現代、日本中が都市化されている中で、失われつつある「その土地ごとの個性」。そこには、その土地に長く続く暮らしがある。D&DEPARTMENTは、その暮らしの大切さを確認するため、47都道府県を1県ずつ1冊に編集した観光ガイド「d design travel」を、年間3冊のペースで制作している。本展は、その20冊目となる「奈良号」の発刊を記念するものである。

約2か月間による現地取材で出会った奈良県の人々の暮らしは、日本最古といわれる都市・飛鳥をはじめ、とても長く愛され続けてきたものばかり。しかしそれは、その土地の人々にとっては当たり前のことで、ややもすると、その重要性が軽視されてしまうこともある。そこにはさまざまな創意と工夫があり、その土地を守り、そして、その土地で生きていく意味を教えてくれる“その土地ならではのデザイン”があった。

この会場には、実際にその土地で使われている奈良県ならではの道具や日用品などを特別に借り、展示する。展示品すべてに、その土地・人の拘りのデザインと、その形姿（なりかたち）になるまでの進化があり、知れば知るほど興味深いものばかりである。ここに展示する実物を通して、よりリアルに“奈良県ならではのデザイン”を体感していただければと思う。そして、ぜひ、この展覧会をきっかけに、奈良県、さらには、日本中を旅して「その土地ごとの個性」の大切さを感じていただきたい。