【東京造形大学50周年記念】次世代かもう一つ次の世代かに残る普遍的な紋様をつくりたい-野老朝雄インタビュー(2)

【東京造形大学50周年記念】次世代かもう一つ次の世代かに残る普遍的な紋様をつくりたい-野老朝雄インタビュー(2)

「これはできる」ことの自覚とものづくりの根源にあるもの

時代のコンディションはすごく大きく変化していきますから、いま美大をめざそうとする人たちが羨ましいですね。豊かだし贅沢になっているから心にも余裕があるでしょう。インターネットも普及して、当時に比べたら100倍以上の情報に囲まれているわけですし。でも彼らがその情報をすべて享受し、その分頭がよくなったかといえばそれはわからないです。逆に情報の数が限られていた頃は、経験したいなら、知りたいならまずその場所まで行かざるを得なかった。自分の能力やコンディション、経験不足は体験を通してでしか補えないという不便さがあったからこそ、コンディションスペシフィックで言うところの「何ができるか」の自覚も明確にできた気はします。

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美術や音楽、スポーツなど、主要五科目以外の学問って、例えば美大なら、子ども時代にお絵かきが大好きすぎてやめられず叱られていたような人たちがプロとして活躍する世界なんです。やめろと言われたところでやめられない、すばらしく本能的な分野というか。こういう純粋な表現願望は、美大や建築という概念や言葉が生まれる前からあって、いろんな形で脈々と受け継がれてきているものです。僕のものづくりの根源もそんな「やりたいからやる」部分にあると思っています。最近、ようやく自分が何をしたいかが明確に整理されてきた気がしていて。とはいえ、まだまだ怪しいところはあるので、死ぬ前くらいに「これができる」と断言できればいいなと。そのためにもやり続けることが大事だなと思います。

いまの自分と学生時代の自分がもし会ったとしたら、向こうは「何で平面やってるの?」とびっくりするんじゃないかな。それくらい違っている。だから今後も、自分が70歳くらいになって何をやっているかも正直わからない。ただ僕、卒業制作で学校の模型をつくったんですが、学校への思いはその時から変わらないです。作家としてもがんばりたいけど、いつかは学校をつくりたい。学校と言っても単位をあげたり教育するされるという場ではなくて、アリストテレスのスコラ学が生まれたような、頭がいいヤツがいるぞと人が集まるような場をつくるのが夢なんです。

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幅広い人に向けた普遍的な作品づくりについて

普遍的…というと、まず僕は古い物に対して大きな憧れがあるんです。旅行先で思わず立ち止まる場所、いいなと思う光景はあるけど、そういう物って時間の経過が重要で、自分が生きてる限りはつくることができない。ということは、紋様でもなんでも残るものをつくらなければならない。残る紋様にするためには強度が必要で、強度がある紋様とは何かと遡っていくと、最も大事なのは「美」じゃないかと。でもその思想も、残念ながら生きている間には証明できないでしょう。だから意地でも残したい。

「苔むすまで」という時間軸に憧れるのは、元々が建築をやっていたからだと思います。例えば、唐草は一見だとかなり過剰なデザインだけど、普遍的になったことで日常になじむものになっています。「チャイニーズグラスモチーフパターン」と呼ばれる唐草のように、普遍的な「ジャパニーズグラスモチーフパターン」をつくりたいんです。今の活動は、長く残るものをつくるための種まきをしているようなものです。実際、ひたすら自分の探究心が赴くまま、100年先を意識して制作を続けてきました。ですから、あの紋様から2020の「Unity in diversity」というスローガンが抽出されたとしたなら、つくりつづけてきてよかったと本当に思います。

アーティストやデザイナーの社会に対する役割

例えば広告だと広告代理店って言いますよね。自分が着るシャツをつくれないからファッションデザイナーがいて、家が建てられないから大工がいる。アーティストもデザイナーもそれと同じで代理なんです。社会の革新は進んでも需要があるはずだから、今後も必要とされる存在だと思います。絵がなかった時代はなかったし、紋様や柄だってそうです。社会の構成要素の一部分である以上、需要がなくなることもないと思います。その代理人として、次世代かもう一つ次の世代かに残る普遍的な紋様をつくりたいんですよ。人が全員無地の服を着る時代はさすがにないはずだし、僕はそこでの存在意義を自らこじ開けようとしているのかもしれないです。だってあのパターンも、元はといえばノークライアントで自分用につくっていた作品でしたから。

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東京造形大学50周年へのメッセージ

「100年をめざしましょう」ですね。本気で僕ら卒業生ももう少しがんばらないとダメじゃないかなと思うんです。今や少子化で大学も淘汰されつつある状況だから、50周年を迎えられただけでも充分すごいことです。ただ、100周年を目指すには楽観視もしていられないのではと。ですから100年に向けて意識して動く必要があると思います。僕は僕でがんばりますが、援護射撃になることであれば協力していくつもりです。それから、何かつくりたいという気持ちがある若い人には、それは本能に近いものだから「やりたいならやっちゃおうよ」と伝えたいです。

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取材・文:木村早苗 撮影:葛西亜理沙

TOKOLO.com
http://tokolo.com/

■東京造形大学 創立50周年記念事業

展覧会
「勝見勝 桑澤洋子 佐藤忠良―東京造形大学 教育の源流」
同時開催「東京造形大学 ドキュメント1966-2016」

展覧会
「ZOKEI NEXT 50」東京造形大学の教育成果展
東京造形大学卒業後、社会で斬新な活動を行っている若手の作家、デザイナー、クリエイターなどに焦点を当てた作品展示を8つの会場にて連続的に行い、東京造形大学の50年にわたる教育研究の歴史とその成果を展開し、これからの50年を展望。
【おもな出展者】
野老朝雄(アーティスト)、藤森泰司(家具デザイナー)、鈴木康広(アーティスト)、田子學(デザイナー)、神原秀夫(プロダクトデザイナー)、井上綾(テキスタイルデザイナー)、渡辺大知(俳優・歌手・映画監督)ほか計71名

関連展示/イベント
「在学生コンペティション:社会を創るアートとデザインの力」
「在学生コンペティション:社会を創るアートとデザインの力」最終審査・講評
「東京造形大学 × ウルトラマン 50」
「つながる、アートの力:球体キャンバスドローイングワークショップ」作品展示

シンポジウム
「美術/芸術/アートの形成 ― 美術大学の役割」
「教育がつなぐ ― 社会、創造、造形。― 」

東京造形大学 創立50周年記念サイト
http://www.zokei.ac.jp/50th_anniversary/index.html