株式会社コパイロツト
株式会社コパイロツト
制作部門を社内に持たない、プロデュースとプロジェクトマネジメント、ディレクションに特化したユニット。プロジェクトの特性に合わせ、常に最適なチームづくりを目指し、プロジェクトを運営管理。クライアントやパートナー会社の「COPILOT / 副操縦士」となり、目的地にたどり着くまでのプロセスをトータルでサポートしている。
https://copilot.jp/
会社の垣根を超えたチームが次々結成されるけれど、メンバーの流動性はどんどん高まる。チームでの仕事の進め方は時に属人化しがちですが、メンバーに変化があってもヘルシーに仕事を進めるにはどうすれば良いのか。これまで培ってきた経験や知識をしっかり受け継ぎ活用していくための、ナレッジマネジメントのエッセンスを探ります。
——まず、おふたりが所属しているナレッジラボについて、成り立ちから教えてください。
高橋悟志さん(以下、高橋):もともとコパイロツトはWebディレクターの集団でしたが、Webはナレッジが変化するスピードが極端にはやく、ナレッジを蓄積することに価値が生まれにくかったそうです。しかし、業務が徐々にプロジェクトマネジメント(以下、PM)領域に移行し、ナレッジを蓄積する価値が生まれてきました。さらに、個人の集まりではなく、チームや会社である意義はなにかと考えたときに、ナレッジを共有してチーム全体の力にしていくことが大事だと代表の定金が考えていました。そのタイミングで私が入社して、汎用的にみんなが使えて、効率や生産性をあげるものをつくる取り組みとしてスタートしました。
——立ち上げから3~4年経ったいま、取り組みとしての手応えはありますか?
高橋:この1年半くらいで、ナレッジマネジメント領域でクライアントから相談をいただくことが増えてきました。ナレッジマネジメントだけで仕事になることが増えてきたのはひとつの節目かなと思います。
——ナレッジマネジメントがうまくいくと、組織にどんな効果をもたらすのでしょうか?
米山知宏さん(以下、米山):いちばんシンプルなところでは、クライアントの仕事の状況を言語化して、自分たちのことを客観視する機会をつくるということ。議事録をつくることもそうですが、会議で議論されることを議事録で文字に起こすことによって、参加者がその会議を客観的に見ることができます。「内」に入っていた情報が、テキストとして「外」に出ることによって状況を客観的に見られる状態になる。こういう議論もしたほうがよかったねとか、議論のプロセスが見えたねとか、このテーマが足りなかったねとか、自分たちがやってきたことをふりかえる状態になる。そのためにはまず自分が客観視できる状態にならないといけない。
言語化してそういう状態をつくるというのが、ナレッジマネジメントの大きな役割です。その上で何かしらの業務に使える方法論とか、仕事のやり方の「型」を見いだしたり、つくったりしていく。そうすれば、標準的な業務のやり方がわかるので、異動して人が変わっても仕事が滞りなく進みます。
高橋:すごく平易な言葉で言うと、物事がスムーズに進むようになる、ということです。「なにかうまくいってない」からコパイロツトに声がかかるわけです。うまくいってないところを改善しながら進めていくのは元々Web制作のプロジェクトでもやっていたことなのですが、そこで得た知見を、そのときだけでなく、未来にも生かしていこう、ということですね。
例えば、あるプロジェクトでメンバー全員が初めて使用するクラウドストレージでファイルの共有を始めました。しっかりとフォルダの階層構造を設計し、運用しているにもかかわらず、不慣れなうえにUIがわかりにくく、ファイルを探しづらいという「うまくいっていない」状況がわかりました。
そこで、メンバーが使い慣れていて頻繁にアクセスするプロジェクト管理ツールのWikiを使って、構造化したファイルのリンク集のようなものをつくることをPMが発案しました。これがナレッジです。こうしてうまくいってない状態を改善し、物事がスムーズに進むようになります。
そして、こうしたプロジェクト特有のナレッジを、組織の中で共有し、他のプロジェクトチームでも使えるようにすることがナレッジマネジメントです。ひとつのプロジェクトだけではなく、組織全体で物事が円滑に進むような状態にしよう、ということです。それが、未来にも生かすということにつながります。
最近、同じストレージサービスを利用している他のプロジェクトがスタートしたところ、まったく同じ状況が生まれ、早速このナレッジを導入して効果が出ています。
ナレッジマネジメントは、学術的にはもっと広い意味を持っていて、その奥深さには大いに共感をしていてナレッジラボでも研究をおこなっています。しかし、そのままの意味では扱いが難しい。そこで、最初はあえて多義的な側面を削ぎ落としてこれがナレッジマネジメントであると説明しています。
——ナレッジを構築していくプロセスを教えてください。
米山:個人的には、ナレッジをつくるプロセスは「まずこれをやって、次にこれをやって、最後にこれをやる」という順序だったプロセスではなく、
①現状を可視化する(ログ化)
②小さな仮説(ナレッジの種)をつくってみる
③小さな仮説をより分かりやすい形に育てる
④それぞれのログ・ナレッジにアクセスしやすい状態をつくる
という活動の組み合わせだと感じています。これをどこからどのようにやっていくかは、ナレッジマネジメントを進めようとしてる組織の思いや状況次第ですね。
たとえば、「とにかくいまある情報を一旦整理したい」ということであれば、「④それぞれのログ・ナレッジにアクセスしやすい状態をつくる」ことからアプローチするかもしれませんし、より新しい仕事のやり方(ナレッジ)を生み出していきたいということであれば、「②小さな仮説(ナレッジの種)をつくってみる」からアプローチすると思います。
「仕事の記録が全く残っていなくて、組織で共有することができない」という課題を強く感じている組織であれば、「①現状を可視化する」に力を入れて、議事録を残したり、実施した仕事のログが残るような仕組みをつくるところからアプローチします。
このようにアプローチは状況に応じて様々な形を取りますが、どの活動をやるにせよ共通して大切なのが「ふりかえりをする」ということだと感じていまして、「ふりかえり」がなければ、その組織にとって質の高いログやナレッジになっていかないのではないかと思います。
——ワークショップは行いますか?
米山:してもいいとは思うものの、必ずやらなければいけないことではないと思います。 一緒に共有できてクライアントの課題感を抽出することの方が大事ですから。
高橋:ナレッジマネジメント自体が目的ではなく、生産性や効率性を高めることを目指しています。ワークショップは参加者の時間をもらって手早くファシリテーターがまとめていきますが、一緒に並走していくほうが、時間は少しかかるかもしれないけれど確度は絶対に高い。ワークショップで1時間で出てきたものが、クライアントにとっての本当の課題なのかはちょっとわからないですよね。
米山:それよりもおすすめのやり方は、ふりかえりを定期的にやることです。付箋にアイデアを書いて貼り出したりもするのでワークショップ的ではあるんですけれども、自分たちがやってきたことのふりかえりを定期的に行う中で、課題感やこんなナレッジをつくろうという種が出てくるので。実際に僕らコパイロツトも、地道なプロセスのほうを大事にしています。
——ナレッジマネジメントを担う人は、どういう心構えを持っていたら良いと思いますか?
米山:ナレッジマネジメントを高尚なものだと考えすぎないほうがいいと思っています。何か仕事をしている中で、「これはこうしたらいい」と思う時は誰しもあると思いますが、まずは形にして組織に投げかけていくこと。個人の心構えとしてはもちろん、組織としても新しい意見をどんどん出してもらえるような空気づくりが重要だと思います。
——ナレッジマネジメントを回していくのに必要なことはなんですか?また、そこでつまずきがちなポイントと、それを解消するために何が必要なのでしょうか?
米山:まずは行っている業務の基本的な情報をログとして可視化していくことが必要だと思っています。この特集の第1回目のアジェンダや議事録の話に近いですが、それが繰り返されることでアジェンダのログが溜まっていく。するとログを見て、ふりかえられるようになるんです。その時々でプロジェクトのスクリーンショットを残していく感覚に近いのですが。
その上でふりかえりもしながら、アイデアをちゃんと出せるような裏側をつくることが次のステップになります。思ったことを組織に対してちゃんと投げかけられれば、仕組み化できる。最初に間違ってもいいから各自の思いを出して、それをチームとしてもっといいものにしていく。そうするとだんだん汎用性の高いものへ昇華していきます。
——強いチームをつくる以前に、人がどんどん入れ替わっていく、あるいは増え続けていくような流動的な状況だと、チームをつくることそのものの難しさがあるように思います。
米山:組織の中のことをちゃんと言語化して、「この組織はこんなときにはこんな仕事のやり方をする」という振る舞い方を言語化することが大事。そうしないと新しい人が入ってきた時にまた一から説明しないといけない。組織のルールや業務のやり方をちゃんと言語化していくことが、人の流動性が高まっていく中で大事なことだと考えています。
業務フローを定義する中で、どんな会議が何のために行われているのかふりかえれる状態をつくる。そのために会議の目的や役割、そもそも誰が出るべきなのかを定義すると、新しく入ってきた人も参加すべきかなど判断しやすくなる。
どういう役割が必要で、誰がそこを担うべきかを言語化するのは私たちもナレッジマネジメントの一つの取り組みとして定義していて、それを私たちが案をつくってクライアントと一緒にブラッシュアップしていきます。
——それらはどんな資料に落とし込んでいますか?
米山:ツール自体は特殊なものでなく、Googleスプレッドシートなどを活用しています。例えば会議の一覧だと、いつどんな目的の会議があってその終了条件、どうなるとその会議が終わりなのかという定義づけをします。あとは基本的なアジェンダとして、参加する人とその役割を整理します。ただ、このような会議体の整理もクライアントの状況を見て必要と判断したからやっているだけで、まずこれをやればいいという話ではありません。
また、クライアントが行っている業務の流れ・やり方を言語化することもあります。たとえば、クライアントが行っている一連の業務について、まず最初のフェーズではこれをこのようなやり方で、次のフェーズではこれをこのようなやり方で……という形で業務の基本的なやり方を整理していきます。もちろん、実際の業務のやり方は状況に応じて変わるため、言語化したとおりに行くわけではないですし、必ずしもそうである必要もないのですが、基本形があるとそれが共通言語になると考えています。
これはPM要素も強くて、PMとナレッジマネジメントを一緒につくり上げていくような形になります。ナレッジをつくるとは、そのクライアントに合わせた本をつくることに近いかもしれません。
——最後に、ナレッジマネジメントをはじめるために準備すべきことは何でしょうか?
米山:気づかずにナレッジになっているものって、実はいっぱいあると思っていて。ナレッジをつくるなんて無理と思っちゃうかもしれませんが、自分の目の前の仕事を何とかしたいと思っていれば、少し便利にしようと工夫する人が多いと思います。そこで何かしらつくっていけば、それを共有するだけでもナレッジは変わってくる。「ちょっと便利なツールをつくろう」と気軽に話して共有するのも、大事なんじゃないかなって思います。
高橋:まずはつくって使ってみること。アジェンダシートもスプレッドシートに合わせていまの形に落ち着いていますが、最初は全く違うものでした。アジェンダをつくってそれに沿って進めると周りに言うだけでも全然違う。言うだけで解決する事って、意外とたくさんあると思いますよ。
【参考記事】
COPILOT BLOG「あらためて、ナレッジとはなにか、ナレッジマネジメントとはなにか」
https://blog.copilot.jp/entry/what_is_knowledge_management
プロジェクトや組織の状況を定期的にスナップショットする意義
https://blog.copilot.jp/entry/2018/10/22/230000
「具体と抽象」、そして「過去と未来」を行き来する情報と知
https://blog.copilot.jp/entry/information_four_quadrants
構成・文・撮影:八木あゆみ 編集・聞き手:瀬尾陽(JDN)
株式会社コパイロツト
制作部門を社内に持たない、プロデュースとプロジェクトマネジメント、ディレクションに特化したユニット。プロジェクトの特性に合わせ、常に最適なチームづくりを目指し、プロジェクトを運営管理。クライアントやパートナー会社の「COPILOT / 副操縦士」となり、目的地にたどり着くまでのプロセスをトータルでサポートしている。
https://copilot.jp/