クリエイターの「わ」第8回:ナタリー・カンタクシーノ

クリエイターの「わ」第8回:ナタリー・カンタクシーノ

クリエイターからクリエイターへと、インタビューのバトンをつないでいく新連載「クリエイターの『わ』」。編集部がお話をうかがったクリエイターに次のインタビューイを紹介してもらうことで、クリエイター同士のつながりや、ひとつのクリエイションが別のクリエイションへと連鎖していくこと=「わ」の結びつきを辿っていくインタビューシリーズです。

前回の新城大地郎さんからバトンを受け、今回お話をうかがったのは、スウェーデン・ストックホルム出身の写真家・モデル・ライターのナタリー・カンタクシーノさんです。2015年から東京を拠点に、フリーランスで写真や文章にまつわる仕事をしながら、自主制作プロジェクトを進めているナタリーさんに、現在進めている作品づくりや影響を受けたクリエイターなどについてお聞きしました。

作品紹介

基本的に写真をメインに活動しています。写真のモチーフはいろいろですが、スウェーデンにいた時にストリートフォトグラフィーをしていたこともあり、人物をモチーフにすることが多いですね。最初はもちろん趣味でしたが、16歳くらいから祖父が使っていたフィルムカメラで写真を撮り始めました。知り合いに料理関係の方が多いので、最近は料理にまつわる写真や、自然についての写真を撮ることも多いです。

いま進めているのは、メンタルヘルスをテーマにした写真集をつくるプロジェクトです。コロナ禍に入ったくらいの時期にスタートしたものですが、企画に賛同してくださった方に自身のメンタルヘルスに関する話を聞かせてもらい、その人のありのままの写真を撮影しています。2か月に1回くらいのゆっくりしたペースで、信頼関係をつくりながらプロジェクトを進めています。

海外ではカウンセリングに行くことが比較的カジュアルなことだったりしますが、日本ではみんな辛くなるまですごく我慢していて、カウンセリングに行くことが大ごとにされがちだなと感じます。日本では和を守る文化が強かったり、空気を大事にするところがあるから基本的にみんな明るい話しかしなくて、そういう話がタブーになっている状況があるのかなと。

でもカウンセリングは身体の健康と同じで、ちょっと心の調子が悪いときに人に話を聞いてもらう感覚だと思うんです。自分のことについてみんなもっと話したいっていうことはあるんじゃないかなと思うし、時には重い話をすることも大事だと考えています。他の人の立場にみんながなることは難しいですが、少しでもそういったことを考えてもらえるようなプロジェクトになればと進めています。

子どもの頃から知らない人に相談されることがあって、そういう話しやすい空気みたいなものは持っている方なのかなと思います。それがいまプロジェクトに掲げているメンタルヘルスにもつながりがあるというか。自分の話をするのはあまり好きじゃないんですが、人の話を聞くのは好きですね。

お仕事クエスチョン

Q.なくてはならない仕事道具はありますか?

やっぱりカメラですかね。10年以上前から同じカメラで、ニコンの35mmのフィルムカメラを使っています。使い込みすぎてけっこうボロボロになってきていますが、メンテナンスして使い続けています。

写真を撮るときは、ある程度考えを決めてから撮影するというよりは、ゾーンに入るような感覚でシャッターを切ることが多いです。もともとストリートフォトグラフィーをやっていたこともあったので、身体が反応して撮るというか。でも完璧主義なところもあるので、仕事の際はきちんと準備や手順をしっかり頭に入れた上で臨んでいます。

Q.あなたの仕事場とそのこだわりについて教えてください。

基本的に自宅で仕事をしていますが、どちらかというとミニマルなタイプで、物はあまり集めないようにしています。今年引っ越ししたばかりですが、その時も段ボールは全部で7箱しかなかったかな。買い物では何か買う時に「これを買わないと死んでしまうかどうか」くらい自問しているかもしれません(笑)。

ナタリーさんのご自宅

家具も新しいものを買うよりサステナブルな観点からヴィンテージでそろえています。ペンダントライトはシルバーのボールが連なっているもので、スタンリー・キューブリックの映画にインスパイアされたようなインテリアになっています。ライトを点けると丸い影がたくさん生まれる感じが気に入っています。

Q.クリエイティブな仕事をする上で、大切にしている日課はありますか?

最近はメモにアイデアを書くことが多いですね。友達と遊びでショートフィルムをつくろうと話していて、メモにこういうシーンがつくれたらいいなとか、アイデアを思い付いた時に書いています。

あとはいろいろな考え方を知るのが好きで、「Philosophize This!」という哲学に関するポッドキャストを聞いたりしています。テーマは「愛」や「存在するということ」だったりさまざまですが、毎回考えさせられます。

あなたのクリエイターの「わ」

◯影響を受けたデザイナーやクリエイター

13歳くらいの時に好きになった写真家がエドワード・ウェストンで、彼のヌードのシリーズに女性の裸の写真があるんですが、足のキズとかもそのまま残してリアルで完璧じゃないところを撮影したのが美しく、それを見て写真を好きになったんです。彼の一番有名な作品は野菜を撮影したものなんですが、野菜というよりは肉体のようなセクシーな写り方になっているんですよね。

あと、小さい頃は引っ越しが多くて友達がいなかったから、テレビが友達のような感じで、映画をたくさん見て育ってきたんです。夜は寝るふりをしてお母さんがドアを閉めた瞬間にテレビをつけて映画を見たり(笑)。アンドレイ・タルコフスキーの映画は特に好きですね。

◯前回の新城さんからの質問:ナタリーは外国人として日本に来て生活をしていて、自分の祖国に対する気持ちの変化がありますか?あるとしたらそれはどんな変化でしょうか?

両親が他界したこともあって、いまスウェーデンには実家がないんですよ。だから自分がいるところがホームになる感覚が強いです。スウェーデンはもちろん好きですが、自分の国だという感覚とは少し変わったかもしれません。日本は私の国じゃないけど、スウェーデンはどうかと言われるとそのスタンスは曖昧になっている気がします。

コロナ前は自分のルーツをより理解するためにルーマニアに行こうと思っていましたが、現在の状況では難しいため、最近はその代わりに関係性がある本やデータを暇な時間に探しています。

10代の時は自意識を持ち始め、祖先がどんな人生を歩んできたかをよく考えてみたところ、突然、祖先と自分を比較して大きなプレッシャーを感じたりしていました。誰にも言われてないんだけど勝手に「私も頑張らないと」って12歳の自分は思っていて(苦笑)。人生の意味とかいろんなことを考え始めて、担任の先生に「人生って何ですか?」って聞いたりしていましたね。

◯ご紹介したいクリエイター

ナタリーさんにご紹介いただくクリエイターは、Shararさんです。

◯Shararさんへのメッセージと質問

友達のグループで尾道に行った際、初めてShararさんとちゃんと話せてとても面白い会話ができたことが印象に残っています。好奇心があって、信念を持った人だと感じました。デリケートな話題や深い話をすることを彼女は恐れません。

外国人として他国で生活し、自分のホームをつくることで、私は「家」という感覚を失い、家の概念をその時の自分の心と体の状態に合わせて変化させてきました。Shararさんもある意味、自分の生き方やアイデンティティーを自分で決めているのだと感じます。ホームやアイデンティティーに対する感覚は、いつも同じなのでしょうか、それとも時代とともに変化してきましたか?

次回のクリエイターの「わ」は、Shararさんにお話をお聞きします。

タイトル画像:金田遼平 聞き手:石田織座(JDN)

ナタリー・カンタクシーノ

ナタリー・カンタクシーノ

スウェーデン出身の写真家。ファッションからドキュメンタリー写真まで、あらゆるものの美しさや本質を表現することを目的に、あらゆるシーンにアプローチしている。

https://www.nathaliecantacuzino.com/