ファッションや音楽のように家具を軽やかな存在に-西尾健史(DAYS.)インタビュー(1)

ファッションや音楽のように家具を軽やかな存在に-西尾健史(DAYS.)インタビュー(1)
空間づくりを中心に手がける「DAYS.」は、西尾健史さんが2013年に立ち上げたデザイン事務所だ。これまでに「Tokyo Art Book Fair」やサカナクションのグッズ販売用什器、さまざまなポップアップショップ、お店のインテリアデザインなどを手がけている。西尾さんがつくる什器やインテリアは素材の使い方ひとつからもこだわりが伝わってきて、商品や展示物の魅力を倍増させてくれるようだ。今年6月に開催された国際見本市「インテリア ライフスタイル」ではじめて家具を発表し、「Young Designer Award」を受賞。今回あらためて西尾さんに、空間や家具をつくる上でのこだわりや出展した感想などをうかがった。
モノと人との関係性に興味がある

——DAYS.が手がけているものについて教えてください。

多岐にわたりますが、空間づくりを手がけることが多いです。プロダクトデザインからポップアップショップなどのデザイン、内装デザインやリノベーション、什器のデザイン、製作も行っています。少し前はまちに関わるコミュニティーデザインなども行っていました。

独立したばかりの頃は、住宅の設計や店舗のインテリアに携わることが多かったんですけど、引き渡しのあとも完成したものが自分の生活の一部になっていくような関係性をつくれるように、「DAYS.(デイズ)」と名前をつけました。プロダクトもそうですが、モノと人との関係性に興味があるんです。

1983年長崎県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、設計事務所を経て、「DAYS.」として独立。空間をベースに机と作業場を行き来しながら、家具やインテリアのデザイン、および自身の制作を行っている。

1983年長崎県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、設計事務所を経て、「DAYS.」として独立。空間をベースに机と作業場を行き来しながら、家具やインテリアのデザイン、および自身の制作を行っている。

——インテリアや什器をつくる時はストーリーを意識しますか?

そうですね。什器のマテリアルひとつやディテールからもクライアントの魅力やコンセプトが伝わると思っているので、ストーリーテリングをするために素材や色、形っていうのはすごく考えて提案するようにしています。既製の什器をつかうのではなく、わざわざ僕に依頼していただいたので、こちらも最大限希望に応えたいと思っています。

2015年にmethodで開催した「CRAZY KIOSK」の什器は全部紙でつくっていて、過度な強度につくり過ぎないこととか会期が終わったあとにすべて可燃ゴミで出せることを考えました。ドン・キホーテでよく見るような、梱包箱を積んで什器として使う圧縮陳列にならい、架空のお店の梱包箱をデザインして、それをただ積み上げているという状態のお店をつくりました。

CRAZY KIOSK/methodでバイヤーを務めるサトウユカさんが、過去に衝動買いした品々をすぐ買える店舗の形式で販売する期間限定ショップ。これまでに2回開催されており、写真は2015年に開催された第1回目のとき(Photo:kenta hasegawa)

CRAZY KIOSK/methodでバイヤーを務めるサトウユカさんが、過去に衝動買いした品々をすぐ買える店舗の形式で販売する期間限定ショップ。これまでに2回開催されており、写真は2015年に開催された第1回目のとき(Photo:kenta hasegawa)

CK2(CRAZY KIOSK II)/第2回目はテーマの“ジャンクな駄菓子屋さん”に合わせ、ケミカルな建材(プラダン)で什器を作成。マクドナルドっぽい色やコカ・コーラみたいな色の什器をつくったという(Photo:kenta hasegawa)

CK2(CRAZY KIOSK II)/第2回目はテーマの“ジャンクな駄菓子屋さん”に合わせ、ケミカルな建材(プラダン)で什器を作成。マクドナルドっぽい色やコカ・コーラみたいな色の什器をつくったという(Photo:kenta hasegawa)

Display net rack/サカナクション「SAKANAQUARIUM2017 "多分、風。"」ツアーでのグッズ用什器。魚の網からヒントを得た什器は蛇腹式になっているので折りたためる

Display net rack/サカナクション「SAKANAQUARIUM2017 “多分、風。”」ツアーでのグッズ用什器。魚の網からヒントを得た什器は蛇腹式になっているので折りたためる

アパレル雑貨ショップ「TOKYO PiXEL.」とPACMANのポップアップストア。PACMANのゲームパターンを立体に組み込んで、ゲーム画面の中にいるようなお店をつくった

アパレル雑貨ショップ「TOKYO PiXEL.」とPACMANのポップアップストア。PACMANのゲームパターンを立体に組み込んで、ゲーム画面の中にいるようなお店をつくった

ちょっとした気分で変えられたり、あえて癖のある家具のあり方

——デザインする際の考え方や、ふだんから意識していることはありますか?

これは職業病のようなものかもしれませんが、什器はついつい見てしまいますね(笑)。あと展開図や図形を見るのは好きですね。平面から立体への起き上がり方にはずっと興味があって、折り紙もそうですが、畳んだ時に立体になって、それが強度を持って別の形になるとおもしろいなと思います。

形の話でいうと、ちょっとした曲線が入ることで愛らしくなる形ってあるじゃないですか。量産型のものでも愛おしさを感じたり、愛着を持てるものはすごく好きで、量産だけどあえてノイズを出す方法はないのかなと考えていたりします。量産型のプロダクトにも癖があったら、ただ近くにあったものを手に取るのではなく、たとえばペットショップのように少し考えてから選ぶようになったりすると思うんです。そういう新しい価値は意識していきたいことのひとつです。自分でDIYでつくった家具だと愛着が湧くので特別に見えたりするじゃないですか。そういう感覚をモノを買うことから起こすようなデザインができないかな?って考えたりします。

——どういう家具のあり方が西尾さんにとって理想ですか?

最近意識しているのは、ファッションや音楽のように家具も変化させられないかなっていうことです。服や音楽は気分に合わせて変えられますが、家具って一般的には可変性がなくて動かしづらいイメージがある…。家具も買った時のままずっと同じ場所にあるよりは、ちょっとした気分で変えられたり、軽やかになることで引っ越しがネックじゃなくなったり、動き方や暮らしが軽くなるのではないかなって思っています。デザイン的に素晴らしい家具はたくさんあるので、新しい価値観を持った家具というものを考えてみたいですね。

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