選ばれたのは、“ロゴの角度60度へのこだわり”を意識したデザイン
――一人ひとりの働きやすさと働きがいの双方にこだわったんですね。今回採用されたウェアのデザインについて具体的に教えてください。
池田:アイテムとしては、オールシーズンジャケットとパンツ、半袖ポロシャツ、防寒ジャケット、空調服の5点です。デザインは3案の提案をいただきました。最終的にはグループ全従業員に投票してもらい、紺色をベースに赤を散りばめ、丹青社のロゴの角度と同じ60度のラインを取り入れたデザインに決定しました。

完成したワークウェア
池田:デザインについて従業員からは、「ついてしまった塗装などが目立たず、明らかに汚れているように見えないのでいい」「電車通勤で現場に行く際も恥ずかしくないデザイン」「汚れの目立ちにくさと維持の観点で現場服に必要なデザインに即している」「シックでシンプルである点がとてもいい」などの意見が寄せられました。
また、詳細を煮詰めていく上で、「施工現場で出やすい石膏ボードなどのホコリ汚れが目立たないようにしたい」「現場を預かる空間づくりのプロフェッショナルとしての佇まいを整えたい」などの大切な現場の生の声も集まりました。
――素材に関してのこだわり、特徴はありますか?
石川:スポーツウェアでは、動きやすさと快適性が求められます。このワークウェアでも、ストレッチ性、軽量感を感じられる生地であるポリエステル100%にこだわっています。以前のワークウェアはコットンの含まれた混紡素材で、生地としては丈夫ですが、乾きにくく、シワになりやすいという側面を持っていました。今回の生地であればそこもクリアできています。
また、防寒ジャケットには蓄熱保温素材を採用しています。スリムなシルエットでも冷気が服の中に入ってくるのを防いでくれます。
――機能面ではどのような特徴がありますか?
石川:ポケットの数にはこだわりました。オールシーズンジャケットだけでも全部で9カ所ほどのポケットを設けています。そして、ポケットをたくさんつけるとスタイリッシュに見えなくなるので、なるべく表からはわからないようにしているのも特徴ですね。
みなさんがすべてを使うことはないと思うので、自分で使いやすいポケットを見つけてほしいと思っています。

コーポレートカラーを反映した赤い糸が施されたポケット
仲野:以前のウェアではポケットが少なく、私物のポーチをぶら下げて、そこにメジャーやペン、スケールなどを入れていました。でもそこから落としてしまったりするんですよね。そのほかにも、現場で使うタブレットは、ズボンのウエスト部分に挟んでいる人もいました。
石川:オールシーズンパンツには、サニタリー用品も携帯できるシークレットポケットを設置しました。これも女性制作職の声を形にしたものです。また、ジャケットの背中にはタブレットがすっぽり入るポケットもつくりました。
そのほか、災害級の猛暑が続く気候変動リスクから従業員のみなさんの健康を守るための一着として、半袖ポロシャツを公式アイテムとして新しく追加しました。同じく熱中症対策が必須となる夏季に向け、株式会社空調服の協力のもと、夏用の正装として着用できる長袖ジャケットの空調服も製作しました。
細かな点ですが、各ジャケットにはファスナーを上まで上げた時に顎とのコンタクトを減らせるように、“返し”が付いています。直接当たらないことでストレスを軽減できます。あとは、視認性を高めるために、袖や背中にリフレクターを付けていますね。

ファスナーの首元部分
仕事のパフォーマンスを上げる“着たい服”
――製品を折りたたんだ際に、一般的なTシャツの縫製とは違うなと思いました。立体的に裁断されているのは、スポーツウェアならではなのでしょうか?
石川:そうですね。基本的にジャケットにはセットイン(肩に縫い目のある仕様)があり、アームホールに袖を縫い付けるのが一般的ですが、デサントの製品はあえて肩のところに縫い目がありません。そうすると腕の上げ下げがしやすいんです。一般的な洋服のように折りたためませんが、動きやすさにはかなりこだわっています。
矢澤:アスリートは0.1秒を縮めるために、食事やトレーニングなどさまざまな努力をします。ウェアもその一部であって、糸数をひとつ減らすことで、もしかしたら0.1秒早くなるかもしれないということを日々考えています。
石川:デサントの製品にはかなり厳しい基準を設けているので、世間では良いとされても我々が良しとせず、世の中には出さないお蔵入りになってしまうものも実はたくさんあります。
――スポーツウェアと異なる、ワークウェアならではの特徴はありますか?
石川:スポーツウェアの場合はアスリートが着るので、とにかくパフォーマンスを最大化できる動きやすさや汗処理、さらにはタイムを縮めることを優先して製作します。
ワークウェアの場合は、そこに耐久性や安全性も必要になります。何かに擦れたり、荷物を持ったりといったシーンが想定されるので、ワークウェア専用の生地を開発するところから取り組んでいます。いままでよりも色が褪せにくいとか縮みにくいとか、使っていくうちに感じられることもあると思います。
――できあがったウェアを実際に着用して、どのように感じますか?
仲野:まず着心地が良くて、とても軽いというのが第一印象でした。私は上着を持って打ち合わせに行き、そのあと現場で羽織るという使い方もするので、コンパクトに畳めてシワになりにくいのはすごく助かります。
丹青社として認識してもらえるブランド力がありつつも、ロゴの部分が取り外しできるので、着たまま電車に乗っても違和感がないのも良いですね。

――みなさんのお気に入りポイントはありますか?
仲野:私はもうポケットの数が増えたことが本当に嬉しいです!
池田:個人的には、丹青社のロゴから引用した斜め60度の線が気に入っています。ロゴの赤と青には「情熱と英知」などの意味があり、それらが均整になるようにという想いを60度で表現しています。そのこだわりをウェアで表現できたのがよかったなと思っています。
石川:細かいところですが、ファスナーのカラーにもこだわっています。色は何千種類とあるんですけど、この中から丹青社のコーポレートカラーに近いものに合わせました。さらにポケットなどの端に施された「カン止め」の糸も、このファスナーの色に合わせて選んでいます。
矢澤:ロゴが取り外しできるのは、電車に乗る時や昼食の時に便利だなと思いました。他社にもおすすめしたいポイントです。

――今回のウェアを通じて、どんな働き方をしていきたいですか?
仲野:いままで“制服として着なければならない”ものだったのが、この動きやすいワークウェアで働きやすくなって少しでも働く環境が改善されればと思います。仕事のパフォーマンスも上がると思いますし、“このウェアを着て働きたい”と思ってくれる人が増えたらいいなとも思います。
池田:服は気持ちにすごく影響するものですよね。自分の気に入った服を着ていることで気分が良くなって、最終的にいい仕事ができるようになるといいなと。ポケットが多いとか、日常的に扱いやすいといった機能も大切ですが、まずは着ている人が満足できる、それによってパフォーマンスが上がることが一番理想ですね。
ひいては、こころを動かす空間づくりにつながり、人と社会に丹青(いろどり)を届けるというパーパスを体現していければと思います。
石川:まずはみなさんが「着たい服」に仕上がっていたら嬉しいです。個人の満足度が高まって、さらに個人が集合する企業の価値までもが高まったら嬉しいですね。
矢澤:僕たちの仕事がほかの方の仕事の効率を上げることや、モチベーション向上につながるっていうのはすごく誇りに感じています。この技術をさらに磨いていきたいですね。

プロジェクトの“中の人”に聞く
石本真弓(株式会社丹青社 バリュープロダクションセンター バリュープロダクション統括部 制作戦略室 制作戦略課 所属)

制作職の経験を活かし、つなぐプロジェクトの事務局として活動している石本さんに、「つなぐプロジェクト」についてさらにお話をうかがいました。
「つなぐプロジェクト」は、「丹青社女性制作職メンバーが部門を超えて経験や課題を共有し、自分らしく働くことのヒントを得る」といったコミュニケーション機会創出のための取り組みです。その中でも働きやすい環境づくりに焦点を定め、ワークショップや座談会をおこなってきました。
今回のワークウェアリニューアルは、つなぐプロジェクト女性制作職交流会からの情報発信をきっかけにスタートしました。そこで挙げられた現場からの声が、リニューアルポイントとして随所に活かされています。
丹青社では、女性の制作職の人数が年々増加している一方で、女性が働きやすい環境整備はまだ改善の余地が残っており、労働環境改善やキャリア継続といった課題が存在しています。また、女性が働きやすい環境づくりは誰もが働きやすい環境づくりにつながると考え、誰もがどんな状況でも、やりがいを持ちながら働き続けられる環境を実現するために、まずは女性制作職に焦点を定めて活動してきました。今回のワークウェアリニューアルをはじめ、つなぐプロジェクトで得られた意見はさまざまな施策に活かされています。
今後つなぐプロジェクトは、「女性制作職のため」から「全制作職のため」「全従業員のため」へ考えるフェーズを移し、枠組みを広げていくことを考えています。個人の努力に頼りすぎず、組織的なしくみによって「誰もがどんな状況でも、やりがいを持ちながら働き続けられる環境」の実現に向けて活動を続けていきたいと考えています。
■株式会社丹青社
https://www.tanseisha.co.jp/
■デサントジャパン株式会社
https://www.descente.co.jp/
文:井上倫子 撮影:高木亜麗 取材・編集:岩渕真理子(JDN)
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