「書体」が生まれる

ベントンと三省堂がひらいた文字デザイン

「書体」が生まれる

三省堂辞書サイト「Word-Wise Web」で連載された、人気コラムを書籍化した本書。新資料からの発見や書き下ろし、多数の写真を加えて再構成されています。

1880年代にアメリカのリン・ボイド・ベントンによって発明された、活字の母型(または父型)を彫刻する機械「ベントン彫刻機」。本機械は「パターン」という金属製の文字原版をテーブルにセットし、フォロワーと呼ばれる針状の部品でなぞると、その動きが縮小されて機械上部のカッターに伝わり、母型が彫ることができます。このAmerican Type Founders(ATF)製ベントン彫刻機は、日本に現存するのは2台のみと言われています。

戦後、日本では「当用漢字」が発表され、印刷・出版・新聞など文字にかかわる多くの業界が大量の活字を必要としました。大日本印刷はベントン彫刻機の国産機をつくろうと考え、三省堂に協力を依頼。国産機が完成すると、毎日新聞社がその量産化に寄与し、岩田母型製造所は大量の母型を国産ベントン彫刻機により生産しました。それぞれの企業が技術交流をしながら、三省堂が確立した手法を直接的・間接的に伝えていきました。

「書体」が生まれたそのとき、美しい活字をすばやく大量に生み出そうと奔走した人々がいた――本書は多数の文献を読み解き、多くの写真を交えて、これまでまとめて語られることがなかった、その奔走の模様を描いています。文字にかかわるすべての人に読んでほしい一冊です。

発行 株式会社三省堂
著者 雪朱里
仕様 A5判、336ページ(巻頭16ページはオールカラー)
価格 3,630円(税込)
ISBN 978-4-385-34915-2