
旧真田小学校が「絵本と木の実の美術館」として再生
「大地の芸術祭」は約760km²の広大な里山を10のエリアに分けて展示。全作品を回ろうとすると1~2日では到底足りない(1週間前後が目安といわれている)。 今回は下記の5エリアに絞って新作を中心に紹介したい。
・キナーレ・十日町市街地周辺エリア
・うぶすな・下条飛渡エリア
・絵本と木の実・十日町南エリア
・農舞台・松代中央エリア
・アジア芸術村・津南エリア
絵本と木の実・十日町南エリア
十日町の南に広がる信濃川を挟んだエリア。丘陵地と台地が東側に広がり、信濃川の西側が「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」のある針集落。
実の音/渡辺泰幸(2015)
2003年以来、土市に根ざして音具(サウンド・オブジェ)を手がけてきた渡辺氏。今回は土製の鈴を約2万個制作。森の中に音具が設置された風景は実に涼しげだ。
Kiss & Goodbye(土市駅)/ジミー・リャオ(2015)
台湾のベストセラー絵本作家ジミー・リャオ氏が、越後妻有を舞台にした絵本「幸せのきっぷ kiss & goodbye」を刊行。JR飯山線・土市駅と越後水沢駅の近くに、この地域特有の建物であるかまぼこ型倉庫をアレンジした施設を設け、絵本の世界を再現した。
鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館/田島征三(2009-2015)
2005年に130年の歴史を閉じた真田小学校。2009年の芸術祭を機に、田島征三氏が学校全体を使って「絵本と木の実の美術館」として再生した。最後の在校生3人を主人公にし、空間を使った絵本のように構成。校舎中に配したオブジェは伊豆半島の海辺と日本海で集めた流木や木の実などの自然物に絵具を塗ったものだ。
2015年は「オバケ」と「ヤギ」の新しいストーリーが加わった。多くの鑑賞者が訪れる「大地の芸術祭」で、「絵本と木の実の美術館」は特に子どもからの人気の高い作品のひとつだ。
アジア写真映像館(2012、2015)
2012年に旧名ヶ山小学校から、現代アジアの写真を展示する美術館として生まれ変わった。2015年は中国と日本の写真家たちが参加し、大地の芸術祭のコンセプトである、「都市と地域の交換」をテーマにした作品が制作された。一部の教室ではスマイルズによる、「おもてなし」をテーマにした体験型の作品も。
PIPELINE AUSTRALIA/石塚元太良(2015)
アイスランドの地熱輸送用パイプラインや、アラスカの石油輸送用パイプラインなど、各地にあるパイプラインを撮影。
デスプリット・ストレイツ/金村修(2015)
ベニヤ板などの廃材に画鋲などで荒々しく写真を貼り付け、「アジア写真映像館」の屋上や周辺の屋外や随所に展示。狙い通り雨風にさらされて朽ちていた。
新潟産ハートを射抜くお米のスープ 300円/スマイルズ(2015)
「Soup Stock Tokyo」を運営する株式会社スマイルズが、QRコードや産業ロボットの開発で知られる株式会社デンソーの技術協力を得て、アーティストとして作品を出品。「大地の芸術祭」に驚きと新しい価値観をもたらした。スマイルズという企業がアートに取り組むことの意味やその思いについて、スマイルズ代表取締役社長・遠山正道氏にお話を伺っているで併せてご覧頂きたい。
【関連記事】食と技術とおもてなしで、スマイルズ×デンソーが「大地の芸術祭」に新しい価値をもたらす取り組みに挑戦
まずは入口で「Soup Stock Tokyo」が開発したスープを購入。それを持って次の部屋へ進むと、デンソーが開発した2台の磨き上げられた彫刻のようなアームロボットが待ち構える。詳しい内容を述べることができないのだが、緻密に計算されたロボットの動きの厳かさ、インスタレーションとしてのおもしろさ、そしてここでしか体感できないおもてなし。「アートでもビジネスでもハレンチな存在でありたい」と遠山氏が語るように、とても野心的な作品だ。
snow country/倉谷拓朴

「名ヶ山写真館」からの眺め。美しい棚田が広がる
2006年に築100年以上の空家を改装し、遺影専門の写真館「名ヶ山写真館」をオープン。かつての住民が残した家財を、枯山水のように配置したユニークな空間。今回は、雪をテーマに地域の人の肖像写真や映像インスタレーションを展示。
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・うぶすな・下条飛渡エリア
・農舞台・松代中央エリア
・アジア芸術村・津南エリア
「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」
会場:越後妻有地域(新潟県十日町市・津南町)760k㎡
会期:2015年7月26日(日)~9月13日(日)
http://www.echigo-tsumari.jp/