アイケイ薬局 矢中店

気軽に訪れて相談できる、家のような存在を目指した薬局

明るく光が降り注ぎ、地域のコミュニケーションスペースのような居心地のよさを感じる空間は、群馬・高崎にある調剤薬局です。

一般的な調剤薬局とは一線を画した本店舗について、設計を担当した株式会社丹青社の鶴谷真衣さんに、空間のコンセプトや設計の特徴について伺いました。

■背景・コンセプト

群馬・高崎で多店舗展開している調剤薬局の旗艦店です。

旧店舗では訪れる来局者の方と交流する場がなかったため、その課題を解消すべくリニューアルが計画されました。当初の計画では既存店舗の増築を想定していましたが、明るく居心地の良い空間をつくりたい、そして、病気になったから行くのではなく、普段から気軽に相談しに立ち寄っていただきたいという想いを叶えるには、新たな店舗をつくることが必要であるという考えにいたり、最終的には新築することになりました。

通常のかかりつけ薬局を超えた、地域に密着した薬局・薬剤師を目指していることから、「みんなの和が家-Hygge Style -」というコンセプトを設けました。調剤薬局としての機能だけでなく、さまざまな相談に応じたり、物販ゾーンに化粧品のカウンセリングからエステまで配備するなど、普段から気軽に訪れることで、地域の方々の未病の発見にもつながる場へと進化させた薬局になっています。

入口を入ると、2本のシンボルツリーが印象的な待合があり、その奥に来局者の視線に配慮した大理石の調剤カウンターが9ブース配置されています。家具の形状・配置で来局者の目線が自然と交わらないような工夫をこらしたロビー空間は、カーテンで間仕切ることで講習会や体操教室など多目的に活用でき、系列の店舗や病院とも連携し、さまざまな情報発信もおこなっています。

居心地の良い空間の中で気をつかわずにくつろぎ、親しい友人や大切な家族に相談するように、薬剤師やスタッフと来局者がつながることができる、コミュニケーションの創出を目指した施設です。

■手法、特徴

病気の方が来られる調剤薬局であるため、光を浴びることで健康な気持ちになってほしいとの願いから、光あふれる空間にすることを大前提とし、3面ガラス窓でどの場所にいても「光浴」ができる、来るだけで元気になれるような薬局を目指しました。日中は自然光をたくさん感じられ、日が落ちてくると人工光が自然光とシームレスにつながります。

また、シンボルツリーを中心に、中央に全面ガラス張りの調剤薬局の機能を、両サイドにイベント空間にもなるロビーと、カウンセリングができるカウンターを備えた物販コーナーを配することで、どの場所にいる来局者にもスタッフの目が届く、ホスピタリティあふれる空間を実現しました。

これからのアイケイ薬局を体現する店舗をつくっていく中で、コンセプトの「みんなの和が家-Hygge Style -」を反映させたロゴを作成すると共に、店舗の目の前にある小学校の児童をはじめ、地域の方々に愛着を持っていただき、街のシンボルとなるよう直径2mもあるこだわりの塔時計も設置しました。丹青社は、この塔時計のある外装、内装デザインからロゴ、名刺デザインなどまで総合的にプロデュースしました。

なお、本店舗は丹青社の協業先である、ユニバーサルデザインのコンサルティングをおこなう株式会社ミライロ(2018年丹青社と業務提携)と共に実地調査と検証をおこない、通路幅や待合の車いすスペースのあり方、調剤カウンターの寸法形状、補助の方の居場所などに配慮した空間を目指しました。ロビーには子どもから年配の方まで気軽に使える高さのパーテーション機能も兼ねた本棚を配置するなど、ユニバーサルデザインに配慮した空間を実現しています。

年配の方から若い人まで、そこに行くのが当たり前のように気軽に相談に行ける、主治薬剤師のいる行きつけの薬局になっていってほしいなと思います。

所在地 群馬県高崎市矢中町192-11
デザインディレクション、内外装デザイン・設計 鶴谷真衣/丹青社
ロゴデザイン 高橋賢治/丹青社
制作・施工 新井直之/丹青社
プロジェクトマネジメント 橋爪晶平/丹青社
竣工日(開業日) 2021年5月6日
撮影 御園生大地