まず、自分の伝えたいことを見つけること−石井リナ×大石結花が語る、自分らしく発信する方法

まず、自分の伝えたいことを見つけること−石井リナ×大石結花が語る、自分らしく発信する方法
「何かつくってみたい、でも何からはじめていいかわからない……」、そんな風にモヤモヤしてたりしませんか?今回、お話をうかがったのは、自分が伝えたいことを表現するために、SNSというツールをクレバーに、そして楽しんで使う2人の女性クリエイターです。SNSコンサルタントとしてキャリアをはじめ、今年、女性に向けたエンパワーメントメディア『BLAST』を立ち上げたBLAST Inc. CEOの石井リナさんと、サンフランシスコ在住でPinterestでフルタイムで働く一方、「#週末クリエイター」としてYouTube上で自身のチャンネルを運営し、YouTuberとして活動する大石結花さん。“自ら考え、発信する”おふたりに、「自分らしく表現する方法」をお聞きしました。

——おふたりは自分の好きなことを表現されていて、そこに憧れている女性も多いと思うんです。どうやったら自分を表現できるのか?そこを伺いたいと思います。まずはいまに続くキャリアのスタートから教えてください。

石井リナさん(以下、石井):新卒で広告代理店の株式会社オプトに入社して、デジタルマーケティングの部署でWeb広告のコンサルタントをしていました。その会社でライターをはじめて、自分の名前を出して記事を書くようになったのがはじまりですね。次に転職したベンチャー会社でマーケター向けのWebメディア『COMPASS』を立ち上げて編集長になり、今年の1月に起業して、女性向けのエンパワーメントメディア『BLAST』を運営しています。

石井リナ BLAST Inc. CEO/SNSコンサルタント 平成2年生まれ。新卒でオプトへ入社し、Web広告のコンサルタントを経て、SNSコンサルタントとして企業のマーケティング支援に従事。初のInstagramマーケティング書籍となる『できる100の新法則Instagramマーケティング』を共同執筆するなど、デジタルプロモーションを中心にライターや、セミナー講師としても活動を広げている。現在は起業し、女性向けエンパワーメント動画メディア『BLAST』の立ち上げ、運営を行う

石井リナ
BLAST Inc. CEO/SNSコンサルタント 平成2年生まれ。新卒でオプトへ入社し、Web広告のコンサルタントを経て、SNSコンサルタントとして企業のマーケティング支援に従事。初のInstagramマーケティング書籍となる『できる100の新法則Instagramマーケティング』を共同執筆するなど、デジタルプロモーションを中心にライターや、セミナー講師としても活動を広げている。現在は起業し、女性向けエンパワーメント動画メディア『BLAST』の立ち上げ、運営を行う

大石結花さん(以下、大石):私は、2011年ごろ、大学生のときにはじめたブログがきっかけでした。海外のファッション系ブログに憧れて、顔出しして記事を書いて。それがきっかけで、『VOGUE GIRL』の公式ブロガーにしていただいて。いまはブログからYouTubeに移って、自分のチャンネル上で発信しています。

大石結花 カナダ生まれ、アメリカと日本で育った帰国子女。国際基督教大学卒業後、IT関連企業勤務を経て、Pinterest Japan の立ち上げをコミュニティマネージャーとしてサポートした後、現在はサンフランシスコ本社で特にクリエイターの海外グロースを担当。週末は YouTube、ポッドキャストなどの自身のクリエイター活動を行う、週末クリエイター

大石結花
カナダ生まれ、アメリカと日本で育った帰国子女。国際基督教大学卒業後、IT関連企業勤務を経て、Pinterest Japan の立ち上げをコミュニティマネージャーとしてサポートした後、現在はサンフランシスコ本社で特にクリエイターの海外グロースを担当。週末は YouTube、ポッドキャストなどの自身のクリエイター活動を行う、週末クリエイター

——大石さんはサンフランシスコ在住で、うらやましいくらいおしゃれな生活をしていらっしゃいます(笑)。「#週末クリエイター」という肩書きは、どうやって生まれたのでしょうか?

大石:私自身、ずっとフルタイムで働く会社員なんです。新卒で入社したIT企業でモバイルゲームのプロデューサーを経て、自分が心から好きと思えるプロダクトをつくりたいと思って、Pinterestの日本支社に転職しました。日本では1年ほどコミュニティやマーケティングの仕事をして、3年半くらい前に、サンフランシスコの本社に転勤しました。「#週末クリエイター」というのは、私のようなサラリーマンでも気軽に発信できるんだよということを伝えたくて。クリエイターなんて名乗ったもの勝ちなんですから。

——「名乗ったもの勝ち」という言葉には励まされる人も多そうですね。

大石:「YouTubeやってるんだ」と話すと、「私にはできない」という反応をされることが多いんですが、もっと気軽にやってみてほしい。私が最初に憧れた海外のファッションブロガーたちは、かわいいし、ファッションセンスもいいし、Webも自分でCSSをゴリゴリ書いちゃう、オールラウンドの人が多かったんです。全部に精通していなくても、いろいろなことがちょっとづつできるというスキルのつくり方はそこから学んだ気がします。

——このインタビューは、「何かつくってみたい」とモヤモヤしている人に読んでほしくて、そんな人たちがはじめるきっかけをつくりたいと思っているんです。

石井:1年前の私は、動画メディアの会社を自分でやっているとは思ってもいなかったですね。自分の能力としては、SNSマーケティングにおけるコンサルタントをしていたので、時代を読むことに関しては人より長けているんだろうなとは思っています。いまだったら、「IGTVでこういうコンテンツをつくろう」と考えたり。私自身、アドビのPremiere ProやAfter Effectsを触りはじめたのはつい最近です。いつでも何かをはじめられるなというのは、身をもって体感していますね。

——大石さんがYouTubeをはじめたのは、いつからですか?

大石:2年くらい前です。それまではちょっとずつIllustratorをかじったり、Photoshopをやったりしていたけど、何かがつくれるほどのレベルにはなっていなかった。それが、動画をはじめたら、ちょっとだけかじってきたものが全部役に立つみたいな感じになって、それがすごく楽しくてハマっちゃいました。

——普段使われているツールは何ですか?

大石:動画の編集は、ほぼPremiere Proだけです。サムネイルをPhotoshopでつくったりしますけど。ほかには、Character Animatorというアドビの2Dキャラクターソフトで自分の顔やキャラクターをつくってアニメーションしたり。とりあえずやってみたい、と思ったらいろいろ調べて、独学でつくってきました。6月に「VidCon」というYouTuberの祭典で発表された、アドビの新しい動画アプリ「Project Rush」のベータ版を先行して使わせてもらってるんですが、Premiere Proのメインの機能はほとんど使えるし、映像は4レイヤー、サウンドも3レイヤーできるので、YouTubeのレベルだったら、全然「Project Rush」でいけると思いました。正式リリースが楽しみですね。

——石井さんは、アドビ製品を触りはじめたのはいつくらいなんですか?

石井:会社をはじめてからなので、今年の1月とか2月ですね。私、一番最初に触ったのが、After Effectsなんです。だからPhotoshopよりもAfter Effectsのほうが触りやすくて。イベントのバナーとか静止画もAfter Effectsでつくっちゃうんですよ。それが一番私的に楽で。

——やりたいことがあれば、ツールは何でもいいのかもしれないですね。ところで発信するにもまずネタがないと、と言うところだと思うのですが、おふたりはどういったところからインスピレーションを得ているのでしょうか?

大石:私がすごく影響を受けたYouTuberはケイシー・ナイスタット(Casey Neistat、NYを拠点にするYouTuber)です。彼は1,000万フォロワーという人気のYouTuberで、さらにすごいのは、自分のオフィスにクリエイター・インキュベーションをつくろうとしていること。アップカミングなYouTuberが数か月滞在して、最新の機材を紹介したり、ケイシーのチャンネルで自分の活動をPRしたりして、若いクリエイターを育てるプログラムを始めようとしているんです。カリスマですね。

石井:そういう構図は日本でもあるよね。トップYouTuberが経営に入っているプロダクションとか。ちょっと近いかもしれない。

大石:確かにね。「育てていきたい」みたいな感じなのかもね。ほかには、ピーター・マッキノン(Peter McKinnon、トロントを拠点にするYouTuber)にも影響を受けています。私はフィルムメーカー系の映画のような動画をつくりたくって。彼は元々プロで動画をやっていて、ビデオグラファーとしてやってきたノウハウを動画で教えてくれるんです。それを自分の動画でも参考にしています。

——石井さんはどういうところからインスピレーションを得ていますか?

石井:『BLAST』のインスピレーションとしては、『Refinery29』や『Them』 、『COMPLEX』など、海外のメディアが多いです。IGTVやコンテンツのつくり方を見ています。個人的に最近やりたいと思ったのは、Instagramのコラージュアーティストに影響されて、自分でもコラージュをつくりたいなと。空いてる時間を見つけて、Photoshopで切り抜きをして、After Effectsで少し動きをつけて……。どうせなら静止画じゃなくて動いたほうがいいなとか思うので、できることを組み合わせて、試行錯誤してます。

大石:私のエンドスクリーンもそういうテイストでやっていますね。私の写真をちょっと動かして、コマ撮りみたいにしています。

石井:去年くらいからInstagram Storiesでは、指を置くなどして「タップして遊ばせる」のもトレンドのひとつになっています。こういう、人が遊べて、かわいいのをつくれたらおもしろいなと思っていて、『BLAST』でもやってみたいですね。そうやって、クリエイターのアイデアを参考にしたりしています。

大石結花×石井リナ インタビューの様子

——『BLAST』はこれからどういうメディアにしていきたいと思っていますか?

石井:『BLAST』は女性向けのエンパワーメントメディアで、分散型なので、InstagramとYouTubeだけでやっているんですが、YouTubeは一旦とめて、Instagramだけにフォーカスしようかなと思っています。日本の女性を応援したり、解放することを目的にやっているメディアなので、そういう思想に共感してくれる人が見てくれるメディアにしたいんですよね。エンパワーメントやフェミニズムみたいな話だけじゃなく、ファッションとか、テクノロジーとか、ニュースとか、社会問題とか、幅広く取り上げています。でも、日本のYouTubeのマーケットだとまだコミュニケーションが取りたい相手が少ないように感じています。

——メディアごとの特性があるんですね。リナさんの好奇心の強さというのがスゴいなと思っていて。世界にずっと興味を持ち続けているというか。

石井:SNSマーケティングをしているので、海外のブランドや企業、メディア、トップインフルエンサーを500アカウントくらいフォローしているInstagramのアカウントがあって、そこをパトロールしているんです。そうすると、海外ではスターバックスが社会問題を考えるイベントをやっているし、みんなレインボーパレードやウィメンズ・マーチなどのイベントにも参加している。当たり前に行われていることの意識の違いを感じました。それに、日本って、ジェンダーギャップ指数(男女格差の度合いを示す指数)が先進国で最低レベルなんです。日本の女の子が、制約されていることに気付いていない。それで、もっと知る機会を増やしたいと思って立ち上げたのが『BLAST』なんです。

——大石さんのほうは、完全に個人活動ですが、YouTubeで出すネタはどう思いついて、「このネタで行こう」ということをどう決めているんですか?

大石:基本的に、どこか旅行などに行った時に、vlog(ブイログ)という、ブログのビデオバージョンをつくっています。あとは、自分が学んだことを共有したい。つくるためにすごく調べながらやっているので、例えば、Adobe製品のことでもいいですし、全然関係ないことでも、自分なりに整理して、まとめて、紹介する動画をつくったりします。今後は、もうちょっと企画っぽい感じで、「みんなクリエイターになれるよ」ということを伝えたいので、ほかのクリエイターとコラボすることを考えています。

表現している人と、していない人の違い……?

大石結花×石井リナ インタビューの様子 場所:チームラボ プラネッツ TOKYO DMM.com

——実際に表現をしている人と、まだしていない人の差というのはすごく小さなもので、表現するのに二の足を踏んでいる人は、「恥ずかしい」とか、「まだまだ勉強不足だから」と思っているんじゃないかと。そういう方に、何かアドバイスがありましたら。

大石:だから、「私が全力で失敗しにいく」と思っているんです。だからみんなもやってみよう、失敗してもいいじゃん!って。

石井:私の場合は、ほかに人がいなかったから、自分でやるしかなくて。やるようになったら、いろいろできはじめた、みたいな感じです。周りのできる人たちに相談しながら、「すごい!」っていちいち感動しながらつくっています。

大石:私が最初につくった動画も、iPhoneで撮って、iPhoneで適当に編集したものだったので、いま見ると音声も画質もひどいんです(笑)。最近はちょっとマシになって、ずっと見てくれていた人に「上達したね」と言っていただいたり。本当に目に見える形で良くなっていくし、できることも増えていくのが、ゲーム的におもしろいというか、スキルがアンロックされていくみたいな感じで楽しいです。大人になると、こんなに成長を感じることってあまりないんですよね。

——成長するところを含めて見てもらう、みたいな気持ちって、すごくいいですよね。

大石:YouTubeでもブログでも、私はすごく活躍している人を見て、「私もこうなりたい!」ってはじめたんです。でもその「すごい人」の公開している作品をさかのぼって見てみると、最初の方は下手だったりして。そうすると、自分でつくって公開することも全然怖くなくなります。いきなりできる人なんていないですから。

——これから何かをつくりたいと思っている人にメッセージを。

石井:結花ちゃんが言うように、高いクオリティを出そうと思わなくていいから、とりあえずやってみるのっていうのが大事ですよね。

大石:アプリ開発でも全く同じなんですが、とりあえず「芯」だけをつくってみるのはありですね。そこから肉付けしていけばいい。何を伝えたいのかという軸をまず見つけて、それが見つかれば、あとはもう吸収して学んでいけば、なんでもできるようになるから。自分がすごく強く信じていることとか、みんなに言いたいことがあれば、全部後から学べる気がします。それがないと、人生つまらないですよね。

石井:私も、やらなきゃいけないことや、伝えなきゃいけないことが最初にあって、『BLAST』を立ち上げました。私が言いたいことに共感してくれる人がいる場所がInstagram Storiesであり、IGTVだと思ったので、プラットフォームとしてそこを選んでいます。あと、私にDMを送ってくれたり、会いに来てくれる人は、「私も発信したい!」と言っている人が多いですね。

——おふたりのように、伝えたいことを見つければ、自然に発信もできていくでしょうね。

大石:これをみんなに見てほしいとか、伝えたいとか、こういう世の中になってほしい、という自分の言いたいことを見つけられればいいですよね。

取材・文:齋藤あきこ 撮影:yuki nobuhara 編集:瀬尾陽(JDN)
タイトルデザイン:有馬トモユキ(TATSDESIGN)
制作協力:アドビ

【撮影場所】チームラボ プラネッツ TOKYO DMM.com
6時間以上待ちのまま47日間で幕を閉じた「DMM.プラネッツ Art by teamLab」を進化させたチームラボの超巨大没入空間「チームラボ プラネッツ TOKYO DMM.com」が、東京・豊洲に、2018年7月7日から2020年秋まで2年間限定でオープン。総敷地面積10,000平米の空間内に、超巨大な没入型作品群が広がる。

所在地:東京都江東区豊洲6-1-16 teamLab Planets TOKYO
会期:2018年7月7日~2020年秋
時間:平日 10:00~25:00 土日祝 9:00~25:00(※最終入場24:00)
主催:株式会社PLANETS
https://planets.teamlab.art/jp/

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