ものづくりを本気の仕事にする「台東デザイナーズビレッジ」。起業を目指すクリエイターを応援する施設の魅力(1)

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ものづくりを本気の仕事にする「台東デザイナーズビレッジ」。起業を目指すクリエイターを応援する施設の魅力(1)
全国でも有数の靴やバッグ、帽子、ジュエリーの産地である東京・台東区。2004年に設立された台東デザイナーズビレッジ(通称:デザビレ)は、台東区内で廃校となった校舎を活用した、事業成長を目指すクリエイターの支援を行う施設だ。入居者は3年間の入居中、アトリエとして事務所スペースや共用施設を使うことができる。卒業生には「リトゥンアフターワーズ」の山縣良和さんや、「ヒロコレッジ」の高橋理子さんなど、国内外で活躍するクリエイターを多く輩出している。今回、同施設の卒業生で刺繍雑貨ブランド「tamao(タマオ)」を手がける沼田真央さんと、プロダクト・グラフィックデザインをおこなう「スタジオスルメ」代表の菊池光義さん、そして入居者のよきアドバイザーである“村長”の鈴木淳さんの3名に、入居時の思い出話などを交えながら、施設の魅力や入居するメリットについて語ってもらった。

——デザビレを今年3月に卒業したばかりの菊池さんと、6年前に卒業した沼田さん。まずはそれぞれのブランドのコンセプトなどについて教えてください。

沼田真央さん(以下、沼田):私はおもに、刺繍ものの雑貨をつくっています。ベースとしてイラストを描き、その上から刺繍する、塗り絵のようなつくり方が特徴ですね。モチーフは、猫などの動物やイソップ童話など物語性のあるものを得意としていて、色と材料の組み合わせ、キャラクター性で特色を出しています。刺繍そのものはインドの工場で行い、それぞれのパーツの組み立てや完成までを日本で行っています。

ビーズと組み合わせてつくられたネックレス。モチーフの可愛さが際立つデザイン

イラストを下地に刺繍をしている様子

イラストを下地に刺繍をしている様子

菊池光義さん(以下、菊池):うちはデザイン事務所で、家具・家電・生活雑貨などのプロダクトデザインや、ロゴやパンフレットなどのグラフィックデザインの依頼を受けています。子どもが座ると尻尾が生えているように見える「しっぽチェア」や、時計の短針が蝶々、長針が枝のモチーフになっている「とまり木の時計」などをデザインしています。噛めば噛むほど味が出るようなものをつくりたいという想いから、「スタジオスルメ」という名前をつけました。

しっぽチェア/尻尾の部分は取り外して洗うことも可能

しっぽチェア/尻尾の部分は取り外して洗うことも可能

とまり木の時計/1時間に1度、虫が植物に止まるようになっている。単なる針の交差に、ほんの少しデザインを加えたことで特別な意味を持った時計に

とまり木の時計/1時間に1度、虫が植物に止まるようになっている。単なる針の交差に、ほんの少しデザインを加えたことで特別な意味を持った時計に

魅力のひとつは、村長からのアドバイスや仲間の存在

——デザビレに入居した理由を教えてください。

(左)菊地光義さん:茨城県出身。大工だった祖父と父の影響を受けてものづくりの道に進む。インテリアライフスタイル ヤングデザイナーアワード受賞(2013)。国際消費財見本市アンビエンテ(ドイツ・フランクフルト)招待出展。文化学園大学非常勤講師。趣味は山登り。<br /> (右)沼田真央:山口県生まれ。多摩美術大学卒業。本屋、画材会社を経たのち「tamao」を設立する。ブランドネームは小学校時代のあだ名から。定期的にワークショップの講師なども務める。

(左)菊地光義:茨城県出身。大工だった祖父と父の影響を受けてものづくりの道に進む。インテリアライフスタイル ヤングデザイナーアワード受賞(2013)。国際消費財見本市アンビエンテ招待出展。文化学園大学非常勤講師。趣味は山登り。今年3月に台東デザイナーズビレッジを卒業し、台東区内に事務所を構える。
(右)沼田真央:山口県生まれ。多摩美術大学卒業。本屋、画材会社を経たのち「tamao」を設立する。ブランドネームは小学校時代のあだ名から。定期的にワークショップの講師なども務める。台東デザイナーズビレッジ卒業後は台東区内にショップを構え、台東区主催のザッカデザイン画コンペティションの審査員を務めるなど多方面で活躍中。

沼田:台東区がバックアップしているという試みと、廃校活用というキャッチーさに惹かれたことがひとつ。また、当時、アパレルやファッション系に特化した創業支援施設はありませんでした。そんな折、デザビレに入居したという人とイベントで知り合い、本格的に事業展開したいならと、デザビレのパンフレットをもらったのがきっかけで応募しました。また、デザビレに入居していた先輩から、個人ではそろえづらい大型の機械類があると聞いたことや、ネットワークづくりもしやすいのではないかと考えました。いろんなタイミングがうまく重なって、入居できることになりました。

菊池:僕は学生を卒業するのと同時に埼玉県の川口で活動を始めたんですが、活動2年目に「インテリアライフスタイル」という国際見本市で、ヤングデザイナーアワードを受賞し、そこから徐々に仕事がもらえるようになっていきました。その時期に一緒に出展していたデザイナーから、デザビレの存在を教えてもらったんです。東京に出たい気持ちも持っていましたし、村長というアドバイスしてくれる方の存在やデザイナー仲間がいることなどの話を聞き、楽しそうだなと思って応募し、入居することができました。

鈴木淳さん(以下、鈴木村長):デザビレの入居業種は年度によってカラーがありますが、ファッション系の人たちの口コミで入居者が集まることが割合的には多いですね。設立当初は3年に1回の全室入れ替え予定でスタートしたんですが、第2期生から毎年入れ替えるようにしたので、中学や高校と同じように、先輩、後輩ができる仕組みになりましたね。

鈴木淳:千葉大学工学部卒業。カネボウファッション研究所勤務を経て独立。ものづくり企業のマーケティングが専門。1998年にNPO法人ユニバーサルファッション協会を設立。障害、高齢、体型などに関わりなくファッションを楽しめる社会づくりの啓蒙活動を行う。2004年に「台東デザイナーズビレッジ」の村長に。クリエイターや小さな企業の事業コンセプトやマーケティングの指導を行っている。

鈴木淳:千葉大学工学部卒業。カネボウファッション研究所勤務を経て独立。ものづくり企業のマーケティングが専門。1998年にNPO法人ユニバーサルファッション協会を設立。障害、高齢、体型などに関わりなくファッションを楽しめる社会づくりの啓蒙活動を行う。2004年に「台東デザイナーズビレッジ」の村長に。クリエイターや小さな企業の事業コンセプトやマーケティングの指導を行っている。

沼田:学校は同世代ですが、デザビレは年齢制限がないので20代の若い人もいますし40代の方もいます。世代の幅が広いと仕事のやり方などもいろいろあるので、そういう面でも視野は広がります。

菊池:デザビレでは3か月に1度、入居者ミーティングがあるのですが、毎回誰かしらが相談を持ってきていたような記憶があります。ミーティング後の親睦会の席では、村長を含めたみんなで話を聞いたりも…。そういう意味では、村長にいろいろ相談に乗ってもらえるというのも、この施設の大きなメリットだと思います。一人でやっていると相談できるところもあまりないですし、親身に教えてくれるので、安心感があるんです。

鈴木村長:でもそのミーティングでは、匿名ではあるけれど各入居者の売り上げの順位を発表するという、少しシビアなことも行っています(笑)。入居者は自分がいまどのあたりにいるのか分かるという、営業ミーティングのような側面も持っていますね。

入ってわかる、仕事のノウハウと広がるコミュニティ

——入居したときの目標はどんなものでしたか?

沼田:私は量産化です。自分1人ですべてを手作りするのは商売として限界があると感じていたので、デザビレにいる期間に、どうにかして刺繍を量産できる工場を探したいというのが、おもな目的だったんです。

菊池:自主販売とデザイン仕事を両立させること。つまり、販売することと仕事を受けることを両立させることを目標にしていました。そういう意味では、沼田さんのように最初から明確な目標があったというよりは、徐々に形になっていったという感じでしょうか。

——実際に入居して、大きく変化した点はありますか?

沼田:商品をたくさんつくれるようになりました。入居当時、最初に量産を引き受けてくれたインドの工場は村長の紹介でした。量産できるという道筋は2年目くらいまでにすでにできていましたね。量産化に成功した後の販売ルートの確保はおもに展示会で、バイヤーさんに商品を紹介して買い付けていただくという流れです。実はこのノウハウも、ここに入居してはじめて知ったんですよ。

菊池:僕は一緒に飲みに行く知り合いがすごく増えました(笑)。地域のつながりの中で、いろんな業種の方と知り合いになって話す機会が多くなりましたね。

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