建物のファサードに大きく描かれた「No limits, No borders」の文字が目を引くこの建物は、カスタムサラダ専門店「CRISP SALAD WORKS」などを展開する株式会社CRISP(以下、CRISP)の新しい拠点となる場所です。
ファサードから感じる会社の強いメッセージを具現化した方法や、どのようにこの空間が誕生したのかなど、設計を担当した丹青社の山田達也さんにお話を伺いました。
■背景
CRISPは、ひとつずつ手づくりで提供するカスタムサラダ専門店「CRISP SALAD WORKS」を主軸とし、デリバリー事業「CRISP DELIVERY」、SaaS事業「CRISP PLATFORM」を展開しています。「レストラン体験を再定義することで、あらゆる場所でリアルなつながりをつくる」をビジョンに、第二創業期の新しい拠点を10月に開業しました。
1Fはデリバリーを主とした店舗、2Fは完全リモートとなったオフィスに変わり、パートナー(従業員)同士やお客さまをはじめ、“CRISPが好き”という気持ちのある人たちが集まれる場としてオープンスペースを設けました。
■コンセプト
空間のコンセプトは“No limits, No borders”です。「本社」といわれていたセクションのパートナーや各店舗で働くパートナー、現在18ある店舗ごとのパートナーとの間で、今までやむなく生まれていた垣根を取り払いたい。また、お客さまとパートナーという関係を越境してつながりをつくることで、「食事を提供することだけでなく、ブランドや食事を通じて人と人とのつながりを生み出す価値の創出」を目指す――そんな熱量が高くてまっすぐなCRISPのアイデンティティが感じられるデザインを施すとともに、コミュニケーションに寄与する体験性を持たせる空間づくりを目指しました。
■手法や特徴
ファサードは1Fから2Fまでの高さを一面とした「メッセージボード」と捉え、店舗のロゴではなく、CRISPという企業として伝えたいことをダイナミックかつストレートに伝えることを目指しました。グリーンのブランドカラーウォールは店舗とオープンスペースをつなぐアイデンティティの可視化という役割を持たせると同時に、フロントサッシと同等の価値をもつ面として、コンセプトワードを設えています。そうすることで、内部だけではなく外部との垣根もなくしていく姿勢を表現しました。

メッセージを大胆に外部へ発信するファサード
1Fの店舗はコミュニケーションツールとして、他店舗やオープンスペースとオンラインでつなぐことができるモニターを導入しています。足元の抜けた手すりなどを用いたフルオープンキッチンとすることで、手づくりのサラダがひとつひとつ作られている様子はもちろん、オンライン・オフラインに関係なくパートナー同士や別店舗とのコミュニケーションが屋内外のお客さまに向けても発信ができる場を目指しました。

フルオープンキッチンの1F
2Fのオープンスペースでは、「食卓を囲む」という食を通したコミュニケーションからインスピレーションを受けた大きなテーブルを設置しました。屋外階段から通じる2Fの出入口付近は内土間とし、屋内外の境界となるバルコニーと室内を隔てるサッシに縁台を設けることで、窓を開けて外向きにも内向きにも座れることを可能にしました。

内土間のある2Fのオープンスペース
空間的な境界をあいまいにしたことで、CRISPという企業を通じて人が集い、活力のあふれるコミュニケーションが生まれ、コミュニティが空間を越えてさらなる広がりを持つことを期待しています。