西村:そうか。じゃあ、お仕事なさるときに、例えばそれがある程度小さいものであっても、大規模なものであっても、その範囲のことだけを考えてデザインするというのは、おそらくないですよね。じゃあ、どれくらいの範囲のことを考えるんですか?
長谷川:そうですね。それってたぶん、直接的な話と間接的な話とがあるんです。分かりやすい例で言うと、私がデザインした軽井沢のハルニレテラスというのがあります。これは「湯川」という川が流れる河畔林にあるのですが、僕らはその状況に依存しているので、この川が将来汚くなると困ってしまいます。
一方で、敷地の横を国道146号線が通っていて、その場所に至るまでの雑多な風景の中では、みんながゆったりできるような場所にはなりにくい。そう考えると、街並みとのせめぎ合いが重要です。
でも、今まであった河畔林は、浅間山があって、伏流水から水が湧いて、湯川が流れて、その川沿いにハルニレという木が茂っていて、という状況で作られている。もし、間接的な環境が全く違う景色になっていくと、直接的なハルニレテラス自体の魅力も失われます。この敷地そのものは、大きなコンテクストの一部であるので、今度は、これがどうしたら長い間、健全でいられるのかということを考えるんですね。
西村:健全でいられますか? その大きな問題の中で。
長谷川:風景というのは際限がありません。一瞬だけを記憶しているわけではなくて、たどり着くまでの時間、そこで過ごす時間、ここからまた先へ、という一連の流れの中で風景を体験しています。ハルニレテラスの体験というのは軽井沢の体験であり、軽井沢の体験というのは、信州の体験であり、もっと広げていくと日本の体験でありみたいな、そこに違和感がなければ、たぶん自然につながっていくと思うんですよね。その場所を大事に考えて、自然なつながりを作れればと。
長谷川:軽井沢の中でも、突如として外国風のデザインがあったり、大きな中華料理屋の看板が出ていたりしますが、軽井沢に来ている人たちはそういう風景を期待してるわけじゃないでしょう。それに対して僕が一介のデザイナーとしたら何ができるかといえば、軽井沢の良さを引き出して、周りの川や林や風景をうまく一緒に作ることだと思うんです。人が集まってくる成功事例があれば、国道146号線沿いももうちょっと変わっていってくれないかな、という期待がありました。だから、ランドスケープで考えるべき範囲というのは、理想論的には、自分の意識のおよぶ限りの全体ですよね。
西村:その意識というのは、視野だけでなくて?
長谷川:そうです。イメージとして、ここが何か関係を持ってそうなエリア、その中で僕は今ここで何をするのがいいのかということまで考えます。
1965年、米国デュポン社の研究・開発によって生まれたデュポン™ コーリアン®は、それまで木や金属、タイル、天然石などに限られていた、建築・インテリア分野の新しい素材として世界中で大きな反響を集めました。それから約40年、今では全世界130カ国の人々に愛され、なくてはならない素材として高い信頼をいただいています。
http://www.dupont-corian.net/
“CORIAN”、「コーリアン」は、米国デュポン社の登録商標です。