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デザインのチカラ : デザインの現場に取材し、ディレクションの考え方、製品デザイン等に迫る


INTERVIEW 10


INTERVIEW 10:日産自動車 グローバルデザイン本部 プロダクトデザイン部 プロダクトチーフデザイナー 井上眞人氏



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電気自動車の開発


本格的に量産する電気自動車として、日産自動車が他社に先んじて市場に投入した「リーフ」。インフラの整備、新しいライフスタイルの提案等、まさに未来の可能性に満ちたデザインだ。
プロジェクトチームを率いる井上氏は、2001年〜07年の8年間、各国で開催されるモーターショウで披露されるコンセプトカーのデザインに携わっていた人物。当時を振り返り、「電気自動車はショウカーとして、非常にチャレンジングなデザインができるものでした。」と井上氏は語る。




井上氏  「たとえば、ステアリングがあって、シャフト、ラックアンドピニオンギアがあって、タイヤが切れる、といった従来の自動車におけるメカニカルな関係とは全く異なるのが電気自動車です。
舵角センサーがあって、コードでモーターに繋がっていて、モーターがタイヤを切るという形であれば、ステアリングがどこにあっても構わない。そのフレキシブルな発展性の活かし方次第で、存在価値が決まります」

05年10月に東京モーターショウで「PIVO」を、07年9月フランクフルトモーターショウではEVスポーツカーの「ミクシム」、さらにその1ヶ月後に東京モーターショウでは「PIVO2」を発表。井上氏はこうした先行開発デザインを担当し、電気自動車の未来形を描いてきた。

そしてついに電気自動車を実車として開発することが決定すると、プロダクトチーフデザイナーに抜擢された。エクステリアとインテリア各5人ほどのデザイナーをまとめながら、1台の車をデザインして作り上げていくプロジェクトのチーフだ。



左:pivo、中:pivo2、右:ミクシム(MIXIM)

「自動車開発のプロセスをエクステリアの例でご紹介しますと、まず、こんな車が作りたいという方向性を共有した後、ひとり100枚以上のアイデアスケッチを描き、その中から立体にする案を選び、インダストリアルクレイと呼ばれる工業用粘土を使って、1/4のスケールモデルを造っていきます。ひとり1案くらい、5人いれば5台のモデルを造り、次のステージに移行する案を選びます。そこで選ばれた2、3案で実物サイズのモデルを制作し、デザインにもブラッシュアップを加えつつ、同時に設計条件を盛り込みながらクレイモデルを完成させます。このプロセスは電気自動車のデザインの場合も、同じです」

「デザインの選考は、基本的にはコンペティション形式で行われ、最終選考にはゴーン社長自らが必ず参加し、最終デザイン案が決定されます」

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100年に一度、自動車のターニングポイント


電気自動車のデザインにあたり、井上氏がまず大きく意識したのは、電気自動車が社会に与える価値。そしてその価値を普及させることができるか否かが、デザインに委ねられている責任の重さだった。



「最初に感じたのは、失敗させたら大変だ、という思いでした。というのは、電気自動車そのものが、日産自動車にとって重要なプロジェクトであると同時に、やや大袈裟かもしれませんが、人類全体にとっても非常に大切な試みだと考えていたからです。
さかのぼって俯瞰してみると、1900年代初頭に『T型フォード』が開発されたのは、電気かガソリンか石炭か、燃料さえ定まっていない時代でした。そういった状況で『T型フォード』は運転しやすく、価格も安い、そして誰もが運転できる車であったことから一気に時代の潮流をつくり出しました。20年間に約1500万台が生産された記録もあり、『T型フォード』が世界中に車を行き渡らせたことによって、ガソリンの時代が決定したと考えられます」

日本では、第二次世界大戦後の物資が少ない時代には、電気自動車の可能性も考えられたこともあったが、高度成長期で飛躍したのはガソリン車だった。しかし今、環境問題やエネルギー問題を機に、変革期を迎えようとしている。

「効率で考えると、電気自動車は同じエネルギー量で比較すると、ガソリン車より3倍くらい効率がよいと聞いています。しかしバッテリーの容量には限界があり、その面で長い技術革新の時間が必要だったのだと思います。
“100年に一度”とよく言われるのは、そういった意味での新電池技術がもたらす車の革命期のことだと考えます。
CO2問題も同様でしょう。日産自動車では『ゼロエミッション』つまり、走行中にその場で発生するCO2はゼロであると掲げています。車を生産する段階から、使い終わって最終的にスクラップする段階までを考えるLCA(ライフサイクルアセスメント)の視点で見ても、電気自動車はガソリン車よりも4割くらいのCO2削減が期待できるそうです。どこまでクリーンで、環境問題に対する社会からの要請に応えられるのか。電気自動車で回答を示す覚悟でデザインにも臨んでいきました」

既に量産されているガソリン車からの派生ではなく、電気自動車のメリットを生かして一からデザインした車とは…。井上氏とチームが最後に選んだ二つのキーワードは「EVアイコニック」そして「リアルカー」だった。

>>次回は5月末に追加予定です





プロフィール

日産自動車株式会社 グローバルデザイン本部 プロダクトデザイン部 プロダクトチーフデザイナー
井上 眞人

'79年千葉大学工業意匠科卒業。
'84年Art Ceter Collage of Design修了。
入社後、インテリアデザイナー、エクステリアデザイナーを経て、
'89年にシニアデザイナーに就任、初代ステージアや8代目ブルーバードなどの量産車のデザインを手掛ける。
'01年に先行デザイン部のチーフデザイナーに就任後は、PIVOシリーズなどコンセプトカーのデザイン開発を担当する。
また、'07にプロダクトチーフデザイナーに就任後は、量産型電気自動車の日産LEAFのデザイン開発を担当した。


リンク

日産| リーフ [ LEAF ] Webカタログ

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