8組のアーティスト・クリエイターが元社宅をリノベーション、アートを内包する賃貸住宅「APartMENT」

8組のアーティスト・クリエイターが元社宅をリノベーション、アートを内包する賃貸住宅「APartMENT」

アーティストやクリエイターが集まる街として、近年じわじわ注目を集める大阪市住之江区の北加賀屋で、また何やら面白そうなプロジェクト「8 ARTISTS PROJECT」が2016年3月にスタートした。現代アート、プロダクト、照明、テクノロジー、インテリア、造園といった、”建築”の枠を超えて集まった8組のアーティスト・クリエイターが鉄工会社の元社宅を賃貸住宅としてリノベーションするというものだ。

「8 ARTISTS PROJECT」参加メンバー

「8 ARTISTS PROJECT」参加メンバー

参画するアーティスト・クリエイターは、GREEN SPACE、スキーマ建築計画、電化美術×FabLab Kitakagaya、NEW LIGHT POTTERY、松延総司、松本尚、吉行良平と仕事、Rhizomatiks Architecture、この多様さはちょっとほかでは見られない組み合わせではないだろうか?一体、どんなものができるのだろうかと、否が応でも期待は高まる。

本題に入る前に、いったん「北加賀屋」というエリアの概略を少し紹介しておきたい。1931年創業の名村造船所を中心に北加賀屋は「造船の街」として栄えてきた。しかし、1979年に名村造船所は府外に移転、産業構造の変化も伴って、街はかつての活力は失われてしまった。転機が訪れたのは2004年。名村造船所大阪工場跡地を含め、北加賀屋地区の約半分の土地を所有する、千島土地株式会社がアートの実験場として再活用する試みがはじめたことをきっかけに、さまざまなアーティストやクリエイターが集まる街とへと変貌を遂げた。最近では、大阪を拠点に活動するデザイナー、建築家、編集者、研究者が中心となり発足したプロジェクト「DESIGNEAST」の開催地としても、全国的に知られた存在になりつつあるのではないだろうか。

CCO クリエイティブセンター大阪(名村造船所跡地)

CCO クリエイティブセンター大阪(名村造船所跡地)

「8 ARTISTS PROJECT」は、千島土地株式会社が中心となって推進する「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想」の一環としてスタートしたものだ。「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想」は、2009年に提唱された北加賀屋エリアを創造性あふれる魅力的な街に変えていく試みだが、同プロジェクトはその流れのなかで「新しい住まいかた」の提案であり、「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想」をさらに一般に開いていく第2フェーズとなる取り組みだ。

肝となるのは参加するアーティスト・クリエイターの自由なアイディア。事業主の千島土地株式会社と企画・事業コーディネートを手がけたアートアンドクラフトがアーティストを約40組リストアップし、2か月ほど時間をかけて選考。打診した8組すべてから快諾だったそうだ。

海辺の護岸に使われている鋼矢板をエントランスの階段

海辺の護岸に使われている鋼矢板をエントランスの階段

社宅時代の門だった部分をベンチに再利用。ランドスケープデザインは環境デザイン事務所・素地(soji)が手がけた

社宅時代の門だった部分をベンチに再利用。ランドスケープデザインは環境デザイン事務所・素地(soji)が手がけた

1971年築のRC造3階建て、従前の間取りは標準的な2DK。壁式構造という制約のなか、それぞれが実験と遊び、そして「住まいかた」への問いに満ちた空間「APartMENT(アパートメント)」が完成した。賃料は個々の部屋で多少異なるが、61,000円〜65,000円。セカンドハウス的な使い方も現実的だ。

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