ガラスのアトリエ

3つのゾーンに区切り、植物の魅力を発信する場

デザインコンセプト
担当:安齋好太郎/Life style工房

フラワーアレンジメント教室のアトリエの設計を依頼された。建主は、「花を生けるためだけの場ではなく、植物の命を感じられる場であること。その美しさに触れるよろこび、デザインするたのしみを伝えたい。生徒はもちろん、花を贈る相手、さらには地域の人々にも植物の魅力を感じてほしい。」との望みがあった。

敷地周辺は住宅地のなかに畑が点在する地域だ。アトリエの外観はビニールハウスにヒントを得て、鉄のフレームにガラスをはめた箱の内側に、木造のアトリエ空間を配置する構成とした。

ガラスと木の箱によって、アトリエは3つのゾーンに区切られる。まず、木とガラスの間の空間は、植物を生育する「生産ゾーン」。植物の生命力を感じながら育てることで、成長するよろこびの発見、デザインの発想につなげる。つぎに、木の箱の内側、ハウスの中心は「アトリエゾーン」。花材のほか、ときに生産ゾーンの植物を取り入れながら、飾る場所や贈る方を思い浮かべ、それぞれのストーリーを紡ぎながら生けてゆく。そして、ガラスの外側、地域の人々が通行する共有部分が「コミュニティゾーン」。ちょっとした植物園のように、散歩や通勤で通りすがる人に、生産ゾーンの緑が季節を伝える。

竣工は東日本大震災から2年後の2013年。こんなときだからこそ、生活に癒しと彩りをくれるお花のちからで福島を元気にしたいと願った建主の想いは、つつましく、でもたしかに、住宅地の一角から発信されつづけている。

主体構造・構法 木造
階数 地上1階建
敷地面積 361.71m2
建築面積 179.90m2
延床面積 235.79m2
設計 安齋好太郎/Life style工房
施工 Life style工房
所在地 福島県福島市
施工期間 2012年11月~2013年5月
撮影 © life photo works