建物が園庭に向かって大きく開き、木のぬくもりがあふれた園内が印象的な「こころ保育園」。
昨年、福岡県北九州市に開設されたこの保育園の設計を手がけたのは、株式会社古森弘一建築設計事務所です。同施設のコンセプトや、建物の特徴などについてお話をうかがいました。
■背景
「こころ保育園」は、郊外の新興住宅地に計画された0歳児から2歳児を対象とした企業主導型保育園です。畑と新しい住宅が混在したエリアにあるため、住宅が連なる風景の中に馴染む建築のありかたを模索しました。
■コンセプト
敷地が南北面に長いことから南側に園庭を大きく確保し、建物全体に十分な採光が確保できる計画としました。各居室にはトップライトを設け、日中は勾配天井を伝って子供たちに優しい光を届け、お昼寝の時間には遮光ロールスクリーンを閉じることで部屋全体の明るさをコントロールでき、中間期の春と秋には換気の役割も担っています。

天井の勾配により、光が部屋に取り込まれる
0歳児室、1歳児室、2歳児室はすべて園庭に向けて並べて配置。相互の部屋は建具を開け放つと大きな部屋となり、ウッドデッキを介して園庭と一体的に使えるようにしました。

ウッドデッキを介して一体的に使える園庭
■課題となった点、特徴
この保育園の園庭には遊具がありませんが、その代わりにウッドデッキと地面に小さな段差を設けることにしました。遊び方がはじめから用意された場所ではなく、子どもたちの繊細な感覚で小さな地面の起伏を頼りに遊び方を見つけていけるような場所になることを目指しました。

ウッドデッキと地面に小さな段差を設けた園庭
0歳児から2歳児までの活動は日を重ねるごとに大きく変化していきます。この場所で自分を取り巻く空や地面との距離感を感じ取り、自身の成長していく記憶を感じ取っていってほしいと思います。
所在地 | 福岡県北九州市小倉南区 |
---|---|
設計 | 株式会社古森弘一建築設計事務所 |
施工 | サンコー開発株式会社 |
構造 | 笹谷真通、宮原尚登 |
敷地面積 | 640.14m2 |
延床面積 | 149.04m2 |
竣工日 | 2019年11月1日 |
撮影 | 大森今日子 |