第22回:紙のクリスマスツリー

第22回:紙のクリスマスツリー

今回は、街中にさまざまなクリスマスツリーがあふれるこの季節にぴったりのアイテム、紙でできたクリスマスツリーに注目しました。

2018年1月にオープンしたホテル「ハイアット セントリック 銀座 東京」に設置されたのがこちらのクリスマスツリー。かつては出版や印刷業が栄えた銀座で、元新聞社だったこの場所の歴史を残すべく、ホテル内には活字をモチーフにしたアートワークが設置されており、今回、活字と紙を使ったクリスマスツリーをつくることになったそうです。

ライブラリーラウンジに設置された、紙のクリスマスツリー

ライブラリーラウンジに設置された、紙のクリスマスツリー

銀座で100年以上、活版印刷業を営んでいる中村活字の活字を使って、銀座にふさわしいクリスマスツリーをつくるべく、紙と印刷のプロジェクトを行っているユニットPaper Parade Printingがツリーの制作を担当。出版や印刷をイメージした「本」をモチーフにして、紙でできた華やかなツリーを制作しました。

では、実際に使われている紙を見てみましょう。赤い紙には紙の商社、竹尾が取り扱うファインペーパー「NTラシャ」に金の箔押。一方、白い紙には、上質紙の「しらおい」に活版印刷が施されています。

NTラシャの濃い赤に金箔押し

NTラシャの濃い赤に金箔押し

上質紙「しらおい」に活版印刷

上質紙「しらおい」に活版印刷

本のページの間には「マーメイド」「グムンド マットゴールド」などの紙をレーザーカットしたしおりが挟み込まれている。しおりは持ち帰り可

本のページの間には「マーメイド」「グムンド マットゴールド」などの紙をレーザーカットしたしおりが挟み込まれている。しおりは持ち帰り可

紅白それぞれの紙を二つ折りにし、360度クルっと回転してから中心部を糊で接着しています。ちなみに、この接着技術にはPaper Parade Printingが以前制作したカレンダー(コラム第11回「紙活字の日めくりカレンダー」の記事参照)の製本技術が活かされているとのこと。

ペラの紙を束ねるのではなく、二つ折りして袋状にしたことで、ツリー状に積み重ねても重さに耐えられる強度が出たのだとか。また、本の小口側に押された金箔がキラキラと光り、華やかな雰囲気を演出しています。

この大きなツリーが設置されているのはホテル4階のライブラリーラウンジ。ツリー自体が本のオブジェのように見えて、ライブラリーという場所にも調和しています。

また、他の階にも同じ紙を用いたクリスマスリースなどが設置されていて、ホテル全体のクリスマスムードを高めていました。

他の階にはツリー以外のオブジェも

他の階にはツリー以外のオブジェも

クリスマスリースをモチーフにしたオブジェ

クリスマスリースをモチーフにしたオブジェ

中村活字で活版印刷したオリジナルのカード。希望者はホテルのスタッフへお問い合わせください。なくなり次第、配布終了とのこと

中村活字で活版印刷したオリジナルのカード。希望者はホテルのスタッフへお問い合わせください。なくなり次第、配布終了とのこと

(以上、すべての写真提供:Paper Parade Printing)

ハイアット セントリック 銀座 東京
https://www.hyatt.com/ja-JP/hotel/japan/hyatt-centric-ginza-tokyo/tyoct/

Paper Parade Printing
http://paperparade.tokyo/

中村活字
https://nakamura-katsuji.com/

竹尾
http://www.takeo.co.jp/

宮後優子(グラフィック社)

宮後優子(編集者/Book&Designディレクター)

宮後優子(みやご・ゆうこ)
編集者/Book&Designディレクター。東京藝術大学で美学美術史を学んだ後、出版社の編集者に。デザイン専門誌『デザインの現場』編集長を経て、文字デザイン専門誌『Typography』を創刊。デザイン書編集者として20年近く活動。デザイン関係の雑誌・書籍・ウェブサイトの編集のほか、イベントやワークショップなどの企画・運営を行う。
http://typography-mag.jp
http://book-design.jp