紙媒体とその周辺のカルチャーがつまった、好奇心をくすぐる名古屋の本屋「ON READING」

紙媒体とその周辺のカルチャーがつまった、好奇心をくすぐる名古屋の本屋「ON READING」

ふだん行く機会の少ない街に訪れた時、その街で人気の本屋にも行きたいと思ったりしませんか?

先日、名古屋へ出張する機会があったので、以前から気になっていた「ON READING」にお邪魔して、店主の黒田義隆さんにお話をうかがってきました。

ON READING

レトロなマンションの2Fに店舗を構える「ON READING」、東山公園駅のすぐ近く

「ON READING」は、一般書籍の新刊や古本だけでなく、国内外のインディペンデントな出版物、CDや雑貨などアイテムも取り扱う「感じる、考える人のための本屋」で、おもしろい本・出版物とその周辺のカルチャーが好きな人にはちょっと知られた存在だ。

一見すると雑多なようだが、どこか統一感もある新刊書籍のセレクト

一見すると雑多なようだが、どこか統一感もある新刊書籍のセレクト

背表紙のタイトルを見ているだけで楽しい古本棚

背表紙のタイトルを見ているだけで楽しい古本棚

名古屋市の長者町で営業していた「YEBISU ART LABO FOR BOOKS」が前身で、2011年に名古屋市の東山動植物園のすぐ近くに移転。「ON READING」と名前を改めてスタートした。長者町の店舗が手狭になっていた頃、たまたま知り合いの雑貨店が長野に移ると聞いて、その空き物件への移転を決めたのだという。

もともとの品ぞろえはアート色が強かったが、だんだんと国内外のインディペンデントなZINEや、Tシャツ、雑貨などが増えていったという。自らを「relax世代」(※休刊した雑誌「relax」を愛読していた世代)と語るように、少しとぼけたユーモアや毒気を含んだものが数多くそろう。例えば、「ON READING」のロゴもデザインしたSTOMACHACHE.による、「THE BOOKS ARE ALLRIGHT(本なら大丈夫さ)」とプリントされたオリジナルTシャツは、すべてのブックラヴァーに捧げられた小気味の良いアイテムだ。

「relax」の編集長だった岡本仁さん公認、STOMACHACHE.がデザインした「relax」ブートレッグ(?)ステッカー

「relax」の編集長だった岡本仁さん公認、STOMACHACHE.がデザインした「relax」ブートレッグ(?)ステッカー

「ON READING」オリジナルのアイテムをはじめ、さまざまな雑貨が並ぶ

「ON READING」オリジナルのアイテムをはじめ、さまざまな雑貨が並ぶ

ちなみに店名の由来は、アンドレ・ケルテスの写真集のタイトル「ON READING」から。「人々が本を読んでいる姿って美しいなあと思って」と教えてくれた。

店名の由来になった、アンドレ・ケルテスの写真集「ON READING」

店名の由来になった、アンドレ・ケルテスの写真集「ON READING」

名古屋の中心地から離れた場所にもあるにも関わらず、わざわざ「ON READING」を目指して東山公園駅まで訪れる人も多く、(筆者のように)うわさを聞きつけて東京から来客も多いのだとか。だからといって敷居の高い店という印象はまったくなく、むしろふらっと入れるよう開かれた雰囲気がある。こんな良い店が近所にあったら、しょっちゅう入り浸ってしまうだろうなと率直に思った。

名古屋の土地勘がほとんど無いので、東山公園駅周辺はどんなエリアなのか聞いてみたところ、「東山動植物園が近くにある以外は良い意味で色がない街」とのこと。明るい光が射し込む店内、そこにはゆっくりとした時間が流れていて、街のゆるやかな空気のようなものも感じられた。

併設のギャラリースペースでは、イラストレーターや写真家、アーティストなど、彼らが気になる新進気鋭作家の展示が行われる。展示内容は2~3週間くらいのペースで変わるとのこと。トークショーやアコースティックライブなども行われる。

また、2009年から「ELVIS PRESS」(この人を食ったようなネーミングセンス!)というパブリッシングレーベルも運営。マイペースにリリースを続け、現在までに10冊が発行されている。田口美早紀さん、塩川いづみさん、遠山敦さん、fancomi、百合草尚子さん、鈴木裕之さん、會本 久美子さん、STOMACHACHE.、小林豊さん、源馬菜穂さん、伊藤よう子さん、いずれの作品も作り手の温度が伝わってくるようなものばかりだ。

「ELVIS PRESS」から発行されたばかりの、塩川いづみさんの「(between) YOU & ME」も並ぶ

「ELVIS PRESS」から発行されたばかりの、塩川いづみさんの「(between) YOU & ME」も並ぶ

最近はオンラインショップでは海外からの注文が多いらしい。黒田さん自身も台湾や韓国などのアジアのアートブックフェアには注目していて、「ON READING」での出展も考えているそう。また新たな動きが生まれるかもしれない。これは期待するしかない!

bookshop and gallery ON READING
http://onreading.jp/