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個々人の「芸術祭」の在りかたを問い、新しい「祭り」の創出を目指す「札幌国際芸術祭」

個々人の「芸術祭」の在りかたを問い、新しい「祭り」の創出を目指す「札幌国際芸術祭」
夏から秋にかけて全国各地で開催されるアートフェステイバル。それぞれの地域の個性や歴史などにフォーカスして、その場でしか体験できないものとなっています。もちろん、そこにはアートだからこそできる表現や批評性という軸がしっかりとあります。各芸術祭のテーマや注目のアーティストなど、見どころや魅力をごくごくかんたんにご紹介します!やはり、実際に足を運んで楽しむのがいちばんです。ENJOY! ART FESTIVAL!
札幌国際芸術祭とは?

3年に一度、札幌市で行われる国際的なアートフェスティバル「札幌国際芸術祭」。第2回目となる「札幌国際芸術祭2017(以下、SIAF2017)」は、2017年8月6日(日)から 10月1日(日)までの57日間にわたって開催されます。最先端の技術を活用した作品から、なつかしさや過去の歴史を感じさせるような作品やコレクションまで、市内のいろいろな場所で公開されます。

札幌国際芸術祭の特徴は、言ってみれば「57日間、変化し続ける芸術祭」ということです。時間や環境との関わりで変化する展覧会や、1日限りの ライブイベントや即興でつくられていくパフォーマンス、 偶発的な事象により姿を変える作品など、芸術祭は常に変化していきます。体験を重ねるごとに新しい発見があるはずです。

テーマ/サブテーマ

SIAF2017の今回のテーマは「芸術祭ってなんだ?」。ちょっと「??」なテーマが設けられています。ゲストディレクターであり、参加アーティストでもある、音楽家の大友良英さんはテーマについて以下のように語ります。

ゲストディレクターは音楽家の大友良英さん(撮影:クスミエリカ)

ゲストディレクターは音楽家の大友良英さん(撮影:クスミエリカ)

“今回ゲストディレクターへの就任依頼が来たときに、わたしがまず最初にひっかかり、そして今も考え続けているのが「芸術祭」ってなんなのかということです。「芸術」ってなんなんでしょう。それが「祭り」になるってどういうことなんでしょう。

震災後、わたしが取り組んできた活動の中でも、とりわけ大きな比重を占めてきたのが、これまでにない新しい「祭り」の創出でした。ここでいう「祭り」とは単に歌ったり踊ったりの場を作ることではなく、いや、それももちろん重要ですが、なにより、参加する前と後とで世界の見え方が一変するくらいの、そんな強烈な場を自分たちの手で作り出すことが、わたしの考える「祭り」です。今回はここに「芸術」や「国際」、そして「札幌」が加わります。さて、どうしていったらいいものか。

そんなことを考えれば考えるほど、これらの問いに対して自分一人で考えて、答えを出すのはもったいないと思うようになりました。市民参加の芸術祭ですから、市民の数だけ答えがあるはずで、こうした問いに対して、正解がひとつである必要なんてないと思います。正解とか、正論を探すのではなく、実際に手を動かし、誰かと何かを作るところから見えてくる何か、感じる何かであったほうがいい、わたしはそう考えています。”
(公式サイトより抜粋)

また、「ガラクタの星座たち」というサブテーマも設けられています。こちらに関しては、大友さんによるテキストがおもしろいので、そちらを読んでいただいたほうが良いので割愛します。

▼札幌国際芸術祭ーテーマ/サブテーマ
http://siaf.jp/about/themes

会場

緑に囲まれた広大な敷地を有する札幌芸術の森やモエレ沼公園。都市の活気と歴史が同居するまちなかエリア。 SIAF2017では、特徴の異なる各会場を巡ることで、 札幌の多様な魅力を体感していただくような会場設定が試みられています。

(モエレ沼公園エリア)
世界的な彫刻家イサム・ノグチが基本設計を行い、「公園全体をひとつの彫刻作品」とするダイナミックな構想により造成が進められたのがモエレ沼公園。札幌市の北東に位置し、市内中心部から車で30分ほどでアクセスできます。

モエレ沼公園エリア

モエレ沼公園エリア

(札幌芸術の森エリア)
豊かな自然環境のなかにある広さ40ヘクタールにおよぶ敷地の芸術の森と、隣接した札幌市立大学芸術の森キャンパスでは、現在さまざまに活躍するアーティストの新作をみることができます。ライブパフォーマンスも数々開催されます。

札幌芸術の森エリア

札幌芸術の森エリア

(まちなかエリア)
街の中央を横断する大通公園、その南側に位置する狸小路、すすきの。狸小路は、東西に延びる約900メートル、店舗数約200軒の商店街を有し、地元住民の日用品の買い物や、海外観光客の観光・お土産購入スポットとしてにぎわいます。一方、夜の人口が約8万人ともいわれるすすきのは、新宿の歌舞伎町、福岡の中洲とともに、日本三大繁華街として全国的にも有名。SIAF2017では新たな試みとして、「まちなか」を芸術祭の主要なエリアに位置づけています。

そのほか、(資料館エリア)(円山エリア)(中島公園エリア)があります。今回のSIAF2017では、実にさまざまな場所が芸術祭会場として使用されます。それは、会場が決定した上で、作品やイベントのプログラムが決定されたのではなく、アーティスト・企画者が自らやりたいことを場所を探すことからはじめているプログラムが多いからとのことです。遠方でなかなかアクセスしにくい会場もあり、一日で全エリアをチェックするの難しいですが、お時間のある方はぜひ隅々までチェックしてみてください!

注目のアーティスト/プログラム

サブテーマ「ガラクタの星座」につながる、アーティスト106組が既存のジャンルに収まらない作品を札幌市内の約40か所に展開。美術、音楽、演劇といった既存のジャンルに収まらない表現が数多く紹介されます。星屑のように散らばる作品群を、訪れる人自らが発見し、それぞれを繋ぎ合わせ自分だけの星座をつくる……そんな芸術祭となりそうです。

また、SIAF2017は「札幌のまちと一緒につくる芸術祭」ということが色濃く打ち出されています。東日本大震災が起こった2011年、「プロジェクトFUKUSHIMA!」が福島県で開催した野外フェスティバルをきっかけに生まれた、布を集めて縫い合わせ、パッチワーク状の大風呂敷をつくって広げる「大風呂敷プロジェクト」(8月6日〜10月1日)や、小学生から18歳までの「誰でも」が、能力や経験にかかわらず参加できるオーケストラ「さっぽろコレクティブ・オーケストラ」(8月27日)などが象徴的です。

大風呂敷プロジェクト(撮影:山岸清之進)

大風呂敷プロジェクト(撮影:山岸清之進)

さっぽろコレクティブ・オーケストラ

さっぽろコレクティブ・オーケストラ

モエレ沼公園会場では、公園の象徴であるガラスのピラミッドを拠点として、モエレ沼公園の歴史と彫刻家イサム・ノグチの視点を現代へつなぐ展覧会「RE/PLAY/SCAPE」が開催。 屋内空間では大友良英+青山泰知+伊藤隆之による、100台以上もの中古のレコードプレーヤーを使用した作品、「without records」の新作をモエレ沼公園バージョンとして発表。本作を中心にさまざまな作家のコラボレーションが行われます。

without records

without records

そのほか、「アジアン・ミーティング・フェスティバル2017 札幌スペシャル」も注目。日本とアジアのミュージシャンをもっと交流させたいという思いから、大友良英さんが2004年にスタートした「アジアン・ミーティング・フェスティバル」は、2014年からは「アンサンブルズ・アジア」の一部門として、実験音楽・即興音楽・ノイズの分野におけるアジア有数のフェスティバルとして知られています。2017年もアジア各地からアーティストが来日し、福岡、京都、仙台での公演を経て札幌で一大フィナーレを迎えます。札幌公演では、地元のアーティストも参加するほか、スペシャルゲストに灰野敬二さんとオーレン・アンバーチさんを迎え、2日間にわたってさまざまな組み合わせや編成での演奏が行われます。

開催概要
名称:札幌国際芸術祭2017(SIAF2017)
会期:2017年8月6日(日)~10月1日(日)
会場:モエレ沼公園、札幌芸術の森、札幌市立大学、北海道大学総合博物館、札幌市円山動物園、円山公園、札幌宮の森美術館 ほか
詳細URL:http://siaf.jp/