XYL Kichijoji

国産の木々でつくられた、トンネル空間

デザインコンセプト
担当:米谷ひろし、君塚賢/TONERICO:INC.

「にほんの木を、大切にします。」をコンセプトに、国産の天然ひのきや杉を使った子ども用の学習机や雑貨を販売している「XYL(キシル)」。

約60年前に植えられ育てられてきた国産の木々は経済の発展にともなって使う量が減り、伐採されないまま山に残され、草刈りや間伐する人も減り、現在では山がやせて荒れてきている。XYLは、山のサイクルを守るために「たくさんの木を使って、将来を担う子どもたちの学習机を作る」という活動をしてきた。

最初に現場を訪れた際、間口が狭く奥に深く、店舗としては不利な条件のようにみえた。しかし、「入ってみたい」と思える空間は何かと考えた際、トンネルのような奥に長い空間が浮かんできた。

おもな構成は、天竜杉の無垢材パネルを525mmの間隔で配置し、横方向を繋ぐ材を棚板としている。それらは小口のみ木地を残し、縦材を白染色、横材(棚板)を黒染色としているため、トンネル空間の陰影を強調し、学習机などの木地色との差を出した。店内には正面横から入って一旦横道を通り、トンネルの横腹から入るようになっている。外から直接トンネルには入れない構造として、外部からも内部からも見通しを確保している。

子どもの頃、学習机が自分の居場所というか小空間だった。その原体験を考えると、ここを訪れた子どもや家族にとってこのトンネル空間での体験が、原風景の一部となってくれたら嬉しい。

所在地 東京都武蔵野市吉祥寺北町1-11-1 1F
設計 米谷ひろし、君塚賢/TONERICO:INC.
施工 株式会社シービーケー
照明計画 株式会社モデュレックス
平米数 71.58m2
撮影 淺川敏