「変化は絶対的に必要なこと」。GUCCIMAZEが表現する、アディダスのDNAの“MUTATION(突然変異)”

「変化は絶対的に必要なこと」。GUCCIMAZEが表現する、アディダスのDNAの“MUTATION(突然変異)”
スニーカーほど絶えず“進化”を続けてきたプロダクトはない……と言ってしまうと、いささか大げさかも知れないが、スニーカーのデザインのアップデートを語るときにテクノロジーの進歩の話は不可避だ。たとえば、30年前のスニーカーと現在のスニーカーを見比べてほしい、そこで使われている素材はまったくの別物のように変化をしている。ところが、過去のアーカイブを現代にアップデートして蘇らせることがまったく同時に起きているのが、スニーカーというプロダクトのおもしろいところだ。そして、スポーツとはまた別に音楽やファッションなどのカルチャーとの交わりで、積極的に“変化”を続けてきたのもスニーカーの歴史の側面のひとつだ。

そんななか好事家の心をざわつかせる一足がアディダス オリジナルスから登場した。それが「OZWEEGO(オズウィーゴ)」だ。「OZWEEGO」は、過去のアーカイブを生かしながら最新のテクロノジーを取り入れることで、歴史への尊敬の意を表し続けてきたアディダス オリジナルスのモノづくりとは一線を画す。むしろ、ブランドの持つ遺伝子の「突然変異」を開発背景に持つ一足だ。デザインのサンプリングソースとなったのは、1998年にアディダスよりリリースされた「Torsion Ozweego 3」。

今回、「OZWEEGO」の発売を記念して、GUCCIMAZE、PERIMETRON、山崎由紀子、Kentaro Okawaraという、4名の才気溢れるクリエイターを招聘したコラボレーションプロジェクト「MUTATION(突然変異)」が始動した。「OZWEEGO」のコンセプトでもある“デザインエレメント(遺伝子)の組み換え”をテーマとしたアートワークを共同制作していくというものだ。

同プロジェクトの第一弾として、GUCCIMAZEが手がけたアートワークを7月19日から原宿の「atmos BLUE OMOTESANDO」で公開されている。 Nicki Minajのアルバムのジャケット制作や、Post Maloneへのグラフィック提供、さらにはFLYING LOTUSのアルバムタイトルロゴを手がけ、国内外から注目を集めるGUCCIMAZEに、制作のプロセスや自身の活動における“変化”と“進化”を中心にお話をうかがった。

新生「OZWEEGO」の発売を機に始動した、クリエイターとのコラボレーションプロジェクト「MUTATION ( 突 然 変 異 ) 」

紙と鉛筆と手で設計。身体がマシンでPCはプラグイン

——今回の「MUTATION(突然変異)」というテーマを受けて、まずどのようにそれを解釈していきましたか?

「MUTATION」という言葉からは、時代や環境に適応していく、わりとポジティブな変化をイメージしました。そうした変化や進化、覚醒を続けていくことで、物事は洗練されていくと考えています。その変化のプロセスから、結果としてたどりついたものを視覚化できたらいいなと。

コラボレーションプロジェクト「MUTATION ( 突 然 変 異 ) 」のために制作されたGUCCIMAZEによるアートワーク

——制作する時はどのようなプロセスをとるんですか?

今回に限らず、絶対にまずは手で描いていきます。色味の明度や濃淡も、基本的には鉛筆で設計していく、パソコンにさわるのは最後の10パーセントですね。90パーセントは紙と鉛筆と手です。

——それは身体性のようなものを大事にしているからでしょうか?PCの役割は最終的なアウトプットの調整するためのものですか?

そうですね。言ってみれば、自分がマシンで、PCはプラグインみたいな感じです(笑)。

GUCCIMAZE(グッチメイズ)
1989年、神奈川県生まれ。武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科を卒業。独特なシェイプのタイポグラフィや、鮮やかかつダークさの漂う色彩のグラフィック制作を得意とし、USラッパーのNicki Minajのアルバムのジャケット制作やPost Malone、Fetty Wapのへのグラフィック提供、2019年にはFLYING LOTUSのアルバムタイトルロゴも手がける。

——ご自身にとって、制作するうえで変化や進化は必要なことですか?もしくは必然に近い?

こういう仕事柄、嫌でも変化はしていくものだし、そこを特に強く意識してはいません。ただ、ある時振り返ってみたら、「変化してきた」というなにかしらの気づきがあります。だから「変化しなきゃ」と意識しているわけではなく、シンプルに言うと絶対的に必要なことなのかと思います。

思えば、小さい頃からそうかも知れません。なにか興味の対象が変わるというよりは、そのレンジが広がっていく。これも好きでこれも好き、そうした繰り返しでいまの自分があります。

——興味の対象が広がっていくなかで、制作する時の思考やスキルなどで変化していることは?あるいは変わらないことは?

先ほどの手で描く話と一緒で、美大受験のデッサン、平面図形に向けて予備校で毎日やっていくなかで培っていたデッサン力は、10年経ったいまめっちゃ生きてると感じます。

個人的には美大では学んだことはあまりなかったんですけど、それよりも予備校時代の講師陣に学んだことのほうがよっぽどある。日々頭をよぎることばかりですね。

——ちなみに音楽関連のお仕事が多いと思いますが、制作中になにか音楽は聴いていますか?

確かに音楽関連の仕事は多いんですけど、制作中は無音が多いですね。無音が一番集中できる。制作が終わったら爆音で聴いています(笑)。

アディダスは自分を構成する要素のひとつ

——今回のプロジェクトに取り組むにあたり、改めてアディダスというブランドについてどう考えましたか?

もともと、中高生時代からスニーカーが好きだったので知識はあるほうだったけれど、それがあるからといってつくれるわけではないので、過去の記事や資料にあたってもう少し深掘りしていきました。基本的に知ることからはじめるのをポリシーとしているので。あと、事前に現物をいただいたので、日常で意識的に履くようにしましたね。なんでもないとき、たとえば信号待ちの時に「OZWEEGO」のフォルムをみて、イメージを膨らませていたりしました。

プロジェクト発足に合わせて発売された、「OZWEEGO」の新色

改めて、アディダスというブランドについて思い返してみると、ズックじゃないおしゃれスニーカーとして、小6のときかな?誕生日に買ってもらったのはスーパースターでした。だから、スニーカーカルチャーへの入り口はアディダスです。その点では、いまアディダスとの仕事をしているのは感慨深いです。カントリー、スタンスミス、コンコルド、アティチュード、フォーラム……学生の時は色違いでも集めていたし、アディダスは自分を構成する要素のひとつですね。

GUCCIMAZEのアートワークの公開を祝したブロックパーティーが、7月19日に『atmos BLUE OMOTESANDO』にて開催された

取材・文:瀬尾陽(JDN)

OZWEEGO
ブランド遺伝子の突然変異により誕生した「OZWEEGO」、8月8日には新たに10カラーが増殖する。ビビットなオレンジやネオングリーン、オールホワイト、ブラックなど色によって全く表情の異なる。合わせてウィメンズカラーの展開も開始される。
https://shop.adidas.jp/originals/ozweego/

GUCCIMAZE
http://yutakawaguchi.com/