消費財ビジネスの行方を占うアンビエンテ、2018年のトレンドと日本ブランド(2)

全世界から有望なデザイナーが集まる「talents」もアンビエンテに欠かせない存在、Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Pietro Sutera

日本ブランドより注目の出展者

展示会場から、日本関連の出展者をいくつか紹介したい。

YOnoBI

アンビエンテの「Japan Style」ゾーンを、TIME & STYLEのプレステージ ジャパンと共にコーディネートするクロスエッジのブランド。新商品として、デザイナー・橋本夕紀夫さんによる肥前吉田焼のティーポットを発表した。

「YOnoBI」

右上は人気となっている鋳物の急須、そのイメージを保ちつつデザインされたことが分かる新商品

KISEN

富山県高岡の銅器製造元である四津川製作所によるブランド。金属加工・銅着色・ろくろなどの職人技で、金属の魅力を活かした商品を展開する。trendsにも選出されていた。

「KISEN」

アルミ鋳物に金箔、プラチナ箔、銅箔を施した器

SATOMI SUZUKI TOKYO

ミュンヘンにて日本ブランドを紹介するコンセプトストア「SHU SHU」を運営し、アンビエンテでは取引先開拓に取り組んでいる。作り手と売り手、日本とドイツ、双方のネットワークを活かした商品プロデュースも手がけている。

SATOMI SUZUKI TOKYO

プロデュースした剪定ばさみ、老眼鏡を兼ねるルーペとステンレスミラー、カトラリー、鉛筆削りの4点を新商品として展示

KINTO

テーブルウェア、キッチン・インテリア雑貨の企画開発を手がける同社。デザイン感度の高いキッチン関連ブランドが集まるホール4.0の入り口近くという好立地で展開。高低差とアイキャッチを活用したブース設計で来場者の視線をうまく誘導していた。

KINTO

世界観を伝える印刷物を活用したディスプレイ

Perrocaliente

SAKURASAKU glassに代表される定番と共に、新商品として日時計「undial(アンダイアル)」を発表していた。太陽の影ではなく、光で時間を表示するもの。デザイナーは林篤弘さん。

100percent

使う場所の緯度によって角度の異なる台座を用意、太陽との関係、太陽から与えられる光、というコンセプトの明快な表現

yumiko iihoshi porcelain

イイホシユミコさんによるテーブルウェアブランド。コンセプトは「手づくりとプロダクトの境界にあるもの」。東京都台東区にある台東デザイナーズビレッジの出身者でもある。

yumiko iihoshi porcelain

アンビエンテにおいて器は競争の激しい分野のひとつ、各ブースが個性を競う中で、波長の合うバイヤーの足を確実に止めていた

家事問屋

新潟県燕市でキッチン・生活用品の企画販売を手がける下村企販がデザイナー小泉誠さんと協働したブランド。産地問屋ならではの強みを生かし、ステレンス製を中心にキッチン用品をそろえる。JETROジャパンパビリオンにて出展。

全国紙でも取り上げられ大ヒット中というホットパン、IHにも対応し具をたっぷり挟むことができる

全国紙でも取り上げられ大ヒット中というホットパン、IHにも対応し具をたっぷり挟むことができる

DRAW A LINE

突っ張り棒のメーカー、平安伸銅工業がクリエイティブユニットTENTと共同したブランド。突っ張り棒を、暮らしを豊かにする「一本の線」として再定義し、ライフスタイルを提案している。アンビエンテは初出展。

「DRAW A LINE」

平安伸銅工業が世に出して40年以上が経つ、突っ張り棒。この日本的なアイテムを元にしたブランドが、世界でどのように受け入れられていくか気になるところだ

like-it

奈良県のハウスウェアメーカー。グッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞した、1984年発表の樹脂製バケツやゴミ箱をはじめとした数多くの商品が市場に定着し、デザインが評価されている。難易度と精度が高い樹脂加工技術をベースにした商品開発だけでなく、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みにも積極的。

新製品のゴミ箱「シールズ」、この高さと抜き勾配の浅さから製造の難易度がわかる、素材にはセルロースナノファイバー複合材が使われている

新製品のゴミ箱「シールズ」、この高さと抜き勾配の浅さから製造の難易度がわかる。素材にはセルロースナノファイバー複合材が使われている

Lemnos、METROCS

デザイナーとの共同で時計を企画開発するLemnosと、名作デザイナー家具やインテリア雑貨を扱うMETROCSが、ジャパニーズデザインのパイオニアである渡辺力さんが手がけた商品という切り口で合同で展示。

Lemnos、METROCS

渡辺力さんデザインによる掛け時計、置き時計、モビール、スツールなどが並ぶ

Thomas Merlo & Partner

日本のデザイン商品も数多く扱うスイスの会社。ムラタ・チアキさんがデザインするMETAPHYSの脚立、アトリエオイがデザインした岐阜県美濃和紙のモビールなども扱う。新作として高橋理子さんによるホームフレグランスを発表していた。

merlo

高橋理子さんが自身の記憶から作り出した5種類の香り

As it is

2017年のIFFT/インテリア ライフスタイル リビングにて「Best Buyer’s Choice 2017」を受賞し、注目を集めた新潟県燕市の中野科学による新ブランド。新進の企業が参加するNEXTエリアにて出展。

中野科学

酸化発色をステンレスに施したカトラリーやプレート

MokuNeji

地場産業と環境問題をテーマに活動するデザイン会社、小鳥来(ことりく)がプロデュースするネジを活かした木製品ブランド。コーヒーミル、ポットなどと共に、ペットボトルと組み合わせて使うガラガラのグリップを展示。NEXTエリアにて出展。

小鳥来

赤ちゃんに適切なサイズの丸いペットボトルを付属した、パッケージ商品

DAYS.

店舗、什器、家具などを手がける西尾健史さんのデザイン事務所DAYS.(デイズ)。2017年のインテリア ライフスタイルにて「Young Designer Award」を受賞し、アンビエンテのtalents出展への切符を手にした。

DAYS.

可動式の家具Tray Rack(左)とWal(右)を展示

YURI HIMURO

ユーザーがハサミを入れることで完成したり、裏返すと新たな柄が見えてくるテキスタイルをデザインする氷室友里さん。2017年のIFFT/インテリア ライフスタイル リビングにて「Young Designer Award」を受賞し、アンビエンテのtalents出展となった。

YURI HIMURO

テキスタイルとクッション、スツールなどを展示

以上、全体からするとごく一部、日本関連の出展者だけでみても半分にも満たない紹介だが、雰囲気の一端を感じていただけただろうか。

またアンビエンテの特徴として、日本に姉妹見本市(5月のインテリア ライフスタイルと11月のIFFT/インテリア ライフスタイル リビング)があることを補足しておく。日本の出展者にとって世界戦略が描きやすく、若手デザイナーにとっては日本でYoung Designer Awardを受賞するとtalentsやNEXTに招待される道が開けている。これは他の見本市では得られないことだ。

次回、アンビエンテの2019年のパートナー・カントリーはインドだ。急速な経済発展、市場規模、将来性などさまざまな要素から中国と共に目を離せない国である。会期は2019年2月8日から12日。そして、12番目のホールが生まれてアンビエンテ全体の会場構成が変化するそうだ。その新たな全体像とともに、どのようなブランドの挑戦が見られ、誰がアンビエンテのtalentsやNEXTに選ばれるのか楽しみにしたい。

ambiente
https://ambiente.messefrankfurt.com/frankfurt/en.html

ambiente(メッセフランクフルト ジャパン)
http://www.jp.messefrankfurt.com/tokyo/ja/visitors/welcome/consumer-goods/fairs-outside-japan/ambiente/frankfurt.html

インテリア ライフスタイル
http://interiorlifestyle-tokyo.jp.messefrankfurt.com/tokyo/ja/visitors/welcome.html

IFFT/インテリア ライフスタイル リビング
http://ifft-interiorlifestyle-living.jp.messefrankfurt.com/tokyo/ja/visitors/welcome.html