音楽単体で聴くよりも良く聴こえるように見せたい
-ディスプレイ単体とスピーカー単体をケーブルで繋ぎ合わせる仕組みではなく、組み合わさっていることがほかにない独特な見た目ですよね。歌詞がスピーカーに被らないことを考慮せず渾然一体となる見せ方は、すごく新鮮だと思いました。左右のスピーカーの位置が敢えて上下にずれていますが、これは意味合いがあるんですか?
斉藤:歌詞と音がまったく分離しない見た目にするように、歌と言葉が塊となって同じ場所からポンと飛んでくるイメージにできればと思って、音と言葉の一体感をつくるためにこのポジションになりました。
-では逆に、歌のないインストの曲を再生する際に注意された点は?
斉藤:インストの曲や曲を再生していない時は、デジタルだけどアーシーなモーショングラフィックを表示することで、室内のインテリアとして気持ちのいい場所になればと思って。歌詞が出ていない時のデザインのコンセプトとしては、例えば雲が流れたり川が流れるなど動きのある有機的な統一感を、WOWの北畠遼さんが考えてくれました。
-開発期間、理想の形に近付ける際に苦労した点や、到達目標などはありましたか?
斉藤:どんな曲をかけても、音を聴くだけよりも良く聴こえるように見せることですね。結局、ヴィジュアル面の表現が曲と噛み合っていないときに、曲自体がよく聴こえないことになります。その曲がどんなものであれ、歌詞をオシャレに見せてあげることができれば、常に良い雰囲気に聴こえるかなと。
-カラオケボックスでは歌詞と映像が出ますよね。その映像が曲と合っていないと「あれ?」って拍子抜けになりますよね。
斉藤:そうなんですよね。カラオケで曲を聴くときは、普段よりかっこよくなく聴こえると思うんですよね(笑)。文字の出方も読ませることが目的なので、デザインはされていませんし。カラオケ自体はいいと思うんですけど。
言葉が気持ちにグサッと刺さる、その付加価値をデザイン
-プロダクトの販売展開についてお聞かせください。伊勢丹オンラインでの先行販売が11月14日からですが、いまのところ反響はいかがですか?(※取材時は10月末)
斉藤:反響はすごく良いですね。僕が聞いた話では、たまたま来た大学生の女の子が、リリックスピーカーで音楽を聴き始めたら急に泣き出したそうで。なにかピーンと心に刺さる言葉があったと思うんですよね。歌詞に着目して音楽を聴くとそういう事があると思うんです。音楽聴くことで、言葉が気持ちにグサッと刺さってカタルシスを得たい。その魅力が伝わっている方には良い反響をいただいています。
-「グッドデザイン・ベスト100」にも選出されましたが、受賞した感想はいかがですか?
斉藤:グッドデザイン賞のなかでは、こういう機械っぽいのは珍しいですよね。これはテクノロジーの部分に目が行きがちですが、プロダクト自体の味わいはプロダクトデザインや、文字のモーショングラフィックのデザインであり、付加価値の部分は結局デザインだと思っています。デザインされた状態で歌詞を見ることが面白い部分なので、グッドデザイン賞がそこの部分を見てくれたのはよかったなと思っています。
-歌詞をデザインした、というところが評価されたんですね。
斉藤:あとはグラフィカルで動的なポスターが家に置けるという要素もありますね。歌詞を文字組にしたポスターはよくありますが、それを動的にした部分ですね。
-今後はどのような展開を考えていますか?
斉藤:リリックスピーカーのなかで動いてるエンジン、歌詞を描写する技術を展開していきたいので試作品をつくっています。また、プロダクトで使われている歌詞とアニメーションの技術を、他社メーカーに提供していく予定です。今後は他社メーカーのスピーカーからも歌詞が出てくるかもしれません。歌詞を見ながら音楽を聴くことが一個のオルタナティブなスタンダードになればいいなと。それと具体的な予定はありませんが、これから海外のイベントに出していくとは思います。
-では、最後に斎藤さん自身の今後の活動などあればお願いします。
斉藤:JINTANA&EMERALDSのセカンドアルバムを制作中です。歌詞を楽しめるものをつくろうと思います。
※リリックスピーカーは下記店舗および三越・伊勢丹オンラインストアで販売中です
新宿伊勢丹、日本橋三越、銀座三越、ビックカメラ札幌店、ビックカメラ有楽町店、ビックカメラ池袋本店、ビックカメラなんば店、TSUTAYA TOKYO ROPPONGI、代官山蔦屋書店、二子玉川蔦屋家電、東急ハンズ名古屋店、三木楽器DJS PLUS
Lyric speaker
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取材・文:髙岡謙太郎 撮影:里永愛
■「デザインのチカラ」バックナンバー(イマジカデジタルスケープ内)
http://www.dsp.co.jp/know-how/design