紙の印刷から加工までを一貫しておこなう福永紙工株式会社。1963年に東京・立川にて創業以来、さまざまな印刷物を製造し、多くの実績を積み重ねてきた。2006年からはデザイナーや建築家と取り組むプロジェクト「かみの工作所」をスタートし、「空気の器」や「めいしばこ」などさまざまなプロダクトを世に送りだしてきた。
さらに紙の可能性を追求するために2015年からはじめた、「ペーパーカードデザインコンペ」が今年も開催された。ペーパーカードデザインコンペは、誰もが参加できる環境をつくり、アイデアを形にしたいと思っている人と一緒に製品化までを目指していく企画だ。
2017年のテーマは「おくるをつくる」。気持ちを伝えるための新しいおくる形を募集した。応募総数は357点と、これは前回の2倍以上の数。会場に並んだたくさんの作品からは、応募者の思いや熱が伝わってくるような濃厚な空気が充満していた。本記事では審査会の様子や受賞した作品、製品化に向けての進捗をレポートする。
ペーパーカードデザインコンペ2017 審査会
審査員は、福永紙工株式会社の社長・山田明良をはじめ、「かみの工作所」の製品に多く関わっているデザイナーたちの以下10組。エマニュエル・ムホー/岡崎智弘/スイッチデザイン/鈴野浩一/野老朝雄/長岡勉/原田祐馬/三澤遥/三星安澄/山田明良(敬称略)。
審査は大きく3つに分けておこなわれた。まず最初は審査員ひとりひとりに付箋20枚が渡され、好評価の作品に付箋がつけられていく。次に付箋が複数枚ついたものをまとめ、その中からさらに数をしぼっていく。審査中、しばしば話題にあがった争点は以下だ。
・魅力的なアイデアか
・テーマに則しているか
・類似品の有無
・技術的に製品化可能なものか
作品の完成度やアイデアはよくてもテーマに則していなかったり、既視感のあるもの、製品化するには難しい…といったものは少しずつ省かれていった。審査員10組の多角的な視点から選ばれた、受賞作品を紹介する。
【グランプリ】DOT ANIMATION CARD/内藤繁樹
パンチングの中の紙をスライドさせると整列した無数の穴から文字や絵が現れます。目にしたことのある技法でありつつも、グラフィックの完成度に研究心が垣間見れて、高評価を得た。お祝いや告白など、メッセージカードにぴったりの作品。
【優秀賞】切手紙/鈴田克弥
まさに名前のとおり、切手のように切り取り、折って封筒にできる手紙。受け取る側の楽しさだけでなく、送る側の楽しさも創出する作品になっている。また、穴のピッチを大きくしたことで印象が変わる驚きもある作品。
【優秀賞】バタフライレター/川田敏之
一見、蝶の絵柄の付いた封筒のようだが、封筒の中にある帯を引っ張ると、たちまち蝶がはばたく仕組みになっている。自由研究などで扱われる、シートの磁石をつかったもので、あえて封筒に取り入れたことが斬新だと評価された。シンプルなだけにプロダクトとして追求してみる可能性がある作品。
【審査員賞】
次ページにて、審査員たちの審査にあたっての視点と、率直な感想を紹介する。