方眼の間

三尺のグリッドを天井に可視化した、家族の気配を感じられる家

天井の格子梁が特徴的な、福岡県の家族4人が暮らす家「方眼の間」。写真からのびのびとした生活が垣間見えるこの家は、かつて住宅の間取りの基本寸法だった「三尺」を天井に可視化させたそうです。

設計は福岡県北九州市を拠点にする、株式会社古森弘一建築設計事務所が手がけています。制作の背景やコンセプトなどについてうかがいました。

■制作背景

最初の打ち合わせで施主夫妻から方眼紙に描かれたいくつかの平面図を受け取り、このプロジェクトは始まりました。その平面図を詳しく説明してもらうと、家族で議論を重ねた楽しそうな痕跡がうかがえたので、極力その想いを実現したいと考えました。

■コンセプト

かつて住宅の間取りは施主と大工が三尺のモジュールをルールに作り上げてきたと聞きます。しかし、現代の住宅ではその寸法体系がなくなり、畳を設置することも少なくなったため、施主と専門家がやりとりしながら設計する共通のルールがなくなりました。そこで、設計の議論を進めやすくするために、三尺の方眼を天井に可視化することを提案。その方眼上に自由に柱や壁を配置すれば、どんな平面でも実現可能であることを伝えました。

天井の方眼を構成する格子梁は特殊な技術や金物を用いることなく、在来工法の延長で成立させています。分かりやすい構法を確立することで、将来増改築の際、どんな大工でも容易に柱や壁の移動ができるようにしました。施主の想いを実現し、将来の増改築も容易な建築のあり方を天井グリットに託すことで、新たな在来工法を目指しています。

■手法・特徴

柱材は105×105mm、格子梁を構成する材は90×45mm、格子梁に貼る合板はOSB12mmまたは構造用合板12mm、筋交いのために必要な桁は105×210mmのみで構成しました。斜材の効きを考慮し、格子梁の背(高さ)は600mm。その背で構成する場合、柱間3間半以内のスパンまで可能。少ない種類の小さな部材で構成し、全体で効かせることを目指しました。

母屋は施主の想いを極力反映させる一方で、中庭を挟んで、はなれを設けることを提案した。すべての部屋を中庭に向かって開放的に作ることにより「個室は小さくて良い、家族との時間を大切にするために書斎はいらない」というこの家族に合った、家中どこにいても家族の気配を感じられる家になりました。

株式会社 古森弘一建築設計事務所
http://furumori.net/
所在地 福岡県
設計 古森弘一+橋迫弘平+穴井健一/株式会社 古森弘一建築設計事務所
施工 山下建設株式会社
構造 木造
敷地面積 673.49m2
延床面積 232.70m2
竣工日 2018年5月1日
撮影 大森今日子