JDNトップ > レポート > 桑沢デザイン塾

桑沢デザイン塾

2001年2期<インテリア>茶室を読む ── 茶室とインテリア ── 5
インテリア・デザイナー 内田 繁
現代デザインに生きる日本文化
自作を通して日本文化の特性を探る


内田氏自身の作品を例に、日本文化の特性が今日のインテリアデザインにどのような影響を与えているのか探っていく最終回。
 

■今また、新たな価値を持つ日本文化
「明治維新以降の日本では、ある時期まで、西洋文化を学ぶことが全ての根本にありました」。
科学技術の発達と生産性を求めた合理化が進む一方で‘世界の無国籍化’が生じたと内田氏は考えています。それに対して「このままでいいのか」という疑問の声が出始めたのが1968年頃だといいます。
「今日の国際シンポジウムでは『自国の文化はどうなのか?』という問いかけが主流です。固有の文化は人類共通の財産で、違うからこそ面白い。だからこそ、今、日本文化は大変な価値を持っているのです」。
 

■体内にある日本
日本の自然環境が日本人の感覚や精神に影響を与えて形成されたのが日本文化。
「私の体内には常に日本というものがあります。肉体の中に沈みこんでいるその感覚は現代のデザインにも無意識のうちに生かされている」。
 
たとえば「『どのような印象で二つの空間を分けるか』が空間づくりのテーマとなる時、日本人的感覚が大きく影響する」。
露地に見られる‘繋ぐ’ための空間。「必ずしも強固な仕切りを必要とせず、二つの空間が交流しながらなんとなく仕切られるという感覚。つまり‘認識の仕切り’が日本の特徴」。
また、坐る、靴を脱ぐという生活習慣が生み出した水平感覚も大きな特徴です。
「現代でも、いろいろなデザイナーが無意識にこうしたデザインを行っています」。
 

■自作を通して
『Yohji Yamamoto』のブティックの内装。五千種の紙を扱う『青山見本帖』。斬新な眼鏡を扱う『ポーカーフェイス』。歯科医院やネイルサロンなど。自作を解説する内田氏。
 
「多種多様な空間を手掛ける中で、様々な条件が出てくる。それらを克服するたびに、普段にはない面白い独自の空間を生み出すことができる」。
 
その過程でも「思わぬ形で‘日本人的感覚’を発見することがあります」。たとえば‘水平感覚’がそうであった、と内田氏は言います。
こうした自己発見から「独特の揺らぎや浮遊感が生まれてくるんです。言い方を変えると、デザインが今日の重力から離れて軽やかな方向に向かう」。
 
「私たちは、このようなもっと微妙なものをとらえる力を回復していった方がよいのではないか」と会場にも呼びかけます。
かつての日本人は百種の黒を見分けていたといいます。無意識の中に閉じ込められてしまったこうした微細な感覚を発見し、現在のデザインに活かしていく。「こうしたことを考え、求めて活動しています」。
 

■‘心の回復’の時代
「デザインとは本来、恋人に花束をプレゼントするようなものだ」。エットーレ・ソットサスの言葉を引いてデザインを説明します。一人の人間を満足させるためのものであって、それが「偶然に他の人にも気に入られればそれでいいじゃないか」。
 
「21世紀は心の回復の時代になる」。
「テクノロジーではない、人間の胸中に大切なものがある。人と人の心と精神のつながり、分かち合う心のコミュニケーションの起こし方を発見できるかどうかが、21世紀のデザインの課題なんです」。
「デザインに関わる人は、その仕組みをじっくり考えていく必要があるだろう」。
 

「20世紀の固定された文化の中に、どうやって自由な独自の変化を与えていくかがこれからのテーマ」。
 
「大量生産によって生み出された顔のないデザインにもう一度人の心を吹き込もう。そして、そのとき必要な材料は、既に私たちの無意識の中に存在している」。
日本人であることの再確認が、これからの時代を切り開く可能性であることを、改めて強調して講座を終えました。
 

2001年7月7日、桑沢デザイン研究所にて
    内田繁氏
内田 繁 氏

 
 
 
 
内田繁氏講演の様子
 
 
 
 
内田繁氏講演の様子
 
 
 
 
内田繁氏講演の様子
 
 
 
 
内田繁氏講演の様子
 
 
 
 
内田繁氏講演の様子


JDNとは広告掲載について求人広告掲載お問合せ個人情報保護基本方針ウェブサイト利用規定サイトマップ
デザインのお仕事コンテスト情報 登竜門展覧会情報

Copyright(c)1997 JDN
このwebサイトの全ての内容について、一切の転載・改変を禁じます。