東京・原宿のL’illustre Galerie LE MONDEにて、田渕正敏の個展「アルバム」を2023年1月10日から15日まで開催します。

ブルーのモノトーンで描く今回の作品は10年以上続けているシリーズの最新作です。ポスターカラーという画材から着想を得たこの作品は、モチーフに合わせて描法（タッチ）を編み出していく初期の作品から、2020年の個展「Choice」ではタッチが先行する作品に変化していきました。タッチがフィルターとなり、ものを変換して見ることで「選択」することを作品として提示しました。これはイラストレーションの仕事においてはごく一般的な感覚かも知れません。イラストレーターはタッチで商売をしているという側面があります。他と差別化できるタッチ（画風やスタイルともいう）で描くことは誰しもが念頭においているのではないでしょうか。

今回の作品「アルバム」ではそのタッチを疑ってみたいと思い制作を始めました。画材や描法に興味を持った瞬間には、もっと別な作品を生み出せる可能性もあったはず。その地点に戻ることができたらいま何を描く？自身で決めたルールを修正したりとらえ直したりしながら、手に入れた技術を忘れていく作業を始めました。それによって良い悪いという二元的な判断から逃れて不確定な要素をどんどん許容していく。良さよりもおもしろさ、おもしろさのなかには不純物が多く混ざり込んでいて正体不明の味にはいつまでも飽きることがない。言葉になる以前の何となく描いてみたいという絵を大切にすること。ここにある絵はまだイラストレーションではない宙ぶらりんの状態、けれどもこれからイラストレーションとして認知されていく可能性を信じて制作を続けています。

「アルバム」はいわゆる写真アルバムをイメージしたタイトルです。できたものをただ並べて見るというような気楽さで、着地するまでのつかの間の時間を楽しんでいただきたいと思います。

《本文は公式サイト紹介文より抜粋／一部編集》