「企(たくらみ)」展-ちょっと先の社会を作るデザイン-
ビジネスや日々の暮らしのさまざまな場面で「デザイン」と聞くと、意匠や造形など「形のあるもの」を思い浮かべることが多くあります。一方で、人と人との間に生まれるコミュニケーション、それらを円滑にするサービスや仕組みといった「形のないデザイン」も、わたしたちの身近な生活、ひいては大きな社会に溶け込んでいます。
本展は、社会課題や個人の課題解決のアプローチ手法「ソーシャルデザイン」の“ちょっと先”に焦点をあて、地域社会・ビジネス・個人の暮らしに寄り添う「デザイン」の新たなアプローチを提示するものです。
メインビジュアルからしても少し“企て感”のある本展。何かやってみたい、何かおもしろいことを企んでみたい方は足を運ぶとヒントがあるかも…!?
ブルーノ・ムナーリ-役に立たない機械をつくった男
イタリアの画家にして、デザイナー、さらには絵本を多数制作し、子どものための造形教育にも力を注いだ、ブルーノ・ムナーリ(1907-1998)。その多彩な活動を短い言葉であらわすのは困難ですが、その作品はどんなジャンルのものであってもシンプルな考え方からつくられており、大人も子どもも親しめるものになっています。
本展では、イタリア未来派に始まるムナーリさんの活動を約300点の作品で振り返ります。“役に立たない”けど、どこか面白くてすごく惹かれる作品の数々を見ていたら、きっと子どもの頃に感じた、描きたい・作りたいという純粋な衝動を思い出させてくれそうです。
CITIZEN “We Celebrate Time” 100周年展
今年、創業100周年を迎えたシチズン。時計メーカーとしての信念を表現する展示空間を、好評を博した2014年に引き続きスパイラルガーデンで展開。ディレクションは、6年に渡り「時とは何か?」をシチズンと共に問い続けてきた建築家の田根剛さんです。
シチズン時計が考える、時間と時計の「今」をぜひご覧ください。誰かに思わず共有せずにはいられない、そんな空間になること間違いなしです!
吉村芳生 超絶技巧を超えて
本展は、現代アート界の異色の画家・吉村芳生の全貌を62件600点以上の作品により、3部構成で紹介するもの。日常生活の中で目にするありふれた風景を、モノトーンのドローイングや版画で表現した初期の作品群、色鉛筆を駆使してさまざまな花を描いた後期の作品群、そして生涯を通じて描き続けた自画像の数々。膨大な時間を費やして制作された驚くべき作品群は、写実も超絶技巧も超越し、描くこと、表現することの意味を問い直します。
代名詞とも言うべき〈新聞と自画像〉シリーズは、新聞紙の上に自画像が描かれているだけのように見えますが、じつはよく見ると新聞紙そのものが鉛筆で一字一字描かれています。単純に対象を熟視して描かれたわけではないという、超絶技巧を“超える”制作の秘密をぜひ会場で発見してください。
場所:東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201811_yoshimura.html
美術への挑戦 1960’s-80’s:秘蔵されていたアート・ブック
現代美術において作品の在り方が多様化したのは1950年代半ば以降で、同時に既存の美術制度や概念に対する疑問が顕在化していきました。そのような状況の中で、美術のために用意された空間ではない、新しい表現の場として簡易で大衆的な出版物に着目したアーティストたちがいました。彼らは豊かな発想力やユーモアによって、アーティスツ・ブックや雑誌、エフェメラなど、数多くの出版物を制作、発行しました。
うらわ美術館では「本をめぐるアート」というテーマのもと、個性的かつ国際的なコレクションを形成。その中には国内のみならず国際的な評価を得ているアート・ブックが含まれています。本展は初公開となる作品を中心に構成し、アート・ブックを理解するためのキーワードで追いながら、1960年代から80年代まで出版物に取り組んだアーティストたちの動きを紹介しています。
民藝 MINGEI -Another Kind of Art展
21_21 DESIGN SIGHTディレクターでもあり、日本民藝館館長を務める深澤直人さんが、同館の所蔵品から146点の新旧さまざまな民藝を選び抜き紹介する企画展。
「民藝」という言葉は、1925年、民衆の用いる日常品の美に着目した柳宗悦(1889-1961)が、無名の職人たちによる民衆的工芸を初めて名付けたそうです。民藝の特徴でもある風土や風習を生かしたものづくりは、世代を超えて受け継がれていくなかで、素材や色、工程、用途、形などの独自性が際立ち、革新的で衝動的な、枠に捉われない創意工夫へと発展していきました。
本展では、撮り下ろしインタビューや制作現場の映像、民藝の新たな表情を映し出す写真、日本民藝館設立時の貴重な資料などの多彩な展示を通して、これからのデザインのインスピレーションとなる「Another Kind of Art=民藝」を紐解いていきます。
慌ただしい日々の合間に美術館やギャラリーを訪れ、感性を磨いてみてはどうでしょうか?来年もJDNでは、さまざまな展覧会やイベントをピックアップしていくので、ぜひお楽しみに!
構成:石田織座(JDN) タイトルデザイン:小幡彩貴