2020年2月末に栃木駅前にオープンした、木格子が特徴的な「栃木レザー アンテナショップ」。
日本有数の革製造メーカー(タンナー)である、栃木レザー株式会社が新たに立ち上げた店舗について、設計を手がけた丹青社の山田達也さんに、店舗のコンセプトや素材の活かし方などについてお話を聞きました。
■背景
栃木レザー株式会社は、昭和12年9月1日創業以来の歴史を持つ、日本有数のタンナーです。20以上の製造工程で、じっくりと時間をかけ、繊維が崩れないように鞣す*「植物タンニン鞣し」によってつくられる自社ブランドレザー「栃木レザー」をより多くの人に知ってもらい、体験してもらえるような場をつくるため、初のアンテナショップをオープンしました。
*鞣し(なめし=そのままでは腐ったり硬くなってしまう動物の皮を製品に使用できるまでに加工する重要な製造工程のこと)
■コンセプト
店舗は本社(製造工場)の目と鼻の先にある、栃木駅前の建物です。近隣には地域観光資源である蔵の街並みを持つという立地から、「栃木レザーを感じてもらい、地域の活性化にもつながるようなショップ」と位置付けました。コンセプトは「Craftsmanship」とし、栃木レザーという商品はもちろん、職人たちのものづくりに対するこだわりや、地域との調和や活性化を目指す企業姿勢を可視化するため、製造工程や手法からのインスピレーションと地域と親和性のあるマテリアルを用いました。
■手法、特徴
栃木レザーの特性上、紫外線などを避けるという課題があったため、木格子・大谷石・栃の木などの素材を用いながら、格子のピッチを変えることによって店内が見えるウィンドウを配置しました。また、地域へ開かれた場にするという店舗のありかたを示す上でも、蔵の街並みをもつ地域の景観と親和性の高い外観に仕上げながら、石垣のベンチという機能を持たせることによって視認性と誘因性を高めました。
同時に、工場とショップを周るツアーやレザーを使ったワークショップを計画しているので、栃の木を使用した大きなテーブルを前面に配置し、ユーザーとのコミュニケーションによるブランド発信を積極的に行えるようにしました。什器は工場で使用されているものをモチーフとし、ディスプレイには破棄される端材を用い、ショップにおいてもサステイナブルな取り組みを行っています。
また、工場見学+ショップツアー、ワークショップを皮切りに、地域行事、観光事業との連携をとれるスポットとして、より地域の活性化に向けた広がりを計画しています。
事業主 | 栃木レザー |
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所在地 | 栃木県栃木市河合町1302 |
プロジェクトマネジメント | 上柳浩克/丹青社 |
設計 | 山田達也/丹青社 |
施工 | 松下博昭/丹青社 |
構造 | 鉄骨造平屋建て |
敷地面積 | 267.46m2 |
延床面積 | 132.49m2 |
竣工日 | 2020年2月22日 |
撮影 | 御園生大地 |