編集部の「そういえば、」―東京を舞台に、アジアの写真文化を発展させる写真祭
そういえば、10月27日まで東京の八重洲、日本橋、京橋エリアで開催されていた写真祭「T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO 2024」に行ってきました。
アーティストに国際的な作品発表と制作の場を提供する同写真祭。6回目となる今回は、アジアの写真文化を発展させるプラットフォーム「T3(ティースリー)」として企画を拡大し、100名以上の作家が参加する写真プロジェクトが実施されました。
開催エリアには屋内・屋外会場が点在し、国際的に活躍するキュレーターによるトークイベントやブックフェア、プロジェクションイベントなどが展開。そして、海外における「日本写真」の評価や研究に長く大きな影響を与えたと言われる1974年の写真展「New Japanese Photography」から50年を経たいま、改めて現代の「写真」に光を当てる展覧会が企画されました。
本コラムでは、数あるプロジェクトのなかから展示「Tokyo Dialogue 2024」と「New Japanese Photography in New Light」をピックアップしてご紹介します。
「Tokyo Dialogue 2024」は、戸田建設株式会社と同写真祭が共催する、3年間にわたるプロジェクト。写真家と書き手がペアとなって、写真と言葉による「対話」をおこない、日々変化する都市の姿を描き出すというものです。作品は、オープン間際のTODA BUILDINGを囲う工事用フェンスに展示されていました。
車や人通りの多い京橋の喧騒を背後に、少し歩みを止めて写真と言葉に向き合うことになる同展。写真に映し出された過去や人・ものの記憶が、そばに置かれた言葉に導かれ、形を変え続ける都市の「現在」と重なっていくような……なんとも不思議な感覚に陥ります。
また、「New Japanese Photography in New Light」では、1974年の展示「New Japanese Photography」に強い衝撃を受けたというサンフランシスコ近代美術館名誉キュレーターのサンドラ・フィリップス氏が、同展で紹介された15人の写真家の作品から数点をセレクト。さらに、作品を紙ではなく絨毯や陶板で制作するなど、写真の新たな表現に挑戦しています。なかでも絨毯で制作された土門拳の作品は、思わず顔を近づけてみたくなるようなテクスチャーで目を引きました。
ほかの会場でも、これまでなかったような写真表現や見逃されてきたイメージに光を当てる展示があり、まさに写真の可能性を感じさせる写真祭でした。
(萩原あとり)