心を射止めるアイコニックな空間体験―「佐藤可士和展」開催記念トークセッションレポート

丹青社×佐藤可士和×楽天 トークセッション「空間・体験とブランディング」

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心を射止めるアイコニックな空間体験―「佐藤可士和展」開催記念トークセッションレポート

約30年にわたり第一線で活躍してきたクリエイティブディレクター・佐藤可士和の過去最大級となる個展「佐藤可士和展」が、国立新美術館で2021年5月10日まで開催されている。開催を記念し、2月25日に空間づくりを行う丹青社主催のオンライントークセッション「空間・体験とブランディング」が行われた。

トークセッションの登壇者は佐藤可士和さんのほか、佐藤さんとともに楽天のクリエイティブを手がける楽天グループ株式会社の河上洋樹さん、そしてファシリテーターは、同展の見どころの一つである、インタラクティブデジタルインスタレーション「楽天[UNLIMITED SPACE]」の制作サポートを行った丹青社CMIセンターの鈴木朗裕さんが務めた。

この記事では、佐藤さんご本人による本展の見どころや「楽天[UNLIMITED SPACE]」の開発プロセス、空間・体験づくりとそれらを通じたブランディングなどについて語られたトークセッションの様子をレポートする。

理想の空間体験を実現するため、1分の1サイズで検証を進めた展覧会

鈴木朗裕さん(以下、鈴木):まずは「佐藤可士和展」についてうかがいます。ご自身の事務所「SAMURAI」設立から20年。今や日本を代表するクリエイターとしてご活躍中の可士和さんは、企業のブランディングだけでなく病院や幼稚園、エンタメ、ファッション、地場産業など幅広い分野の仕事をされています。本展のキュレーションや会場設計も、可士和さんが中心となって進行されたんですよね。

佐藤可士和さん(以下、佐藤):4年前にオファーを受けて展覧会の準備をしてきたんですが、「クリエイティブディレクション」というものをみなさんに伝えることは、とても難しいなと思いました。そこで、空間を通して感じてもらおうと、いろいろなインスタレーションを考えました。

佐藤可士和

佐藤可士和 クリエイティブディレクター。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て2000年に独立し、同年「SAMURAI」設立。おもな仕事に国立新美術館、ユニクロ、セブン-イレブン、楽天グループ、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、ふじようちえん、カップヌードルミュージアムのトータルプロデュースなど。

鈴木:たとえば「THE LOGO」というスペースでは、圧巻の大きなロゴ作品がずらっと並んでいて見応えがありました。

さまざまなブランドや企業のロゴが並ぶ「THE LOGO」会場写真

佐藤:展示の流れとしては、イントロダクションとして僕の子どもの頃の絵がある小さな部屋から始まり、次がストリートのように長い広告デザインが並ぶ部屋、その次にたくさんのロゴが並ぶ大きな部屋があるんですが、ここに入るとそのスケールからか、「おー!」と驚いてくれる方が多くて嬉しいですね。僕の仕事は楽天をはじめユニクロやセブン-イレブンなど、日常の中で身近なブランドにまつわるものです。しかもロゴはいろんなメディアを通して見ているけれど、データなので実態はない。でもブランド戦略の要だし、僕自身の思い入れもあります。そうしたロゴの重要性や社会の中での存在感を楽しく伝えたいなと思い、巨大化するコンセプトを考えました。

鈴木:可士和さんの作品は、あらゆるものをメディアとして捉え、一貫したイメージを伝える明快なクリエイティビティが印象的ですよね。

鈴木朗裕

鈴木朗裕 株式会社丹青社 CMIセンター 空間メディアプロデュース室 室長。イベント・博覧会から展示施設まで、幅広い分野の空間づくりに携わり、2017年にCMIセンターの立ち上げに参画。空間を体験のメディアととらえ、場づくりのノウハウにテクノロジーやアイデアをクロスした感動体験を創造することで、企業や地域のブランディング、社会のイノベーションに寄与する空間づくりに取り組んでいる。

佐藤:メディアに対して考えるようになったのは、独立する前からです。約11年間、博報堂でアートディレクターとして広告の仕事をしてきましたが、90年代前半はまだインターネットも一般化してないし、スマートフォンはもちろん携帯電話すらなくて、広告展開の場はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌といったマスメディアしかなかった。でも、90年代後半からみんなが携帯を持ち始め、コミュニケーションの取り方が変わってきたなと感じました。そこで新しいコミュニケーション戦略として、独立して一発目のSMAPの仕事で、「街をメディアにする」広告キャンペーンを展開しました。

佐藤可士和展 会場写真

さまざまな広告関連の事例が並ぶ「ADVERTISING AND BEYOND」会場写真。当時街頭で見られたSMAPの広告も並ぶ。

鈴木:なるほど。僕たちが可士和展のプロジェクトにお誘いいただいたのが2018年秋でしたが、最初にアトリエにうかがったとき、すでに会場のモックアップがあって驚きました。

佐藤:国立新美術館の展示スペースは国内最大級で、あらためて見に行ったら、信じられないほど大きくて(苦笑)。ちゃんと埋められるのか、嬉しい反面かなり不安になったんです。それで「これは1分の1で検証しないと」と思い、約300坪のアトリエを借り、実際に美術館と同じ5メートルの壁を建て、作品を全部紙でつくってサイズを検証しました。たとえばユニクロのロゴも、3メートルくらいまではあまり大きく感じないんですが、3.1メートルを越えると体験したことがないようなおもしろいサイズ感になってくるんですよ。最終的には3.5メートル角で決定しました。

こうしたモノの迫力は、模型ではわかりません。そういう現場での空間体験でしか検証できないことってあるんですよね。さらに、ユニクロのロゴは油絵で、今治タオルのロゴは本物のタオルでつくっています。現場に行って、「あ、バスタオルでロゴがつくられてる!」って気付くとおもしろいじゃないですか。美術館はまさに空間体験なので、ぜひ会場に行って見てほしいなと思います。

佐藤可士和展 THE LOGO 会場写真

「THE LOGO」会場写真

鈴木:楽天さんのジャイアントロゴは、河上さんも作品制作に携わっていらっしゃいますよね。

河上洋樹さん(以下、河上):可士和さんから、楽天グループを凝縮したロゴをつくりたいという話をいただき、楽天のたくさんの事業をどうかっこよくまとめようかと、時間をかけてつくっていきました。「R」に抜かれたところに流れる映像には、データの世界やCM、企業の活動が表現されています。

河上洋樹 楽天グループ株式会社 クリエイティブデザイン戦略部 楽天デザインラボ マネージャー。東京芸術大学卒。グループ全社のロゴリブランディングや、FCバルセロナなどのスポーツパートナーシップにおけるブランド露出などのデザインをリード。2018年にデザインラボ設立へ参画。楽天コーポレートブランドのクリエイティブを中心に、ブランドをより好きになってもらうために格闘中。

楽天ジャイアントロゴ

楽天ジャイアントロゴ

佐藤:楽天は扱っているものや関わる分野がさまざまで、本当に世界的に見ても類を見ない企業グループなんですよね。また、インターネット企業ということで、モニターを使って「R」のロゴの中に楽天の宇宙があるというコンセプトにしました。映像も、多様性を伝えつつ見ていて飽きないものになるよう、河上くんに何回もブラッシュアップしてもらって……お疲れさまでした(笑)。

河上:ありがとうございます(笑)。

楽天のテクノロジーを楽しくビジュアライズさせた「UNLIMITED SPACE」

鈴木:次は、「空間・体験とブランディング」というテーマでお話をうかがいます。今回の展覧会で僕たちは、可士和さん、楽天デザインラボさん、楽天技術研究所のみなさんと一緒に、楽天さんのテクノロジーをテーマとしたデジタルインスタレーション作品「UNLIMITED SPACE」を制作させていただきました。

この作品は、展示空間に足を踏み入れると、世界中の楽天サービスサイトにおけるさまざまな検索ワードが楽天のオリジナルフォントで即時に空間に投影され、一人ひとりの人型を形成するというものですが、改めてこの作品のコンセプトについても聞かせていただけますか?

楽天[UNLIMITED SPACE]

楽天[UNLIMITED SPACE]/制作:楽天(楽天デザインラボ/楽天技術研究所)/SAMURAI/the ltd./丹青社/プリズム/テトラ/石田多朗

佐藤:楽天って、たとえば楽天カードマンやお買いものパンダのように、親しみやすいタッチポイントがいっぱいあります。でも実は、その裏側では巨大なすごいシステムが動いているんですよね。それを伝えたいと思い、河上くんとも相談して、楽天のテクノロジーを楽しくビジュアライズする作品を考えました。

鈴木:この作品では、テクノロジーを見せるというコンセプトを表現とどう紐付けるか、かなり工夫されていると思います。

佐藤:たぶん最初は、ぼんやりしていたと思うんですよね。「楽天の裏側には広大なサイバースペースがある」とか「フォントを使いたい」「人間をそのまま表現したい」といった断片的なアイデアを、みんなとキャッチボールしながら「これだったらできるな」とコンセプトを固めていきました。

河上:コンセプトを絞り込んでいくのに苦労しましたが、最終的にはプロトタイピングをしながら自然に導き出されたような気がします。だんだんソリッドになっていく感じが、おもしろかったですね。

鈴木:この作品ではオリジナルの「楽天フォント」を使用しています。これは、どんな経緯から開発されたのでしょうか?

佐藤:僕は楽天の仕事を17年やってきて、初期の頃に楽天フォントを2書体つくりました。その後、事業も広がってきたので、フォントをもっと増やしたいと思っていたんです。そんなとき、楽天デザインラボを立ち上げることになり、河上くんを中心に本格的に進めることができました。

Rakuten Font Family

Rakuten Font Family

河上:楽天の事業領域が広がるなかで、2012年頃につくったフォントだけでは、楽天のブランドをカバーしきれなくなっていました。そこでDalton Maag社というロンドンのフォント会社とタッグを組んで、新たに4種類、各5ウェイト(文字の太さ)のフォントをつくりました。「楽天らしさ」を凝縮した書体なので、これを適用することで、それぞれの事業の個性を伸ばしつつ、楽天ブランドを強くしていきたいと思っています。

鈴木:「楽天[UNLIMITED SPACE]」の制作では、フォントの動かし方から文字の大きさ、量、空間の奥行きなども検討を重ねましたね。

佐藤:展示空間に入ると身体がフォントでスキャンされて、膨大な検索ワードで人型が形成されるわけですが、文字だとわかりつつ人間の形もわかるようにする、そのバランスが難しかったですね。

河上:グラフィックで完成図をつくっても、プログラムに置き換えたときに、そのとおりにならないのがもどかしかったですね。ギリギリまで調整して、最後はかっこよくなったと思います。

鈴木:空間はフィジカルなメディアですが、うまくデジタルと重ね合わせることで、今回のような豊かな体験が表現できることを実感しました。楽天さんのブランド表現という点ではいかがでしたか?

河上:我々にとっても実験的な作品だったので、ブランドを表現するところまでできているかは未知数ですが、楽天のデータの世界を可視化して体験するという新しいトライができたと思っています。

佐藤:三木谷さん(三木谷浩史社長)がこの作品を体験したあと、「これを使って、こういう表現もできるよね」「こういうサービスもできるかもね」って、どんどんアイデアを出していて。作品はそこで完結するものではないけれど、その先の未来の可能性を検証できる。そういう意味で、つくれてよかったなとすごく思っています。

空間体験をアイコニックにつくることが人の心を動かす

鈴木:楽天さんでは近年、空間や体験を使ったブランディングにも取り組まれていますね。

河上:昨年、全国3ヵ所に、楽天モバイルのフラッグシップストアをオープンしました。いわゆる一般的な携帯ショップと違って、この店はすべてペーパーレスで、短時間で契約を完了してすぐにスマホが使えることを目指しています。端末のスペックや価格情報も端末自体に書かれていて、端末を触ることで体験しながら情報を得ることができます。

佐藤:楽天モバイルが目指す先進性やわかりやすさを、空間のデザインや体験に落とし込んでいきましたね。新しいブランドだからできたチャレンジだったと思います。

鈴木:空間の話でいうと、僕が可士和さんとお仕事をさせていただくきっかけとなったのが、2019年にリニューアルオープンしたヤンマーミュージアムでした。先ほども河上さんが、来る人の体験を重視しているとお話されていましたが、ヤンマーミュージアムもまさに体験を重視した空間づくりでしたね。

佐藤:そうですね。ヤンマーも楽天とは違う意味で事業の幅が広くて。農業機械から南極昭和基地で使うエンジンまで扱っていて、そこにはいろいろなチャレンジやテクノロジーがつまっている。それを子どもたちに楽しく知ってもらうミュージアムにしました。

ヤンマーミュージアム

ヤンマーミュージアム 施設写真。丹青社は空間づくりと並行し、ミュージアムのすべてのコンテンツについてテーマ設定から企画・開発・制作まで、一貫したプロデュース/ディレクション体制で推進することで、コンセプトを的確に具現化したコンテンツ制作を行った(総合プロデュース:佐藤可士和、デザイン・設計、制作・施工、展示企画、ソフト/コンテンツ企画・制作、システム設計・制作:丹青社)

鈴木:子どもたちがヤンマーの事業フィールドや目指す社会をテーマにしたコンテンツにチャレンジすることで、企業の哲学を感じて学べるという超体験型のミュージアムで、僕たちにとってもチャレンジングな仕事でした。

佐藤:やっぱり身体感覚というか、空間で体感することってすごく強いと思うんです。空間では、その広さや温度、密度とかも含めて感じるじゃないですか。それってなかなか可視化や言語化しにくいけれど、ものすごい情報量なんです。それがあるから、体験したときにバーンと脳に入ってくる。だから体験型って、ブランドを伝えるのにすごく有効な手段だと思っています。

鈴木:可士和さんはほかにも多くの空間プロジェクトを手がけられていて、昨年は「ユニクロパーク」と「くら寿司」が意匠登録もされました。空間を使ったブランディングをされるときに、特に意識されていることは何ですか?

佐藤:僕は「アイコニック」をキーワードにしています。「アイコニック」とは、シンプルで明快で、一度見たら忘れられないもの、という意味です。「建築」「インテリア」「ランドスケープ」などと分けて考えず、「空間」で体験したことが、アイコンとして記憶に残るように考えてつくっています。

2020年11月から初めて建築物と内装の分野で意匠登録が始まりましたが、何百件もの応募の中から「くら寿司」と「ユニクロパーク」等、4件が第一号案件として選ばれました。これは、コンセプトを的確に表現したアイコニックな空間だから、登録にいたったのだと思います。空間体験はこれから企業にとって資産になるし、それをアイコニックにつくることはブランディングの上でも重要になると思っています。

鈴木:思いを伝えるデザインをするときに、練られたコンセプトがあって、わかりやすいストーリーをつくり、それを空間の中での体験という形で力強くエンゲージしていく。そうしたアイコニックな表現が訪れる人の心を動かすのだなと、お話を聞いて思いました。

リアルとバーチャルの境目がなくなり、新しい体験が生まれる可能性

鈴木:新型コロナウイルスの影響で、非接触のコミュニケーションの選択肢はこれから増えていくと思うのですが、最後に、リアルやバーチャルも含めて、これからの空間や体験で表現してみたいことをそれぞれお聞かせください。

河上:昔とくらべて、ネットだけでモノを買うハードルは下がってきたと思いますが、それでも車を一度も乗らずに買うことは、まだまだ少ないと思うんですよね。大きな決断をするときの不安を払拭するためには、空間や体験がとても大事なので、そこは楽天として今後も力を入れていきたいと思います。また個人的にも、デザインで新しいトライをして、楽天の可能性を拡張していけたらと思います。

佐藤:コロナの影響で、リアルとバーチャルの融合のスピードは速くなっていくと思います。「UNLIMITED SPACE」も、今回は展示なので開けていますが、真っ暗にすると信じられないような没入感があるんです。こういう空間がもっと進化すると、表現の幅も劇的に広がると思う。そのうち「リアル」と「バーチャル」の境目がなくなるかもしれない。そこでは、今までと違う体験が生まれるのかもしれませんね。

鈴木:まったく新しい概念になるかもしれないですね。今日はいろいろお話をうかがって、体験でしか伝わらないことに大きな価値があること、そこでは表現がすごく大事になることを実感しました。今回の展示全体が「体験」の豊かさを感じられる空間になっています。その中でも「UNLIMITED SPACE」のチャレンジは、バーチャルの世界をリアルの中でどうやって表現するか、体験化するかだったと思いますが、ブランディングにもつながっていく成果も出たのであれば本当によかったなと思います。今後もいろんなテクノロジーを使って、より多くの人に届けられる仕事ができればと思います。可士和さん、河上さん、本日はありがとうございました。

佐藤・河上:ありがとうございました。

プロジェクトの“中の人”に聞く

鈴木朗裕(株式会社丹青社 CMIセンター 空間メディアプロデュース室 室長)

「佐藤可士和展」の見どころのひとつでもある「UNLIMITED SPACE」について、作品の魅力や制作におけるプロセスなどをもう少し深掘りしていきたい。本作の制作に携わり、トークセッションのファシリテーターも務めた丹青社の鈴木朗裕さんにお話を聞いた。

楽天[UNLIMITED SPACE]

――改めて、「UNLIMITED SPACE」はどんな作品か教えてください。

鈴木:「UNLIMITED SPACE」は、楽天のブランディング活動の一環として、ネットワークとデータ世界の見えざる仕組みを可視化する試みとして制作した、インタラクティブなデジタルインスタレーション作品です。3メートル×6メートルの両サイド鏡貼りのスペースに投影された楽天の無限のデータ世界「UNLIMITED SPACE」を、国内外の楽天のサービスサイトで検索されている注目ワードと、楽天のオリジナルフォントである「楽天フォント」によって形成し、その仮想世界の中を、鑑賞者一人ひとりをセンシングすることでインタラクティブに、縦横無尽に動き回ることができる作品です。

ネットワークとデータで形成された世界における人の存在を、楽天フォントと人の身体の結びつきによって可視化し、日常では意識することのないデータ世界と私たちのつながりをドラマチックに体験していただけます。

楽天[UNLIMITED SPACE]

――今回、丹青社はどんな部分を手がけたのでしょうか?

鈴木:私たちは可士和さんがお持ちのイメージやコンセプトを作品として具現化する段階から、楽天デザインラボさんや楽天技術研究所のみなさんと共にこの作品制作に携わってきました。

参画当初は可士和さんと楽天デザインラボさんからコンセプトや方向性を伺いながら、楽天技術研究所のみなさんと表現の手法や技術を提案していきましたが、正直最初はかなり試行錯誤しました。空間内に文字を使ってインタラクティブにデータ世界を表現するということは、簡単に文字で書くのと違い、インタラクティブな表現として体験して面白いコンテンツとして仕立てなくてはいけません。さまざまな技術や表現を実際に試してみる必要がありました。

私たちはこれまで空間でさまざまなことを体験として表現してきました。蓄積してきた知見を活かし、ゲームコンテンツやバーチャルコンテンツの制作実績が豊富なスタッフにも参加してもらい、最新のセンシング技術や鏡を使った表現の仕方などを、実際に1分の1で仮組みを行いながら検証し、作品をつくり上げていきました。最後の表現を詰める段階では、Webデザインやインターフェイスデザインで第一線を走り続ける中村勇吾さんにもご協力いただき、作品としての質をどんどん磨いていきました。

実際に完成した作品に私も足を踏み入れてみると、仮組みの時とはまた違った、美術館という空間ならではの没入感があり、インタラクティブ性とダイナミックさ、躍動感がある作品に仕上がったかなと思っています。

文:矢部智子 撮影:葛西亜理沙 取材・編集:石田織座(JDN)

■佐藤可士和展
https://kashiwasato2020.com/
■丹青社
https://www.tanseisha.co.jp/