西村:つまり、ランドスケープというのは、イメージし得る限りのもの、たとえば周りに住んでいる人たちが、ここをどういうふうに感じているかということを想像してみたり、この場所に辿り着くまでのアプローチを考えたり、それから、目には見えない自然、たとえば地下を流れている水だとか、ある季節になると香ってくる香りだとか、そういうものを自分で想像しながら全て扱っていく、そんな感じなんでしょうか。
長谷川:そういうのもありますし、何だろうな、自分の中で自然に考えているところを聞かれると、戸惑いますね。
西村:今、ハルニレテラスの話が軸になったから、自然環境としての魅力を損なわずにというところに意識があったかなと思うんですけれども、たとえば都心部のオフィス開発だと、ハルニレテラスとはまたちょっと違ってきますか。
長谷川:まさしくそうですね。たぶん僕の意識のおよぶ範囲というのは、もうちょっと概念的なことというか、たとえば軽井沢の例にしても、自然とか水とか当然考えていますけれども、一番考えたのは、きれいにお金が流れるということでした。不動産のお金ではなく、観光客も含めた、軽井沢で使われていく、みんなのお金です。みんながイメージして、みんなが愛しているような軽井沢であり続けるために回っているのが、きれいなお金。そういうお金の流れの一部としてのデザインでありたい。そのお金が、軽井沢という場所にインパクトを与えていくんです。
西村:きれいにお金が流れる。ちょっと予想外の話ですね(笑)。たとえばどういうことですか。
長谷川:皆さん軽井沢と聞くと、たとえばイングリッシュガーデンやバラ園みたいなものをイメージされるかもしれない。雑誌なんかで紹介されているから。でも、本来バラは軽井沢で育ちにくいんですよね。育つところもあるけど、逆に言うと、ものすごいお金を使って見せかけている。
西村:コントロールしているんですね。
長谷川:僕にとっては、本来その土地にないものにお金が動いているというのは、あまりきれいじゃないわけです。だから、本来の軽井沢でしか体験できないことに対して、まずはお金を払ってくれるに値するようなものをランドスケープで作らなきゃいけない。要するにバラに勝負をしなきゃいけないわけです。僕は、お施主さんに対しても、来てくれる人に対しても、バラのような借り物ではない、できる限り良い、軽井沢ならではのものを見せてあげたい。
西村:無理がないということですよね。自然のありようが。
長谷川:そうです。その場所、つまり軽井沢が持っている森の美しさや、その中で過ごす時間や居場所みたいなものをちゃんと提供したい。それに対してみんなが反応してくれて、お金をそこで落としてくれれば、そのお金がいい動き方をするんです。そして、そのお金で、軽井沢のお店や企業が、あるべき姿に対する投資に向かう。ハルニレテラスがうまくいったなら、また無理しないで、なるべく自然に寄り添った、あるがままの軽井沢の姿をつくろうかということになる。その「無理がないように」という流れが、僕のイメージの中では、すごくきれいなフローになっているんです。
西村:それが、無理をしていない、きれいな流れを作るランドスケープデザインの役割ということですね。
1965年、米国デュポン社の研究・開発によって生まれたデュポン™ コーリアン®は、それまで木や金属、タイル、天然石などに限られていた、建築・インテリア分野の新しい素材として世界中で大きな反響を集めました。それから約40年、今では全世界130カ国の人々に愛され、なくてはならない素材として高い信頼をいただいています。
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“CORIAN”、「コーリアン」は、米国デュポン社の登録商標です。