2017年現在、デジタルグラフィックは大きく「Vector」と「Raster」の2種類に分けられる。「Vector」とは、Adobe Illustratorに代表される線と面による座標表現。「Raster」とは、おもにAdobe Photoshopなどで描かれるドット集合描写のことで、それぞれ明確な違いがある。

デジタルツールは一様な印象を持たれがちだが、制作中の姿勢や視線の流れ、デバイスを駆使する両腕や指先の動きなど、できあがる作品は操作する者の身体性が色濃く反映されているのではないだろうか。この点は先人が培ってきたさまざまな平面表現も同様だが、「身体と画面」「身体とデジタル」の関係はどこか特殊で、新しい可能性を秘めているように感じる。それは、まるで透明な自身を俯瞰で操作するようだ。

本展では、グラフィックデザイナーの金田遼平とイラストレーターのたかくらかずきが、制作時間を制限することによって浮き出る身体性、時間とアイデアの相関をあらわにし、スポーツやセッションのような即興的作品の制作を試みる。おもに、金田は「Vector」、たかくらは「Raster」を用いた作品を制作している。その2人が下記ルールのもと、即興作品をつくり上げる。

【ルール】
・全部で12ラウンド／12テーマの作品を制作する
・テーマは「wikipedia」より選出する
・各テーマごとに4作品を制作する
①金田単体作品
②たかくら単体作品
③互いの作品を使って金田が再構成した作品
④互いの作品を使ってたかくらが再構成した作品
・制作時間は、1R/3分、2R/6分、3R/9分、4R/12分、5R/15分、6R/18分、7R/21分、8R/24分、9R/27分、10R/30分、11R/33分、12R/36分とする
・12ラウンドで48パターンの作品が生まれる

2種類の表現が浮き彫りになり、また融合することで新しい表現が見えてくるだろう。

【関連イベント】
●オープニングレセプション
日時：11月24日（金）　18:30〜20:00