西村：ランドスケープデザイナーって、建築家に比べると、扱っている素材が人工物もあり自然物もあって幅広い。その自然物の象徴は樹木ですよね。
長谷川：そうですね。
西村：植物一つ、植栽一つを選ぶときにも、いろいろなことを勘案しながら設計されているんだろうなと思っているんですが、ランドスケープデザイナーが、樹木を選ぶ際の判断基準というのは？
長谷川：樹木は動くことができないので、第一に考えるのは、その場所に適しているかどうか。低い湿地を好む樹木もいれば、高くて乾燥しているところを好む樹木もいる。ケヤキみたいに独立して伸び伸びと生えたい木もあるし、同じ種と林を作りたい木もいる。そういう樹木の性格や体力に沿っていかないと、みんな枯れてしまったりするんです。
西村：植物の個性や性格、体力を把握して、適したものを選ぶと。
長谷川：そこを外していると、その植生を継続するために、どこかで無理をしなきゃいけなくなるんです。ずっと栄養剤を与え続けるとか、虫が大量発生するとか。ただ、最近はどこも環境が変わってきていて、昔出なかった害虫が突然大量発生したりもするので、植物の専門家にアドバイスしてもらいながら進めます。
次は、土ですね。木を新しい土地に植えたとき、その環境があまりにも過酷だと、根がそれ以上出てこようとしないんです。だから、土の状態は調査しなければいけないし、木を植える場所にはある程度大きな穴を掘って土を入れ替える必要があるのですが、そうすると工事費が上がっていく。
西村：みんなあんまり意識しない部分ですね。
長谷川：そう。「そんなところにお金をかけるより、見えるところをもうちょっとキレイに」と言われて「でも、根っこの部分でちゃんとお金使わないと、後で成長しませんよ」なんて話は日常的です。植えて何年も経つのに木が小さいのを見ると、かなり土が悪いんだろうと思いますね。木が生きていくための条件を考えるべき、というのは基本として、その次に僕らが思うことは、居場所を作るうえで、樹木をとても大事なパートナーとして考えている、ということです。樹木は思わず行ってみたくなるような、心を動かされるシーンを作るのに欠かせません。