暮らし方を含めて愛おしい家具をつくる-西尾健史(DAYS.)インタビュー(2)

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暮らし方を含めて愛おしい家具をつくる-西尾健史(DAYS.)インタビュー(2)
家具単体というより、暮らし方を含めてつくる

——「New action」をテーマにした、はじめての家具について教えてください。

「Accordion Rack /Shelf」と「Wal」という、2種類の可動式の家具をインテリアライフスタイルで発表しました。「Accordion Rack /Shelf」は、左右の柱となる蛇腹とトレイが組み合わさることで完成する家具です。蛇腹はトレイを置くことで自立するつくりで、トレイを置く位置に応じて高さを変えられます。組み合わせ次第でハンガーラックになったり、トレイをたくさん置けば棚として使えます。「New action」というテーマは、可動式というよりは、新しい動作を持った家具が“現れる”ことで空間の雰囲気や生活自体も変わるようなコレクションにできないかなと考えました。

Accordion Rack /Shelf

「Accordion Rack /Shelf」。トレイの数によって印象がかわる棚

トレイ単体でもスタッキングして棚として使えるものが、蛇腹の構造体を入れることで下駄箱になったりハンガーラックになったり、形や用途が変わったらおもしろいなと思いました。家具単体をつくったというよりは、暮らし方を含めてつくることを考えたという方が大きいかもしれないです。

僕自身、DIYやリノベーションのワークショップをたまにやっていて、そのワークショップでは、建築家と一緒に参加者が一緒にルールを決めて、自分の部屋をリノベーションしたり、スツールをつくったりします。今まで壊れたら捨てなければいけなかったものを少し直して使ったり、ちがう形に自分で変えられるっていうのを知ることで、完成したものを使っていた受け身の状態では培えない価値が生まれます。そういう自分が主体となって生活をおくれるきっかけを、プロダクトから感じてもらえたらいいなと思っています。

「トレイの色は、買ってくれた人が上から自由に色を塗ってもらってもいい」と、西尾さん。色で分けることで家族の誰のトレイと分けたり、仕事やプロジェクトごとに分けても使えそうだ

「トレイの色は、買ってくれた人が上から自由に色を塗ってもらってもいい」と、西尾さん。色で分けることで家族の誰のトレイと分けたり、仕事やプロジェクトごとに分けても使えそうだ

あえて家具っぽくないように見せる

——「インテリア ライフスタイル」での反響はどうでしたか?

驚きがまず最初にあって、そのあと笑顔になる方が多かったですね。特に「Wal」は一見すると物掛けのようなのですが、開けると鏡が出てくるのですごくびっくりされました。見た目もそうですが、それが何なのかわからないようにつくっているところはあって、家具っぽくないように見せるっていうのはあえて気をつけています。

今回インテリアライフスタイルで発表した「Wal」。開くと用途が生まれ、鏡のバージョンのものもある

今回インテリアライフスタイルで発表した「Wal」。開くと用途が生まれ、鏡のバージョンのものもある

壁に掛けても使えるし、持ち運びも可能。一見では何かわからない、ユニークなデザイン

壁に掛けても使えるし、持ち運びも可能。一見では何かわからない、ユニークなデザイン

うれしい声としては、自分の家に欲しいといってくれる方や、インテリアショップで販売したいっていうお話もいただいたのですが、まずは生産体制を整えなきゃなと思っています。あと、もし実際にお店に置いてもらえるとしたら、お客さんが来た時に形が変わることなどの説明が必要になってくるので、ストーリーをちゃんと伝えられる売り方にしなくてはと思っています。

西尾さんは今回、インテリア ライフスタイルの出展者の中から選ばれる「Young Designer Award」を受賞した。受賞者は、ドイツ・フランクフルトで2018年2月に開催の国際消費財見本市「アンビエンテ」に招待される。

普段考えてることを形にしたらどうリアクションが返ってくるか?ということが見たかったので、出展できただけでも大きかったです。でも実は「Young Designer Award」を狙っていたので、すごく嬉しかったですね。もともと海外でプロダクトを見せたいという思いもあり今回出展しようと決めたので、アンビエンテに出展できるのは光栄です。自分としては、仕事の軸を空間からプロダクトに少しシフトしたタイミングで賞をいただけて、何かすごく転換になるいい機会なんだろうなと感じました。

審査をしていただいた方から「日本のライフスタイルや事情に合っている」というコメントがあって、僕は全然意識してなかったんですが、日が経つにつれてその言葉を意識するようになりました。地方の住まいの仕事に関わっていると、東京はやっぱりスピードが早く、狭いところにみんなで住んでいるなって感じます。

1週間で終わる家具があってもいい

——今後つくりたいと思う家具のイメージはありますか?

家具にあまり使われていない素材をうまく使ってみたいなと思っています。一般的には木や鉄が多いので、たとえば紙や風船とか。あと、家具の“寿命”を振り切りたいなと思っています。1週間で終わる家具があってもいいと思うんですよね、1か月単位とか。その代わりに単価も調整して安価にしたり。強度があるにこしたことはないですが、ポップアップショップのように期間が限られてるからこそできるデザインもあると思っていて、そこは挑戦してみたいところです。

もし今回つくった「Accordion Rack /Shelf」が発展する可能性があるとすれば、トレイ自体をいろいろな地域やメーカーから出して、漆塗りのものやアルミ製のものがあったりとか、トレイだけをちがうものにすることで印象をガラッと変えられるんです。もしそれができたら家具の売り方としてもおもしろいし、メーカーは継続的にそのトレイだけを売ることができるし、単体で終わらないいい関係ができるのかなって思っていて…まあ全部僕の妄想なんですが(笑)。

西尾さんが座面を銅のテープで加工したイス。もとは銅本来のピンクっぽい色だったものが、経年変化で黄色く変わっていったそう

西尾さんが座面を銅のテープで加工したイス。もとは銅本来のピンクっぽい色だったものが、経年変化で黄色く変わっていったそう

僕自身は可愛いと思ったものを買い足していますね。特にイスは結構好きで、キャラクターがあったり経年変化で色が変わるものに興味があります。僕が思う「可愛い」っていうのは、“愛おしい”感じですかね。民芸品のお皿の釉薬がもりもりのっている感じとか歪んでいたりとか、人によってはネガティブかもしれない、ちょっと癖がある感じを愛おしく思える瞬間があって、そういうところかもしれないです。

西尾さんがつくった、照明を付けて使うスタンド。折りたたむとちがった表情を見せる

西尾さんがつくった、照明を付けて使うスタンド。折りたたむとちがった表情を見せる

——アンビエンテに向けての意気込みを聞かせてください。

「インテリア ライフスタイル」に出展した際に、自分で想像してなかったおもしろい意見もいただいたので、そういったこともなるべく組み込んで、より良いプロダクトとしてお披露目できればいいなと思っています。実際の意見から思ってもいないトレイの組み立て方が生まれたりしたので、さらにいろいろな人の感想を聞いてみたいですね。

取材・文:石田織座(JDN編集部) 撮影:寺島由里佳

DAYS.
http://on-days.com/

■次回開催の姉妹見本市概要
IFFT/インテリア ライフスタイル リビング
会期:2017年11月20日(月)~11月22日(水)
開催時間:10:00~18:00(最終日は17:00まで)
会場:東京ビッグサイト(東京国際展示場)西1・3・4ホール+アトリウム
主催:メサゴ・メッセフランクフルト株式会社、一般社団法人 日本家具産業振興会
入場料:2,000円(※招待状持参者およびWeb来場事前登録者は無料)
http://www.interior-lifestyle.com/