デザインのチカラ

「デザインのチカラ」がつくる新しい価値、そのアイデアの源と思考プロセスを探る

“石”のチカラで日本から海外へ。多くの可能性を秘めたLIMEXが目指すもの―株式会社TBM 坂井宏成×黒木重樹(3)

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“石”のチカラで日本から海外へ。多くの可能性を秘めたLIMEXが目指すもの―株式会社TBM 坂井宏成×黒木重樹(3)

唯一無二の素材だからこそ広がるアイデア

2017年は商品ラインナップの拡充を狙いたいという。実際に、外部の企業との共同開発に向けた取り組みも進められている。

坂井:地球環境にも貢献できる新素材として、外部の企業と提携してLIMEXの紙代替製品・プラスチック代替製品の素材開発も進んでいます。すでに凸版印刷との共同開発・ライセンス契約に向けたプロジェクトがスタートしていますし、今年5月にはフラワーアレンジメントボックス「ショコラ・デュオ」のパッケージ素材にも採用され、一般向けに販売が始まりました。

「ショコラ・デュオ」パッケージ写真。水に強い素材のため、ぴったりの商品だ

「ショコラ・デュオ」パッケージ写真。水に強い素材のため、フラワーボックスにもぴったりの商品だ

黒木:また、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」でも、LIMEX製のポスターが採用されました。環境にやさしい素材であることに共感していただいたことと、耐水性・強度が優れていて屋外に張るのに適しているという評価から採用されました。

「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」ポスター

「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア」ポスター

また、最近の採用事例として、株式会社あきんどスシローが全国(463店舗)に展開する回転寿司「スシロー」に、LIMEX製品の三つ折りメニュー表を採用いただきましたが、飲み物をこぼして濡れてしまうことが多いレストランのメニューや、雨の日にビニール袋をかぶせなくても商品が濡れない包装紙など。プラスチック代替であれば、各種生活用品やキャンプ用品、床材などさまざまな用途での商品化が可能です。

全国463店舗に展開する、回転寿司「スシロー」のメニュー表にも採用された

全国463店舗に展開する、回転寿司「スシロー」のメニュー表にも採用された

黒木:個人的には、プラスチック代替で楽器をつくりたいですね。海の中でも演奏できる……みたいな(笑)。あとは、バイオリンやギターなど、本来なら高価な楽器を、子どもたち用にプラスチック代替で。気軽に使えるようになるので、需要はあるのではないかと思いますね。

200以上も問い合わせがくる、海外からもLIMEXが歓迎される理由

さまざまな可能性を秘めた素材なだけに、今後、ユニークな商品が続々と生まれるだろう。同時に、海外マーケットの拡大も視野に入れ、実際にいくつかのプロジェクトは動き出している。

坂井:ゆくゆくは、海外展開も本格的に始動する予定です。水や木の資源が不足しているといっても、日本国内では、世界規模で見たらまだまだ資源は豊富にあるんですよね。川も多いですし、周りは海に囲まれている。ですが、広大な砂漠が広がっている国をはじめ、水も木もないところもあるんです。でも、石灰石なら世界中、どこにでも豊富にあります。

そういった国にLIMEXの技術が提供できれば、自国の資源を使って、紙やプラスチックの代替品を生産することができるようになります。

株式会社TBM 坂井さん

坂井:現在、海外のたくさんの企業から興味をもっていただき、200以上のお問い合わせをいただいています。「サンプルを送ってほしい」「工場を立ててほしい」というような内容のものが多いのですが、どんどん広がっているという手応えはあります。

唯一の技術で、世界の常識を変えてゆく

紙とプラスチックの世界市場は、紙は年間約70兆円、プラスチックは年間100兆円を超えるほどのビッグマーケット。同社の新技術も世界から脚光を浴び、売上も好調。「世界のどの会社も真似できない技術」をつくり出せたのは、特許を取得したことも大きく影響している。

坂井:2014年に、国内特許を取得しましたが、現在はアメリカやヨーロッパ諸国を中心に、世界43カ国で特許を取得・申請中です。事実上、世界の主要国ではもう特許として認められていますから、海外の会社が「同じ技術を使って紙代替やプラスチック代替をつくりたい」と言っても、認められません。

黒木:LIMEXの技術を使った製品のアイデアはたくさんあります。現状の技術だけでは不具合があって商品化は難しいものも多いですが……。私も研究を始めた当初、「特許を取ったといっても、8割も石灰石なんて想像できない」と思っていました。そんな素材、見たことがなかったので、信じられなかったんですよね。でも、試作を重ねた結果、実際に自分で“石8割”のLIMEXをつくることができた。「えっ、本当にできるんだ!」と、びっくりしましたね(笑)。

株式会社TBM 黒木さん

だから、新しいアイデアもどんどん実現していけるはずです。お客様から「そんなの無理でしょ」と言われても、「いや、できます!」と、自信をもって答えられますね。LIMEXは、今までの常識を覆せる可能性を秘めた素材ですから。今後もこの素材で、お客様に便利に快適に使っていただけるような製品をつくっていかなければと思っています。

坂井:その積み重ねの結果として、LIMEXの技術をどんどん世界中に広げていければ。当面の目標は、LIMEXを使ったしっかりとした商品をつくることですね。まずはクライアントにスムーズに利用してもらえるようにしていきたいです。その後は、海外にも続々と工場を増やしていければうれしいですね。

石灰石

取材・文:佐藤理子(Playce) 撮影:田実雄大

■「デザインのチカラ」バックナンバー(イマジカデジタルスケープ内)
http://www.dsp.co.jp/know-how/design

■LIMEX
https://tb-m.com/