芸術が誘う創造力への旅ー「あいちトリエンナーレ2016」レポート(2)

大巻伸嗣/重力と恩寵大巻伸嗣/重力と恩寵

東岡崎駅会場

昭和中頃の雰囲気を色濃く残す、名鉄東岡崎駅の岡ビル百貨店の3階が展示会場。

名鉄東岡崎駅ビル

名鉄東岡崎駅ビル

二藤建人

二藤建人/人間、下流へと遡る川

二藤建人/人間、下流へと遡る川

街に身体をこすりつける、全身を地面に埋める、掌のみを地表にさらす……など、身体と世界の激しい触れ合い=直接的な交感を重視する彫刻家・二藤建人。「山頂の谷底に触れる」「誰かの重さを踏みしめる」など、複数の作品が展示されているが、いずれも二藤自身の思考が身体そのものを通して表現されているように感じられた。

二藤建人/山頂の谷底に触れる(写真右)、空に触れる(写真左)

二藤建人/山頂の谷底に触れる(写真右)、空に触れる(写真左)

康生会場

岡崎城の城下町、東海道の宿場町として発展してきた市街地にある、1977年開業の岡崎シビコ。レトロがかった商業施設の6階が、完全に先端的な現代美術のギャラリーと化している空間がおもしろい。

横田大輔/Matter / Vomit

横田大輔/Matter / Vomit

ハッサン・ハーン

ハッサン・ハーン/DOM-TAK-TAK-DOM-TAK

ハッサン・ハーン/DOM-TAK-TAK-DOM-TAK

イメージとサウンドの構築と脱構築、この両者の並置を通して、独自の作品言語をつくり上げる音楽家・ハッサン・ハーン。エジプトのポピュラーミュージック「シャービー」の6つの楽曲から、ビート、音階、調子などをシャービーのミュージシャンとともに分析。パーカッションのセクションから行われた録音を共通のビートとし、アコーディオン、カワラ、キーボード(和音)、キーボード、トランペット、ヴァイオリンの6名のミュージシャンに、先の分析に基づいた音階と調子での演奏させたものを個別に録音。最後にPro-Toolsで編集し、シャービーらしき音楽が完成するわけだが、大音量で流れる音楽はいわば記号の集積だ。再構築された大衆音楽からいびつな暴力性を感じさせる不思議な作品。

コラムプロジェクト/トランスディメンション-イメージの未来形

写真の未来形の顕著な動向としての「次元」の問題、ポスト・インターネット時代における写真の3D化シンドロームに焦点をあて「トランスディメンション」をキーワードに構成。後藤繁雄ディレクションのもと、赤石隆明、ルーカス・ブラロック、勝又公仁彦、小山泰介+名和晃平、横田大輔の6名の作家が参加。写真表現のいまとその可能性が見えてくるようだ。

小山泰介×名和晃平|ダミアン・ジャレ「VESSEL」/VESSEL-XYZXY

小山泰介×名和晃平|ダミアン・ジャレ「VESSEL」/VESSEL-XYZXY

小山泰介と名和晃平のコラボレーションはなかなか刺激的。「OKAZAKI LOOPS」でも話題を集めた、名和晃平とダミアン・ジャレによるコンテポラリーダンス作品「VESSEL」のパフォーマーの身体データを3Dスキャニングし、コンピュータでシュミレーションした空間で“再撮影”。そのプリントをさらにハンドスキャンするという複雑なレイヤーの写真表現だ。

勝又公仁彦/5Days, some places / some moments, OcApJ—Panning of DaysSyncretism / Palimpsest

勝又公仁彦/5Days, some places / some moments, OcApJ—Panning of DaysSyncretism / Palimpsest

カメラでしか捉えることのできない、時の動きを可視化した勝又公仁彦の作品も目を引いた。

六供会場

細い路地が通る旧市街に残る、国登録有形文化財「旧石原家住宅」(通称石原邸)。幕末に建てられた立派な屋敷にも作品が展示される。

国登録有形文化財「旧石原家住宅」

国登録有形文化財「旧石原家住宅」

田島秀彦

田島秀彦/窓から風景へ(石原邸インスタレーション)

田島秀彦/窓から風景へ(石原邸インスタレーション)

歴史的にタイル産業の強い中部地域の、(一見どこにでもありそうな)近代タイルのデザイン意匠を使った絵画的な平面表現。地域性と歴史性を獲得していないこうしたデザイン意匠が、逆に無国籍で装飾的な平面や空間をつくり出した作品。

柴田眞理子

柴田眞理子 展示風景

柴田眞理子 展示風景

器や瓶といった陶芸としての基本型を踏襲しつつ、側面には窓のようなスリットがあいた無国籍で抽象的な作品をつくる柴田眞理子。古い転写紙を絵柄に利用しながらも、古色を与えるなどして重層的に手を加えている。

PLAT会場

愛知県の南東部に位置する人口約38万人の東三河の中心都市。まちなかには路面電車がいまも現役で走る。本格的な舞台芸術が上演可能なホールを持つ「穂の国とよはし芸術劇場」。愛称はPLAT(プラット)。

大巻伸嗣

大巻伸嗣/重力と恩寵

大巻伸嗣/重力と恩寵

設置される空間のボリューム、色や光に変化を与えて、ある種の装置のように身体的な感覚を呼び起こす、それが大巻伸嗣の作品の共通した特徴かもしれない。愛知県美術館と栄会場(損保ジャパン日本興亜名古屋ビル)にも別の作品が展示されている。

水上ビル会場

まちなかを流れる用水路上に建てられた、長さ約800メートルにわたる商店街ビル(通称「水上ビル」)の空き店舗で展示。

水上ビル

水上ビル

ラウラ・リマ

ラウラ・リマ/フーガ

ラウラ・リマ/フーガ

1階から屋上にまで約100羽の小鳥を放ち、ほとんど巨大な鳥かご状態の作品。居間や台所、押入れやトイレ、建物のいたるところに鳥の止まり木が設置されている。かつて人間の住居であったはずの場所の主は鳥、鑑賞者は完全に異物として作品に侵入することになる。

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豊橋駅前大通会場

豊橋の中心市街地である豊橋駅東口駅前に位置し、オフィスや飲食店などがまばらに入居する開発ビル。エレベーターで10階まで上り、それぞれのフロアでまったく異なった雰囲気の作品が展示、ダンジョン感が味わえる展示構成はかなりユニーク。

開発ビル

開発ビル

石田尚志

石田尚志/絵馬・絵巻

石田尚志/絵馬・絵巻

10F。室内空間や窓、光や水の動きをテーマにしたもののほか、楽曲に合わせてドローイングのイメージが展開するなど、独自の造形世界をつくり出している石田尚志。光の絵巻や線をモチーフにした映像が、かつて劇場であった空間に再び躍動感をもたらした。

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佐々木愛

佐々木愛/はじまりの道

佐々木愛/はじまりの道

9F。山の稜線や樹林、鳥などをシンプルな形象で色鮮やかに描き出すドローイングや油画で知られる佐々木愛。今回は伊勢、鳥羽から伊良湖、豊橋までつながる、古の交通を題材に制作。ロイヤルアイシングという砂糖細工技法により壁画制作し、白一色で表現された複雑な表情は観るものを引き込む。

久門剛史

久門剛史/PAUSE

久門剛史/PAUSE

日産アートアワード2015でオーディエンス賞を受賞した、久門剛史の作品はいっそう進化を遂げているように感じた。音や光、立体を用いてインスタレーションを組み立てるといってしまうと単純だが、日常の「見え方」「聞こえ方」を更新するような不思議な感覚を味わえる。

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一部の作品だけ観て知った風なことをいうのは危険だが、日常と切り離される瞬間、それはここではないどこかというより、得体の知れなさと出会えるような作品に心惹かれた。近年の芸術祭は、地域の歴史と文脈に接続するのが慣習化(もっといえばマナー)しているように感じることがままある。「キャラヴァンサライ」という解釈の難しい、あるいは解釈の余地のあるテーマが、結果的にすっと一本の糸が通った感じ、それがじわじわと効いてくる、そんな個人的な感想を持った。

あいちトリエンナーレ2016
http://aichitriennale.jp/