前回に引き続き、RHO FIERA (ロー・フィエラ)の模様をレポート。DESIGN (デザイン) のホールは、欧米を中心としたデザイン・コンシャスな企業が多く、その精度の高いプロダクトは新しいライフスタイルを感じさせるものであった。中でも、北欧企業のクラフト的なものづくり、時代のながれを見据えたかのような完璧なデザインバランスは、落ち着きのある安堵感と、新しい潮流が共存したものであり、モダンかつ美しい生活のあり方を想像させるものだ。
Hall 8 に出展していたスウェーデンの KASTHALL (カストホール) 社の新しいラグは、会場では非常にとても注目を浴びていた。PETRA LUNDBLAD-FRIDÉNのデザインによるMIRRORINGS は、鏡を重ね合わせたときに続いていく形をグラフィック処理により表現したものだ。にじんだ水彩画のように重なる陰影は、室内に非日常の幻想的な空間を創りだすことだろう。
また、AIKOと日本の女性の名前が付けられたラグは、GUNILLA LAGERHEM ULBERGによるもの。日本庭園に咲く花から影響を受けて、オリエンタルな個性をもつ美しいラグを作り上げた。それは、まるで幼い頃に手にした千代紙のような郷愁的な憶いを感じさせた。ブースの天井から吊り下げられた、ラグのマテリアルであるウールの「ボンボン」も可愛らしく、マテリアルを上手く生かしたウィットに富んだ空間であった。
ほかにHall 5 に出展していた、同じくスウェーデンの KINNASAND (シナサンド) 社は、VINTAGE CLASSICと名付けられたキリムのコレクションを提案。シンプルなテクスチャーの織りに、優しいカラーのパターンを配色することで、現代的でモダンな空間に合うプロダクトに仕上げられた。ピンク・イエロー・ブルーと、淡いカラーのコーディネーションは、北欧独特の雰囲気を感じさせるものであった。
そして同ホール、Yチェアの製造で知られている、デンマークのCARL HANSEN&SON (カール・ハンセン&サン) 社の新しいプレゼンテーション。HANS J. WEGNER のYチェアを、先立って発表されたオーシャンカラーシリーズに続き、グリーン系のシトラスカラーシリーズ4色を発表した。白とナチュラルなウッドの配色で構成された空間の中に浮かびあがる爽やかなチェアは、サスティナビリティーのあるデンマークの森林から伐採されたビーチ材を、塗装している。
ミラノ市内のポルタ・ヴェネツィア駅の近くに位置するインテリアショールーム SPOTTIでは、オーシャンカラーシリーズのYチェアがウィンドウに展示されていた。名作と呼ばれるチェアの象徴的な形が、今もなお新しく見えるのは、ものづくりの姿勢と他にない価値観があるからだろう。
また、HANS J. WEGNERの製品化されていなかったイージーチェアCH468の発表。展示されていたのは、1960年にデザインされたプロダクトである。2010年においても色褪せることはない。当時の試作品から再生されたものだ。その他にも、名作のチェアが、シトラスカラーに染められて提案され、清々しい空気を感じさせる展示となった。
新しいマテリアル、新しい形状だけがデザインではない。テキスタイル、ファニチャーともに大切なことは、土地に根付いた文化や経験、真摯な姿勢で取り組む良質なものづくりである。それらのプロダクトは、暮らしの中で快適性を望むためには重要なファクターであり、最も心地の良いデザインの形であると確信した展示であった。
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 天井からウールのボンボンが吊り下げられたKASTHALL社のブース。壁面に展示された右から2枚が新作のMIRRORINGS
 AIKOはオリエンタルスタイルのシックなラグ
 KINNASAND社のVINTAGE CLASSICは優しい色合いのトーンが北欧モダンを引立てる
 ピンクのカラーを配されたキリムはさまざまなシーンのバリエーションを感じさせる
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