今年のミラノ市内は、穏やかな状況ではなかった。アイスランドの火山噴火により、出展者や来場者の脚に大きく影響し、ミラノサローネ最終日に至っても飛行機が飛ばなくなり、帰国の目処が立たない人々が多く、今までにない経験であった。しかし、景気に追い打ちをかけるようなアクシデントにも屈することなく、出展するブランドは各々のデザイナーとのコラボレーションを展開することで、新しいイメージを提案していることが印象的だ。
会場である国際見本市会場、RHO FIERA (ロー・フィエラ) では、来場者の効果的なビジネスを促進するために、ホールごとにデザインスタイルが分類されている。その中でもデザイン的に洗練されたプロダクトを発信するDESIGN (デザイン) のホールを紹介する。
最もデザインの感度の高い企業が集まるHall 8 で、圧倒的なプレゼンテーションを展開しているのが、イタリア・MOROSO (モローゾ) 社である。発泡スチロールをカッティングしたパーツで構成された白いブースで来場者の目を引いた。中でも、PATRICIA URQUIOLA の新作が秀逸だ。新作チェアは、SILVER LAKE。幾何学的なフォルムとボリュームのあるシェイプで構成されたラウンジアイテムだ。あらゆる角度からの異なる姿を感じさせるチェアコレクション。また愛らしささえ感じさせるKALARAは、背と座のマテリアルをアレンジして、展示。細部に至る柔らかいラインが、女性らしい雰囲気を感じさせていた。スウェーデンのクリエイター集団FRONT は、人々に驚きを与える意外性のあるデザインを特徴としているが、今回は球体に削られた木を繋ぎ合わせたラウンジチェアWOOD CHAIRを提案。柔らかく布の様に動く木のファブリックは、人の身体を優しく包み込むデザイン。まだプロトタイプではあったが、その発想の感覚は、非常に軽快なものだ。
その他、ドイツのVITRA (ヴィトラ) 社は、新旧のコレクションを美しくスタイリングした5つのブースを提案した。ANTONIO CITTERIOのデザインによるSUITA SOFAは、マスターピースであるEAMESやJEAN PROUVÉのチェアが現代のデザインと融合し、時代を超越した洗練された空間を作り出していた。
完成度の高いデザインは、次の新しいデザインを想起させるものであり、市場に流れていくシーンが非常に楽しみなものとなった。
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 晴天の見本市会場には、世界各地から多くの人々が集まるはずであったが、火山の影響で減少。
 迫力のあるMOROSO社のブース
 レーザーでカットしたディテールが陰影を作り出し、非常に幻想的な空間
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