三木谷浩史×佐藤可士和の二人三脚は18年目へ。世界で勝負する楽天が思い描く、テクノロジー×デザインの未来

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三木谷浩史×佐藤可士和の二人三脚は18年目へ。世界で勝負する楽天が思い描く、テクノロジー×デザインの未来

国立新美術館で開催中の「佐藤可士和展」は、日本を代表するクリエイティブディレクター・佐藤可士和の約30年間にわたる活動の軌跡を多角的に紹介する、過去最大規模の個展だ。

2000年の独立以降、企業から教育機関、エンターテインメント、ファッションなど、多様なクライアントのVI・CI計画やブランド戦略を手がけた佐藤氏の仕事を辿る上で、2003年からCCD(チーフクリエイティブディレクター)として手がけてきた楽天株式会社(以下、楽天)でのクリエイション抜きに語ることはできない。同展でも、佐藤氏のキャリアの中で一際存在感を放つ楽天のクリエイティブを体感することができる。

同展の開催を記念して、佐藤氏と楽天の代表取締役である三木谷浩史氏との特別対談「三木谷浩史✕佐藤可士和 | Tech & Design, Unlimited Future」が行われた。楽天のチーフマーケティングオフィサーを務める河野奈保さんのナビゲートのもと、これまでの楽天のクリエイティブの軌跡を辿るとともに、テクノロジーとデザインの未来や、18年目を迎えたパートナーシップについて語られた対談の様子をお届けする。

ロゴのデザインから楽天カードマン、オリジナルフォント開発まで

河野奈保(以下、河野):今回、佐藤可士和展の開催を記念して、おふたりの対談の場を設けさせていただきました。どうぞよろしくお願いします。

三木谷さんとは同い年のご友人でもある可士和さんには、2003年に弊社のCCDに就任されて以降、様々な楽天のお仕事に携わっていただきました。今回、展示されている作品とともに振り返ってみていかがですか?

佐藤可士和(以下、佐藤):まず、このタイミングに展覧会を開催させていただけたことが本当にありがたいですね。そして三木谷さんとはもう18年目。長いよね。

<strong>佐藤可士和</strong> SAMURAI
クリエイティブディレクター 
楽天
チーフクリエイティブディレクター 1965年東京生。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て2000年独立。同年「SAMURAI」設立。ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発、空間設計、デザインコンサルティングまで、強力なクリエイティビティによる一気通貫した仕事は、多方面より高い評価を得ている。グローバル社会に新しい視点を提示する、日本を代表するクリエーター。主な仕事は、ユニクロや楽天グループのグローバルブランド戦略、セブン-イレブンジャパン、Honda「N」シリーズのブランディングプロジェクト、国立新美術館のシンボルマークデザインとサイン計画など。近年は武田薬品工業グローバル本社、日清食品関西工場、「FLAT HACHINOHE」、「GLP ALFALINK相模原」など大規模な建築プロジェクトにも多数従事。文化庁・文化交流使(2016年度)、慶應義塾大学特別招聘教授(2012年-2020年)、多摩美術大学客員教授(2013年〜)。

佐藤可士和 SAMURAI
クリエイティブディレクター 
楽天
チーフクリエイティブディレクター 1965年東京生。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。株式会社博報堂を経て2000年独立。同年「SAMURAI」設立。ブランド戦略のトータルプロデューサーとして、コンセプトの構築からコミュニケーション計画の設計、ビジュアル開発、空間設計、デザインコンサルティングまで、強力なクリエイティビティによる一気通貫した仕事は、多方面より高い評価を得ている。グローバル社会に新しい視点を提示する、日本を代表するクリエーター。主な仕事は、ユニクロや楽天グループのグローバルブランド戦略、セブン-イレブンジャパン、Honda「N」シリーズのブランディングプロジェクト、国立新美術館のシンボルマークデザインとサイン計画など。近年は武田薬品工業グローバル本社、日清食品関西工場、「FLAT HACHINOHE」、「GLP ALFALINK相模原」など大規模な建築プロジェクトにも多数従事。文化庁・文化交流使(2016年度)、慶應義塾大学特別招聘教授(2012年-2020年)、多摩美術大学客員教授(2013年〜)。

三木谷浩史(以下、三木谷):長すぎるよね(笑)。

佐藤:最初に漢字のブランドロゴをつくりましたよね。

三木谷:いきなりアルファベットにするか漢字にするかで揉めたんですよね(笑)。

佐藤:この17年を振り返ってみて僕がすごく驚いたのは、「可士和くん、野球やろうと思うんだけどどう?」って言われたときですね。「え、野球!?」って(笑)。そこから「東北楽天ゴールデンイーグルス」ができて、こういうマーケティングの方法があるんだなと思いましたね。そこから1年ほどで楽天が日本中に知れ渡りました。

<strong>三木谷浩史</strong> 楽天
代表取締役会長兼社長 1965年神戸市生まれ。1988年一橋大学卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。1993年ハーバード大学にてMBA取得。日本興業銀行を退職後、1996年クリムゾングループを設立。1997年2月株式会社エム・ディー・エム(現楽天株式会社)を設立し、同年5月インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を開設。現在、楽天グループとして、Eコマース、フィンテック、モバイル、デジタルコンテンツなど多岐にわたる分野で70以上のサービスを提供する。

三木谷浩史 楽天
代表取締役会長兼社長 1965年神戸市生まれ。1988年一橋大学卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。1993年ハーバード大学にてMBA取得。日本興業銀行を退職後、1996年クリムゾングループを設立。1997年2月株式会社エム・ディー・エム(現楽天株式会社)を設立し、同年5月インターネット・ショッピングモール「楽天市場」を開設。現在、楽天グループとして、Eコマース、フィンテック、モバイル、デジタルコンテンツなど多岐にわたる分野で70以上のサービスを提供する。

三木谷:あれはロゴも1ヵ月くらいで決めたり、急でしたね(笑)。可士和君とは、ロゴも含めた全体的なマーケットに対するインパクトを、さざ波から大きな波にするための仕組みを一緒につくってきた感覚がありますね。

佐藤:そうですね。あとは「楽天カードマン」もおもしろかったですね。あれはもっと真面目なアイデアもたくさんあったんだけど(笑)、僕が「カードマン、いいな」と思って、その1案だけ持って三木谷さんに提案して。

三木谷:カードマンね。

佐藤:カードの広告でああいったアプローチってほとんどなかったですよね。でもすぐに覚えてもらったと思うし、いまや楽天カードも定着しましたよね。

三木谷:そういった意味では「お買いものパンダ」もそうですよね。「TikTok」で世界中にパンダダンスが広まって。

佐藤:あれも驚きですね。最初は三木谷さんが「LINEのスタンプで何かやりたい」って言ったのが始まりで、じゃあみんなが好きなものって何だろうと考えて、あのパンダになったという。大人気になりましたよね。

それから僕が印象的なのは、2018年に立ち上げた「楽天デザインラボ」。クライアントと一緒に仕事をさせていただく中で、デザイン組織を立ち上げたのはさすがに初めてでしたね。

三木谷:そこからいろんなデザイナーやクリエイターの方々がたくさん楽天に入ってくるようになって、クリエイティブを量産できる体制になったんですよね。

佐藤:デザインラボでは、ロゴの監修や映像制作も行っていて、いまや楽天のデザインシステムを構築していますよね。2005年に三木谷さんは楽天技術研究所も立ち上げたと思うんですが、やっぱりそういうラボ的なものが会社にあると強いなと思います。

<strong>河野奈保</strong> 楽天株式会社 常務執行役員CMO

河野奈保 楽天株式会社 常務執行役員CMO

河野:昨年は、デザインラボと一緒に開発された楽天のオリジナルフォントもかなり話題になりました。

佐藤:そうですね。楽天では以前から2書体くらいを使用していましたが、これだけグローバルになってサービスも多様化しているので、もっと本格的にやろうと、ロンドンの「Dalton Maag」というデザインスタジオと一緒に新しく4種類のフォントを開発しました。かなりいいものができたかなと思っています。

「干物からビットコインまで」。楽天の多様性とテクノロジーを可視化する

佐藤可士和さん

河野:次は、「テクノロジー」と「デザイン」が融合することで、どんな未来を切り拓いていけるのかについてうかがいたいと思います。今回佐藤可士和展を開催するにあたって、楽天と可士和さんがコラボしたデジタルインスタレーション「UNLIMITED SPACE」を特別展示させていただいていますが、こちらの感想も含めてお話いただけますか?

佐藤:展覧会のオファーをいただいたのが3年前で、三木谷さんには2年前から何かご一緒させてくださいという相談はしていたんです。一方で、三木谷さんからは、「楽天が持つテクノロジーをうまく表現できないかな」と以前から言われていたので、それに対して今回僕が表現させてもらったのが「UNLIMITED SPACE」です。1年くらいかけてつくったんですが、実際に仕上がったものを今日初めてご覧いただいて、どうですか?

三木谷:未来を感じさせますよね。ここに出ている言葉はすべて楽天のキーワードになっていて、まさしくデータ社会の到来と人間の融合というか。サイバー空間というものがかつてないほど大きな価値を生んでいるいま、それがとてもおもしろいかたちで表現されていると思いました。もしかしたら、コンピューターからすると僕らはこのように見えるのかな?といったことも感じましたね。

佐藤:そうですね。楽天カードマンやお買いものパンダなど、これまで楽天はBtoCのところではすごく親しみやすいマーケティングをしていますが、その背景にはものすごいテクノロジーがあるということを、今回の展示ではデータヴィジュアライズを通して伝えられればと思ったんです。

実際に楽天技術研究所の方と話をしているとわかるのですが、膨大なデータをサーバーを安定させながら制御していたりと、素晴らしいテクノロジーが楽天にはたくさんあります。三木谷さんは、その辺りはどのようにこだわっているんですか?

三木谷浩史さん

三木谷:データというものは強みですし、いまの時代、データなくしては戦えないですよね。インターネットビジネスは、いわば“脳内シェア”を競うものじゃないですか。ものを買いたいなら楽天、旅行したいなら楽天トラベル、カードをつくりたいなら楽天カードと、ユーザーに思ってもらえるかどうかが重要なので、楽天としてのアイデンティティを、UXも含めてどうやってプレゼンテーションしていくかがポイントだと考えています。

世界のIT企業をみても、アイデンティティという意味では統一感にかなり力を入れています。「干物からビットコインまで」とよく言うんですが(笑)、楽天の場合は、どこよりも多様でありながら、アイデンティティやUXを含めた統一性もある。多様性と統一性、洗練さと優しさ、テクノロジーと温かみというような、相反する概念をいかにわかりやすく内包できるかが、ものも情報も溢れているこの時代には大切ですよね。

佐藤:干物からビットコインまでね(笑)。楽天にしかできないブランディングのメソッドをつくっていこうと最初の頃に話したと思うんですが、多様なことをやっていきたいという三木谷さんの思いに、どう応えられるかなと試行錯誤してきた17年間だったなと。

今回の展覧会では、ひと際大きな楽天のロゴを展示していますが、楽天はインターネットサービスの会社なので、「R」のかたちのモニターに、これまでに三木谷さんとやってきた活動を映像で表現しました。「R」の中に宇宙があるような展示にしようと思って。

三木谷:「R」の中にすべてがあるっていう、かっこいいね。これ、モニュメントにして会社に置きたいくらいです。もうこれまでにいくつロゴつくったかわかんないよね(笑)。

佐藤可士和さん、三木谷浩史さん

「ニューノーマル」がノーマルに変わるとき、テクノロジー×デザインができること

三木谷:もともとは、世の中の役に立ちたいという思いでつくってきているので、そういう意味では、たとえばPCR検査を受けられるサービスも始めましたし、ソーシャルディスタンスのロゴに関しては、可士和君とつくりましたよね。

インターネット出現の前と後のように、スマートデバイス、AIの登場によって情報革命がさらに加速することで、社会が大きく変わると思うんです。その中で我々が持っているテクノロジーや、可士和君と一緒につくってきたデザインを、楽天が世の中をよくしていくための土台として活かしていき、今後も継続していければいいなと思っています。

佐藤可士和さん

佐藤:まさにね。特に我々はテクノロジーの恩恵で、以前は想像もできないような生活になっていると思うんですが、そこにデザインが加わることで、テクノロジーを可視化して、わかりやすく人に伝えることができる。デザインとテクノロジーが融合することで、社会にもよりよい影響が出ると思うんです。

三木谷:ITビジネスは自己否定しないとだめで、立ち止まっていたら終わってしまうと思うんです。おそらく、将来的には紙幣がなくなるゼロキャッシュの時代が来る。その時に、これまでは「もの」があるから施設やサービスが必要だったけども、すべてサイバー空間でカバーできるようになったらどうなるのか。いまでいうと、このコロナ禍で「オフィスって本当に必要?」となりつつあるわけですし、サービスもその存在価値を見直すべき時だと思うんです。

佐藤:今回それは本当に思いました。コロナ禍で働き方が一気に10年進んだといわれているし、以前からリモートワークのツールもあったけど、使わざるを得なくなった。SAMURAIも2月に体制をガラリと変えたんですが、僕はそういう変化を前向きに捉えようと思っているので、かなりドラスティックに取り組みました。

三木谷:リモートでいい部分とリアルじゃないとだめな部分、その両方があると思うし、これからはこの「ニューノーマル」の状態がノーマルに変わっていくよね。

佐藤:僕と三木谷さんとは18年も付き合っているので、オンラインでも友達と長電話しているような感覚で、割と違和感なくやっていますよね。

佐藤可士和さん、三木谷浩史さん

河野:可士和さんには、弊社の新しい戦略が生まれるたびにさまざまなクリエイティブをつくっていただいていますが、それにはおふたりの気持ちがシンクロしていることが大事なのかなと思います。そんな関係を17年間続けられている秘訣というか、おふたりは普段はどんな会話をされているんでしょうか?

佐藤:僕は三木谷さんのことを普段「ミッキー」と呼ばせていただいているんですが(笑)、やっぱり雑談が大事だなと思いますね。具体的な案件の話を聞くというよりも、ミッキーが見ている方向を僕が常にキャッチアップして、お互い感覚を共有できていれば、判断する時にもずれることはないのかなと思っています。

三木谷:僕は可士和君との雑談を通して、自分のアイデアなり発想をキャッチボールさせてもらっている感覚なんです。それによって、なんとなくおぼろげに考えている未来像が、より可視化できて具体化されていく。僕にとってすごくいいキャッチボールの相手なんですよ。

佐藤:でも、ほんとスピード速いからね。毎週会うたびに「今度これやろうと思うんだけど」っていう(笑)。

河合さん

河野:よく可士和さんから「今週何か動きあった?」「どんな感じだった?」って聞かれます(笑)。

佐藤:そう。「今週のミッキーどう?」って(笑)。

三木谷浩史×佐藤可士和の二人三脚のこれから

三木谷浩史さん、佐藤可士和さん

河野:今後こんなことがやりたいということがあれば、ぜひお聞かせください。

佐藤:今後というより、たったいまもものすごくいろいろやっていますよね(笑)。この17年間、僕は驚きの連続だったんだけど、三木谷さんが「次はこれやろうと思うんだけど…」と言い出すのを毎回すごく楽しみにしていて、やることがいっぱいあって飽きないですよね(笑)。

なので、今後やりたいことというか、三木谷浩史が次にどこに行くのかっていうのを僕は楽しみにしていますね。

佐藤可士和さん、三木谷浩史さん

三木谷:でも、あらためて佐藤可士和あっての楽天だなと思いますね。僕はブランドは国旗だと考えていて、可士和君がつくり上げてきたものは、世界に誇れる日本発のクリエイティブだと思っています。

佐藤:いやいや。僕は本当にお手伝いさせていただいているだけなんですけれど、やっぱりクリエイティブの役割は、新たな視点を社会に提示することなんですよね。それが、テクノロジーと結び付くことでものすごく新しいことをやっているのが楽天なんです。テクノロジーは未来を豊かにするものだと思いますし、デザインやコミュニケーションの力で、それを分かりやすく親しみやすく伝えることで、少しでも社会をいい方向に向かうことの一端を、これからも担えればいいですよね。

三木谷:デザインは、表現することと同じくらい切り捨てることも必要じゃないですか。切り捨てるためには物事の本質を見抜く力が必要で、だからこそ難しい。可士和君が特別なクリエイターなのは、本質を見抜いた上での切り捨て方であったり、いい意味で振り切った表現や、幅を出すことができるからだと思うんですよね。

河野:最後に、佐藤可士和にとって三木谷浩史とは、三木谷浩史にとって佐藤可士和とはどんな存在でしょうか。

佐藤:そうですね。ミッキーはもちろんクライアントなんですが、同い年の友達でもあります。その友達がこんなに世界で頑張っていることがすごく嬉しいし、勇気をもらえる。僕もお手伝いさせていただくことで、一緒に新しい世界を見ていきたいなと思っています。

三木谷浩史さん

三木谷:僕にとっては可士和君は、自分のイメージをデザインだけじゃなく、きちんと具現化してくれる存在です。

楽天のサービスは銀行から証券会社、旅行会社、保険会社、ショッピングモールと、ほとんどすべてがあって、それらが有機的に結びついて初めて世界と勝負できる。楽天をつくったばかりの頃はそれらがバラバラだったんですが、可士和君にデザインという屋台骨をつくってもらっていることで、地方の出店者の方やホテルを助けることができるし、さらにはエンドユーザーにも安心して使っていただけていると思っています。世界で勝負していくために、ぜひこれからも二人三脚でよろしくお願いしますと。なんだかプロポーズみたいになってますけど(笑)。

佐藤:ははは。公開プロポーズ(笑)。こちらこそよろしくお願いします。

佐藤可士和さん、三木谷浩史さん

文:開洋美 写真:中川良輔 編集:堀合俊博(JDN)

楽天株式会社
https://corp.rakuten.co.jp/

佐藤可士和展
https://kashiwasato2020.com/