿が印象的だった。センプレのオーナー田村昌紀氏のお嬢さん田村奈緒さんがサテリテアワードの最優秀を獲得。この賞は活躍デザイナーの登竜門となっている。
日本企業
日本企業には、もっと奮起して欲しいと思っている。日本の存在が危うくなっている現況で、日本の持つ技術力、デザイン力にプラスして会場、スペース、演出など、さらに完成度を上げて欲しい。ミラノで展示会を行う以上、不透明な日本的感覚ではコミュニケーションが成立しない。明確な見せ方、空間や商品の魅力度、短い時間で回遊する人たちに向けて端的に伝える演出などサローネは完成度を上げないと怖い場所だ。もちろん費用対効果も生まれない。
サローネがモノありきの展示会にしない為にも、日本企業が新たな価値を提供しリーダーシップを取っていく事が大切だと思っている。
来年へ
ミラノサローネは来年で50回目となる。当然、イタリア企業を含め参加企業、更にはオーガナイズするコスミット、メディア各社も自ずと力が入ると思われる。低迷する現況から脱客する為にも強い企業(=提案企業)でなくてはならない。そして魅力あるプレゼンテーションが必要だ。
世界のプロが大挙して集まる場は、未だサローネしかない。この機会を文化的にもビジネス的にも高めて行く事が必要だと、25回目の取材とキヤノンNEOREALのプロデュースを終えて改めて実感している。
デザインの傾向については、百花繚乱。次からのページをご覧下さい。
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※クリックで拡大
 【1】ドーモ前のCAMPER SHOP
 【2】深澤直人/B&B /Piccola Papiliom
 【3】Sakura Adachi/Campeggi/ Trick
 【4】Antonio Citterio/Vitra/Suita
 【5】Philippe Starck/Kartel/Magic hole
 【6】Denis Santachiara/Pallucco/Tabard
 【7】Marcel Wanders/Magis/Sparkling
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