“命輝く未来社会のデザイン”をテーマに、革新的な技術とアイデアが集まる、2025年大阪・関西万博が2025年4月13日からスタートした。中でも各国が展示するパビリオンの建築は、その国の未来観を象徴する重要な要素だ。
未来的なデザインやサステナビリティへの取り組み、先進的な建築技術が融合したパビリオンの数々。本記事では、国内パビリオンの建築にフォーカスを当て、注目のパビリオンを紹介する。
■日本館
万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」をホスト国として表現する日本館。同館の展示は「いのちと、いのちの、あいだに」というテーマに基づき、循環をキーコンセプトに表現されている。パビリオンは、プラントエリア、ファームエリア、ファクトリーエリアの3つのエリアに分かれており、それぞれが循環の重要性を体感できる場所となっている。
建築は円環状の構造体で、「いのちのリレー」を体現する設計が特徴。無数の「木の板」が円を描くように立ち並ぶデザインが目を引く。おもに国産杉材によるCLT(直交集成板)を使用し、万博後のリユースを考慮した設計となっている。基本設計・実施設計は日建設計、総合プロデュース・デザインはnendoの佐藤オオキが担当した。
また、同館では、会場内から集めたごみを活用し、循環の仕組みを実演する取り組みを実施。これにより来場者に自分自身も大きな循環の一部であることを実感させるという仕組みだ。さらに、日本の伝統的なものづくりの心と技を受け継ぐ持続可能なプロダクトが並び、持続可能な未来社会への洞察を深める展示になっている。
https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/japanese-government/
■ウーマンズ パビリオン
「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」は、内閣府、経済産業省、リシュモン ジャパン株式会社(カルティエ)、博覧会協会が出展するパビリオン。「When women thrive, humanity thrives ~ともに生き、ともに輝く未来へ~」をコンセプトに掲げ、すべての人々が真に平等に生き尊敬し合い共に歩みながら、能力を発揮できる世界をつくるきっかけを生み出すことを目指している。

© Cartier
白い膜材を使った組子ファサードを配した同パビリオンの建築を手がけたのは、永山祐子建築設計。2020年に開催されたドバイ万博で日本館のリードアーキテクトを務めた永山が考案したファサードを、今回再利用していることが特徴だ。これにより、「将来の世代へと受け継がれるレガシーを創造するとともに、世界中のコミュニティからインスピレーションを得ることで人類の叡智を紐解く」という同パビリオンのミッションを、ドバイ博覧会から引き継ぐかたちとなった。
また、現代美術家のエズ・デヴリンが、同パビリオンのグローバルアーティスティックリードを務める。より明るく公平な未来を築くために、個人やコミュニティがどのように団結できるのかを想像する没入体験を提供するという。
https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/womens-pv/
■NTT Pavilion
日本電信電話株式会社によるNTTパビリオンは、「時空を旅するパビリオン」をコンセプトに掲げている。「PARALLEL TRAVEL(パラレル・トラベル)」を体験テーマとし、同社が構想する次世代情報通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network/アイオン)」による空間伝送技術を使い、映像や音声だけではなく、離れた空間そのものや、離れた場所にいる人やものの感覚を共有する未来のコミュニケーション体験ができる。
同パビリオンの建築コンセプトは「感情をまとう建築」。糸のようなカーボンワイヤーと小さな布材を多数使用してパビリオンを覆い、日陰をつくってゲストが過ごしやすい空間になっている。同時に、カーボンワイヤーが音を放ち、布が風によってゆらめくことで、パビリオン全体が感情をもった生命体のようにうごめく効果を出している。また、3つあるシアターは、カーボンワイヤーで引っぱりあげたテントのような構造になっており、柱などに使用する鋼材を減らし、CO2排出量を低減させている。
パビリオンのエントランス空間を覆う「天蓋」は、NTTグループ社員が「一緒につくる」ワークショップで制作したもの。体験するだけでなく、来館者の思い出などをつづれるようなしかけが施されている。
https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/ntt/
■パナソニックグループパビリオン「ノモの国」
パナソニックグループのパビリオン「ノモの国」のコンセプトは、「解き放て。こころと からだと じぶんと せかい」。同グループの「ひとの理解」研究に基づく技術などを活用し、子どもたちの感性を刺激することで想像する力を解き放つ体験型パビリオンだ。「Unlock体験エリア」は、立体音響システムや360°映像システム、振動や風によるハプティクスなど光・映像・音・空気に関する技術を用いた体験ができるイマーシブな空間となっている。
同パビリオンの設計の中心になったのは、「ウーマンズ パビリオン」も手がけている永山祐子建築設計。細胞のようなリング状の立体モチーフが寄り集まる、アーチ状のファサードが特徴的だ。リングには薄ピンクや薄グリーンなどやさしい色合いのオーガンジーの布膜が取り付けられている。
布膜が風によってゆらゆらと動き、光によって色が変化することで、生物のような有機的な雰囲気をかもし出す。変容する姿には「想定できない未来のおもしろさ」が込められていると同時に、「循環を表すモチーフが集まり、ファサード全体を形成することで『私たちも循環する世界の一部』であることを象徴している」という。
https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/panasonic/
■株式会社バンダイナムコホールディングス
株式会社バンダイナムコホールディングスによる「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」は、『ガンダム』シリーズが描いてきた「宇宙での暮らし」や「まだ実現していない科学技術」を体験できるパビリオン。ガンダムを通して世界中の人々とつながり、未来を考えるきっかけの場となることを目指している。

ⓒ創通・サンライズ
パビリオンの外観は未来のスペースエアポートをイメージしてデザインされ、人類が宇宙に生活圏を伸ばした世界観を表現した。内部では、最大18×8mを超える臨場感のある大画面映像と触感のフィードバックが得られるハプティクス技術を採用した床により、全身で感じられるイマーシブな体験ができる。
また、屋外には高さ約17mの等身大ガンダム像を設置。片膝立ちで片手を上げたポーズは、「宇宙、そして未来へと手を差し伸べる姿」を表現している。ガンダム像には、2020年12月から2024年3月に神奈川県横浜市で開催された「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」で展示していた「動く実物大ガンダム」の資材が再活用されている。
https://www.expo2025.or.jp/domestic-pv/bandai-namco/
■PASONA NATUREVERSE
「PASONA NATUREVERSE」は株式会社パソナグループによるパビリオンで、「いのち、ありがとう。」がコンセプト。 「からだ・こころ・きずな」をテーマに、心臓を作り上げるiPS心筋シートなどの医療の最新テクノロジーや、人にも環境にもやさしい食べ物などを、鉄腕アトムやブラック・ジャックなどのキャラクターがナビゲーター役となって紹介する。

「PASONA NATUREVERSE」 外観イメージ
パビリオンの外観はらせん状のアンモナイトと巻き貝を模したデザインになっており、建築コンセプトは「心臓(いのち)の螺旋 ~アンモナイトからiPS心臓(いのち)まで~」。長期にわたって繫栄したアンモナイトを「いのちの象徴」ととらえ、そのかたちをパビリオンに取り込んでほしいというパソナ側の要望に応え、the design laboの板坂諭がデザインした。実物の巻き貝やアンモナイトの化石を3Dスキャンしたデータをもとにデザインされている。
展示空間は「巻き貝棟」と「アンモナイト棟」の2つからなり、来場者はらせん状の動線に沿って、3つのゾーンを時計回りにぐるりと回って移動する。なお、同パビリオン建築は万博終了後、淡路島へ移築される予定だ。
以上、6つのパビリオンを紹介したが、このほかにも国内、海外を含め多くのパビリオンが会場に並ぶ。編集部では今後もレポートを予定しているので楽しみにしていてほしい。