今年もいよいよ始まるミラノサローネ
世界中から数百人が集まった記者発表
ミラノサローネ国際家具見本市(以下、ミラノサローネ)を中心に、世界中から100万人が集まると言われるミラノデザインウィークが近づいてきた。ミラノデザインウィークは、ミラノサローネとフォーリサローネ(サローネの外)と呼ばれるミラノ市内のイベントの総称。ミラノサローネの会期(2018年は4月17日から22日)に合わせて市内で無数のイベントが開催される。
その記者発表が、2月7日にミラノ市のルイージ・ボッコーニ商業大学(以下、ボッコーニ大学)で開催された。ボッコーニ大学は経済と経営で世界指折りの存在、イタリアでは珍しい私立の大学として知られている。イタリアの政治経済界を支える人材を多数輩出してきた。このような場所にミラノ市長などのゲストを迎えて、地元メディアだけでなく世界各国からのジャーナリストも含めた数百人が集まった。
ミラノサローネの魅力を明確にしたマニフェスト
記者発表において、ミラノサローネのクラウディオ・ルーティ社長が発表したのが、Emotion、Enterprise、Quality、Design、Networking、Young people、Communication、Culture、Milan at the centreという9項目からなるマニフェストだった。「ミラノサローネがミラノ市と協力し合いながら、そのリーダーシップの役割を維持することを約束するために生まれた」というこのマニフェストは、ミラノサローネやミラノデザインウィークを訪れたことがある人ならば、なるほどと頷ける内容だった。
マニフェストの中には「デザインに無関係な人まで魅了する唯一無二のイベント」「世界中のクリエイターが新しい出会いを求めに、またはトレンドリサーチや新しいプロジェクトの基礎を築きに集結」「ミラノデザインウィークの一週間、ミラノサローネはビジネスと人々を繋ぎ、フォーリサローネをはじめ全てを寛大に巻き込み、共有し、街を一体化」といった言葉が並ぶ。
このマニフェスト、新しさを打ち出すのではなく、ミラノサローネの強みの再確認といった印象だ。となると気になるのは、なぜ今のタイミングで、とりわけ誰に向けたメッセージなのか、というところ。このあたりは改めてルーティ社長へ聞いてみたいと考えている。
2018年のミラノサローネ全体としては、例年通り2,400社以上の出展、30万人以上の来場見込みという規模感。事前情報としては、イタリアの最高級の職人技を誇るPromemoriaの初出展、2015年にDe Padovaを買収したBoffiが20年以上ぶりに出展し、BoffiのキッチンをDe Padova/Boffiのブースに展示することなどが話題となっている。
ミラノサローネ会場の日本人デザイナーでは、川上元美とRiva1920、伊藤節+志信はRiva1920とSAWAYA & MORONIとDESIREE、吉岡徳仁はKartellとGlas Italia、nendoはMinottiとFritz Hansen、岩崎一郎とArper、小林幹也とDIABLA、JIN KURAMOTO STUDIO(倉本仁)とOFFECCT、Tamaki Design StudioとMist-oはそれぞれLIVING DIVANIと、田原臣とDe Padova、大城健作はDe PadovaとPoltrona Frau、から新作が予定されている。
ミラノサローネに出展する日本企業
このように今年も見所が多いミラノサローネ。日本から出展する企業は昨年と同じMARUNI COLLECTION(マルニ木工)、飛驒産業、Ritzwell、KARIMOKU NEW STANDARD(カリモク家具)の4社で、それぞれ新作がある。隔年で併催されるキッチンの見本市エウロクチーナには2年前に続きサンワカンパニーが出展する。
MARUNI COLLECTION(マルニ木工)
深澤直人によるプライウッドを使った「Roundish」アームチェアとジャスパー・モリソンによる無垢の椅子「Fugu」という新作を発表する。
10年目の出展、世界に名だたる家具ブランドが集結するホール16での展開は3年目。(展示ブース:ホール16、D49)
飛驒産業
海外でも知名度の高い柳宗理をはじめ、atelier oï、隈研吾による新作を中心に展示。杉圧縮柾目材を使った川上元美デザインのKISARAGI、エンツォ・マーリや原研哉、貝山伊文紀の家具も並ぶ。展示のアートディレクションは日本デザインセンターの大黒大悟が手がける。
6年目の出展、単独出展は今回が2年目。(展示ブース:ホール10、E23)
Ritzwell
2017年には、Ritzwellのチーフデザイナーである宮本晋作によるソファ「LIGHT FIELD」がiF DESIGN AWARDを受賞している。新作は同氏によるサイドボード「JABARA」と2017年に発表したハイバックイージーチェア「BEATRIX」のオットマン。
10年目の出展、著名ブランドが並ぶホール5での展開は3年目で昨年からメイン導線沿いに進出。(展示ブース:ホール5、D14)
KARIMOKU NEW STANDARD
ドイツ・ベルリンで活動するデザインスタジオGeckeler Michelsを迎えて開発した椅子「PANORAMA CHAIR」、ブランドスタート時からの共同者BIG-GAMEと、昨年発表したソファが人気のクリスチャン・ハースによるシェルフ2点などを発表する。
2年目の出展、ミラノデザインウィークを通算すると9年目。(展示ブース:ホール10、A07)
サンワカンパニー
サンワカンパニー・オリジナルデザインのキッチンはもちろんのこと、アレッサンドロ・メンディーニ、キッコ・ベステッティ、エリザ・オッシノというイタリア人デザイナーとのコラボレーション、そしてサンワカンパニーデザインアワード2016の受賞作品も発表する。
隔年開催のエウロクチーナに2度目の出展、昨年はミラノ市内で展示を行いミラノデザインウィークとしては3年目。(展示ブース:ホール11、C21 D20)
以上、巨大なミラノサローネの出展者の中で奮闘する日本の5社については引き続き注目していきたい。そしてサローネサテリテでは今年はどのようなデザイナーと出会うことができるだろうか、こちらもとても楽しみだ。また、市内ではドゥオモ広場でミラノサローネ特別展示「リビング・ネイチャー」が開催される。数多くの市内のイベントとあわせてデザインのさまざまな可能性に触れられることを楽しみにしたい。
構成・文:山崎泰(JDNブランドディレクター)
The Manifesto
http://www.milanosalone.com/salone/news/images/20180213_0.manifesto_japrivisto_DEF.pdf