編集部の「そういえば、」―デザイン目線で見る2つの映画

編集部の「そういえば、」―デザイン目線で見る2つの映画

封筒のような映画パンフレット

そういえば、最近のJDN社内ではもっぱら映画『国宝』を観た社員による感想戦が繰り広げられているのですが、私がひそかに推したいのは、7月25日より上映されているパヤル・カパーリヤー監督のインド映画『私たちが光と想うすべて』です。

『私たちが光と想うすべて』 予告編

映画の舞台は、インドのなかでも人口密度の高い大都市・ムンバイ。ここで看護師として暮らすプラバとアヌはルームメイトで、それぞれに複雑な思いを抱えながら仕事・恋愛・結婚と向き合い、ときに衝突もします。現在もインド社会に根強く残るカースト制度や性差別に翻弄される彼女たちの日常と、海辺の村への小旅行を描き出す本作。インド映画としてはじめて第77回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞するなど、世界でも注目を集めています。

映画自体の魅力もさることながら、今回特におすすめしたいのは劇場で販売されていた映画パンフレット。

「私たちが光と想うすべて」パンフレット

「私たちが光と想うすべて」パンフレット

売店に立ち寄った際、一瞬パンフレットだと分からなかったそれは、インドらしい文様が鮮やかなブルーで印刷された封筒風のデザイン。封をするのは金色のシールで、開けると裏紙の眩しいイエローが目に入ります(増刷分はピンクカラー)。映画のなかで表現されていた幻想的な光や世界観がデザインに落とし込まれていて、手触りや視覚的にも作品の魅力を感じられるパンフレットでした。

「私たちが光と想うすべて」パンフレット

デザインを手がけたのは、アートディレクター/デザイナーの石井勇一さん。石井さんは本作のメインビジュアルも担当されているほか、さまざまな映画やドラマのビジュアルデザインをおこなっています。サブスクで映画を観る機会が増えたという方も多いかと思いますが、ぜひ劇場で映画を観て、パンフレットを手に取ってみてはいかがでしょうか?

『私たちが光と想うすべて』公式サイト
https://watahika.com/

(萩原あとり)

シーンを彩る、配色デザインと模様

そういえば、私も今夏見た映画つながりで8月22日から全国公開中の『アズワン/AS ONE』をご紹介します。本作は、スクウェア・エニックスより発売された原作ゲーム「星と翼のパラドクス」の世界観をベースにしながらも、完全オリジナルのSFストーリーとして再構築された長編アニメーションです。現代の高校生ヨウと、宇宙世界の整備士ラコが異なる次元で出会い、2人でひとつ(=アズワン)の運命を紡ぐ物語。

『アズワン/AS ONE』本予告 8.22 FRI 静野孔文×貞本義行×白岩瑠姫(JO1)

東京・渋谷でミュージシャンを目指しながら進路や人間関係に悩んでいる、高校生のヨウ。ある日、「助けて!」という声が脳内に響き、光に包まれます。一方、地球と遠い宇宙の「巡星(めぐりぼし)」では、戦争状態にある国同士が休戦協定に臨む最中、巨大軌道デブリの落下が発生し、ロボット整備士ラコが緊急出動。しかし、事故で意識を失ってしまいます。ラコの意識の世界で2人は出会い、次元を超えた2人の運命が動き出す――。

監督は、劇場版『名探偵コナン』シリーズなどを手がけてきた静野孔文さん、キャラクターデザインは、『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られる貞本義行さん、メカニックデザインは、機動戦士ガンダムシリーズなどで知られる形部一平さんという錚々たるメンバーです。キャストを務めたのは、JO1の白岩瑠姫さん、声優の白石晴香さん、武内駿輔さん、日笠陽子さん、SUPER EIGHTの丸山隆平さんら。

映画を見る際、作品内の空間やインテリアなどが気になってしまうのですが、本作で特に印象に残ったのは配色デザインと、画面全体に表情としてあらわれている独特の模様です。

SFとファンタジーが交錯する世界観が、鮮やかなサイバーパンク調の配色で描き出されている本作。画面全体にわたり、高彩度の色がダイアログや背景、演出エフェクトに使われ、視覚的に強い印象を残す映像に。また、幻想的な宇宙世界と現実的な地球世界との対比を、色彩のコントラストで視覚的に表現していると感じました。

独特の模様についてはステンドグラスや結晶のような形で、ここは勝手な想像ですが作中でキーアイテムとなる「星血(ホシノチ)」の結晶の形からインスパイアされたのかな?と思いました。どのシーンでもすぐに作品名がわかる配色デザインと模様が魅力的に映りました。そういった観点から作品を見るのも面白いと思うので、気になる結末と一緒にぜひ劇場でご覧ください!

(石田織座)