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デザインのチカラ : デザインの現場に取材し、ディレクションの考え方、製品デザイン等に迫る


INTERVIEW 07


INTERVIEW 07:LG Electronics Japan Lab.株式会社 日本デザイン研究所 山本哲也氏/阿久津智行氏


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red dot design award受賞、日本発デザインによるデジタルフォトフレーム


LG Electronics日本デザイン研究所が2010年に発売した、デジタルフォトフレーム(以下、DPF)「F8012N-WN(ホワイト)」「F8012N-BN(ブラック)」は、急成長中のDPF市場にあって、そのシンプルさと機能性を両立させたデザインが話題となった。
そのデザインを担当したのが、山本哲也氏と阿久津智行氏だ。



デジタルフォトフレーム「F8012N-WN(ホワイト)」「F8012N-BN(ブラック)」


山本氏

山本氏 「まずこのDPFがグローバル展開の製品ということで、マーケット調査の結果やグローバルなデザイン傾向について視野にいれて検討したところ、主にギフトの用途が多いという方向性が設定されました。そこで最初に想定したのが、孫の写真を祖父母が見るためのプレゼント、というシーンです。
 つまり初心者や機械に不慣れな人でも使いやすい操作性が、デザインに求められた訳です。コードをつなぐだけで、説明書を熟読しなくても誰でも使える商品を目指しました。また、写真が主役なので他は極力シンプルにしたい、という考えもありました。
その両方を解決するために、本体の上部にボタンを配置というインターフェイスを採用しました。
 本体を薄く見せるため、液晶画面と電子基板を直角に配置するところが、最大の挑戦でした」

最終的には、本社デザインチームとのコンペで競い合った結果、採用が決定。その後の進行では、最初のデザインを実現するために、内部の機構提案も含めて提案していった。

山本氏 「機構や設計とのやり取りに時間をかけました。量産でトラブルの可能性に繋がると思われることは『できない』と突き返されるので、それを説得するのが大変でした。時には他社製品を分解して、可能だということを示したり‥‥‥設計部門は本国とのやりとりです。量産でどうやって組み立てるか、という細部まで提案しました。
 新しすぎると却下されることも多く、今回のように今まである基本的な設計を、今までにない新しい考え方でデザインすることがうまくいった要因かもしれません。
 韓国側で動いていたモデルはタッチ操作でしたが、日本で、お年寄りや不慣れな人が使うことを考えたとき、タッチ操作だけだと不便なのは明白でした。デザインではまず、ユーザーの視点に立ち戻ることも必要だと思っています」

そこで立ち戻ったのが、ユーザビリティという側面だった。リモコンがなくても操作できる、上部のボタンには若干の凹凸をつけて指あたり良く、判別しやすい工夫を施した。


「F8012N-WN(ホワイト)」の上部

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日本人らしい配慮



阿久津氏

阿久津氏 「どこに何のためのボタンを、どのくらいの大きさで配置するか。点滅間隔やイルミネーションが何色だったら分かりやすいのか。パワーのオン・オフ、状態の表示。ただ光るだけでなく、柔らかく点灯・消灯するようなプログラム。
 そういった細かいところを何度も検討しました。本体の調色も色板をメーカーから取り寄せ、表面の手触り感なども、本国の技術者とのやり取りを重ねました。他社製品や従来品にはグロス仕上げのDPFが多かったのですが、写真が主役ですから、正面を見たときには写真がまず目に飛び込むように、マットな質感を主張しました。
 またリモコン自体も、白い本体には白、黒い本体には黒、という合わせ方も最初はアイデアになかったものです。本国からの提案ではすべて英語表記だった点も、変更しました」

 インテリアの一部として家具にも馴染むような色調と表面仕上げが醸し出す佇まいは、デジタル製品特有の無機質な存在感を和らげる。日本人らしいきめ細やかな配慮が生かされた好例だろう。液晶パネルと電子基板を直角に配置したことで、横置き・縦置きのどちらにも対応が可能になった。ねじ穴を露出させない構造など、細部まで気を配ることにより、初期のモックアップをほぼそのまま製品化できた。
 その成果は「red dot design award」の「honorable mantion」受賞が物語っている。LGの海外デザインブランチオフィスでは初の受賞という快挙だ。
※「red dot design award」は、世界的に最も有名なデザイン賞の一つ。「honorable mantion」は全受賞作の中から、名誉に値するデザインが選ばれて与えられる賞。

 山本氏も阿久津氏も、通常はスマートフォン、家電のプロジェクトなど、8割ほどが海外コンペで進行するデザインに携わっている。日本で発売されることがなくてもグローバルでは市場に並んでいる商品を手がけることも多い。




阿久津氏 「今回、山本とデザインに関わったことで、技術面や内部機構にまで踏み込む仕事の進め方を体験することができました。自分のデザイン意図を実現するために、技術的にも幅広い知識を持つ必要性を感じます。
 私は複数の職場を経験し、前職ではイマジカデジタルスケープさんにもお世話になりました。こうした自分の過去の経験を活かしつつ、最新の素材や技術に対してもアンテナを張っていなければならないと改めて思っています」

山本氏 「このプロジェクトを経て、異なる専門性を持っているスタッフと仕事することの面白さを改めて感じました。ライフスタイル、あるいは哲学、心理学、人間工学といった視点を取り入れることによって、自分自身の幅も広がり、新しいデザインを提案できる可能性を感じています」

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