消費財ビジネスの行方を占うアンビエンテ、2018年のトレンドと日本ブランド(1)

アンビエンテの「trends」、ガレリア会場にて、Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Pietro Sutera

世界最大規模のライフスタイル見本市

世界最大級の消費財見本市「Ambiente(以下、アンビエンテ)」。ドイツ・フランクフルト市で毎年2月に開催されており、2018年の会期は2月9日から13日だった。キッチンやテーブルウェアのDining、ギフトやファッション・ジュエリーのGiving、インテリア関連のLivingという3つのエリアで構成されており、展示面積は約30万平米と東京ビッグサイト総展示面積の3倍強という規模だ。

2018年の出展者は4,441組、134,600人もの来場者が集まった。現地のカーニバルと日程が重なったことなどからドイツ国内の来場者が想定の通り少なく、昨年の140,963人を割り込んだ。とはいえ、パリやニューヨークの同様の見本市と比べ頭ひとつ抜けた規模であることに変わりなく、消費財ビジネスの1年を占う場としての地位は揺るぎない。

アンビエンテに花を添える企画「パートナー・カントリー」、2018年はオランダが選出され、その展示がtrendsの向かいで行われた、Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Pietro Sutera

アンビエンテに花を添える企画「パートナー・カントリー」、2018年はオランダが選出され、その展示がtrendsの向かいで行われた、Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Pietro Sutera

来場者の国・地域は昨年の153を超えて168となった。冬季オリンピックとして史上最大と言われた2018年平昌オリンピックでも92なので、その影響力の広さが分かる。ドイツ以外の国別来場者トップ3は、イタリア、中国、フランス。来場者の伸び率トップ3は、中国、韓国、ロシア、そしてアフリカや南アメリカ等の新興国が続く。会場に身を置くと、変化を続けるグローバル経済を肌で感じることができる。

ジャーマンデザインアワードの展示や表彰もアンビエンテで行われる、trendsやパートナー・カントリーと同じガレリア会場、Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Pietro Sutera

ジャーマンデザインアワードの展示や表彰もアンビエンテで行われる、会場はtrendsやパートナー・カントリーと同じガレリア、Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Pietro Sutera

グローバルな消費財トレンドを一望

こうした広がりを持ち、ビジネスの流れが速い消費財を扱っているアンビエンテだからこその企画が「trends」だ。

フランクフルトのトレンド事務所「Stilbüro bora.herke.palmisano」が、全世界のファッションやデザイン、アート、建築のトレンドをふまえたテーマを定めて展示する。今年のテーマは「modest regenerations(慎み深い再生)」「opulent narrations(華やかな物語)」「colourful intentions(カラフルな意図)」「technological emotions(科学技術の情緒)」の4つ。

キーワードと文章、カラーパレットと共に、アンビエンテに出展されている商品で構成された空間は、さながら体感できるトレンドレポートのようだ。また、広大な会場から選りすぐられた品々を一気に把握することができるのでsomething newとの出会いも与えてくれる。

trendsより、Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Pietro Sutera

trendsの展示、Messe Frankfurt Exhibition GmbH / Pietro Sutera

この「trends」には、日本ブランドが数多く選出されている。キッチンウェアの貝印、ステーショナリーのマークス、アッシュコンセプトといったアンビエンテ常連組による時代性を反映した数々のプロダクト。TIME & STYLEのプレステージ ジャパンや、播州刃物の小野金物卸商業協同組合などが参加する「Japan Style」。そしてガレリア中央で5年連続出展となった、伝統的工芸品産業振興協会「DENSAN」に代表される日本の工芸もさまざまにコーディネートされていた。

貝印

鮮やかな色が目を引く包丁。アンビエンテの「Dining」エリアを構成する中心アイテムのひとつが刃物などのキッチン用品。

貝印

マークス

日本の感覚を盛り込んだステーショナリーで世界市場に挑戦している同社。こうしたデザイン・ステーショナリーは「Giving」の代表的な商材。

マークス

TIME & STYLE(プレステージ ジャパン)

サイドテーブル「trifle」(右)、デザイナー北川大輔さんがミラノサローネのサテリテに出展したプロトタイプが元になって商品化された。アンビエンテの「Living」エリアにはこのようなインテリア関連がそろう。

TIME & STYLEのプレステージジャパン

アッシュコンセプト

アッシュコンセプトがプロデュースしたブランドsoil、呼吸する素材である土の特徴を活かした商品群(右5点)、これ以外にもアッシュコンセプトからは複数がtrendsに選出されていた。

アッシュコンセプト

平戸洸祥団右ヱ門窯(ひらどこうしょうだんうえもんがま)

DENSANブースにて出展した長崎県の三川内焼。DENSANからは他に鎌倉彫、京表具、京鹿の子絞が選出。

平戸洸祥団右ヱ門窯(ひらどこうしょうだんうえもんがま)

西川貞三郎商店

清水焼を手がける同社、わっぱとの組み合わせが新鮮。

西川貞三郎商店

播州刃物(小野金物卸商業協同組合)

イタリアの伝統的なみじん切り包丁「メッザルーナ」(中上)、イタリアのHANDS ON DESIGNとのコラボ商品。

播州刃物(小野金物卸商業協同組合)

以上、「trends」より一部を紹介した。アンビエンテへの日本からの出展数は例年と同程度の86。割合にすると全体の2%に満たない数だが、積極的に海外市場開拓へ挑戦する様子は数字以上の存在感と言えるだろう。

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