大阪・関西万博「静けさの森」全貌公開、藤本壮介・忽那裕樹がデザインを担当

2025年大阪・関西万博で開催される「静けさの森インスタレーション」の全貌が公開された。
「静けさの森」は、万博会場を未来社会のショーケースに見立て、先進的な技術やシステムを取り入れ未来社会の一端を実現することを目指す「未来社会ショーケース事業」のうちのひとつ。
企画・監修は、万博のテーマ事業プロデューサーでデータサイエンティストの宮田裕章と、会場デザインプロデューサーで建築家の藤本壮介。デザインは藤本とランドスケープデザインディレクターの忽那裕樹、共同キュレーションはアートディレクターの長谷川祐子が担当する。
「静けさの森」はシグネチャーパビリオンと一体となって、万博の中核テーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」について問いかけるインスタレーション。万博会場の中央に位置し、会場全体を緩やかに接続する役割を持つ。
これまで万博の象徴としてエッフェル塔や太陽の塔といった人工物がつくられてきたが、今回、日本の生態系の基本ともいえる「森」を会場に招き入れることで、自然との共鳴・つながりのなかで未来への問を立てられる場所とした。
森には、大阪府内の公園などで間伐される予定だった樹木などを約1,500本移植。会期中はトマス・サラセーノ、レアンドロ・エルリッヒ、ユイグ、オノ・ヨーコ、ステファノ・マンクーゾ with PNATといった、世界の名だたるアーティスト5名が手がけるアート作品が展開され、訪れる人に憩いの場を提供するとともに、作品を通して地球や自分自身の“いのち”に思いを馳せることのできる場となる。

「静けさの森」全体像
森をデザインするということについて、建築家の藤本は3月12日におこなわれた記者発表会のなかで「建築家は人々だけでないすべての命、地球環境のための場所をつくるのがこれからの仕事になってくると思う」と述べ、自然の循環を意味する大屋根リングを会場全体の骨格とし、その中央に森を配置した背景を以下のように語った。
「自然の森を招き入れることで、自然を中心に据え、自然とともにこれからの社会・地球環境をつくっていくという表明になると考えた。中央の森を取り囲むように各国のパビリオンやシグネチャーパビリオンが並び、さらに多様な世界・自然環境・生態系をひとつにまとめる木造の大屋根リングがある。それによって自然・人工物・各国のさまざまな文化の多様性がひとつにつながるような場をつくりだそうという意図から、あえて建築ではなく自然の森をつくろうと考えた」
また、忽那は今回の規模・密度で森をつくるのははじめての試みだったとし、間伐材を使用したことについて「間伐材は少し傾いていたり葉が上にしかついていなかったり、見てくれが良くないものも全部集めてきて、多様な樹木の環境をつくってきた。(中略)ひとつの里山のような風景をつくるかたちで取り組んできた」と語った。
さらに来場者に対しては、「森の中央に行くと水と緑と空しか見えない空間に出会う。その美しい風景のなかで自然と人とのあり方についても考えてもらえたらうれしい」とコメントした。
「静けさの森」では、期間中に開催される「テーマウィーク」と連動し、宮田裕章とほかのテーマ事業プロデューサーらの万博関係者との対話イベント、世界トップクラスのシェフとの食のセッションイベントも開催される。