十和田市現代美術館の不思議な常設作品、《フライングマン・アンド・ハンター》。建物と建物の間で、空を見上げて初めて見つけられる2体の彫刻だ。空中浮遊しているのか、空へ向かって飛び立とうとする1人をもう1人がつかまえようとしているのか？ユーモラスな姿で私たちに「間」や「関係」を考えさせる。

この作品の作者・森北伸は、空間を読み込み、素材の特性を生かした素朴な味わいの絵画や彫刻作品を、絶妙なバランスで展示する。作品には人や家、木といったモチーフがよく見られ、環境と作品、建築と作品、人と作品、作品と作品といったさまざまな関係性が「間（ま）」に漂い、詩的なユーモアに包まれる。

本展は、2000年代より着実に制作・発表を重ねてきた森北にとって、初の美術館での個展となる。《フライングマン・アンド・ハンター》からつながる最新作を制作・展示、新たな物語が展開される。「遠くからでも見える人」というタイトルには、森北作品を読み解き、楽しみながらその魅力を体感する、重層的な意味が込められている。人も事物も情報となり、複雑な関係性のうちに、息苦しく、先が見えづらくなっている今の時代に、立ち止まり、自分と周囲を見つめ直すひとときを、十和田市現代美術館で体験していただきたい。