岩手県・西和賀町が本気の挑戦、「地方創生 地域づくりデザインプロジェクト」始動!

岩手県・西和賀町が本気の挑戦、「地方創生 地域づくりデザインプロジェクト」始動!

「地方創生」と聞くと何を思い浮かべるだろうか?

地域資源を活用した商品やサービス?
それとも地域の魅力をアピールした観光?
あるいは新しい雇用の創出?

そのすべてが正解だといえそうだし、同時にそのすべてが課題だともいえそうだ。正解がわかっているのなら、なぜそれが課題になるのか?端的にいうなら、地方自治体とその地元企業だけでは、資金調達や問題解決のためのデザイン思考、全国を視野に入れたビジネス展開の知見が少ないからだろう。

それぞれの地域で自分たちの「地方創生」を考えるなか、標高1,000m級の奥羽山脈に三方を囲まれた岩手県の西和賀町から、「地方自治体×地元企業×信用金庫×デザイナー」が連携した「地方創生 地域づくりデザインプロジェクト」がスタートした。同プロジェクトは、西和賀町の事業者、岩手県在住のデザイナー、北上信用金庫が連携し、地域資源を活用した商品やサービスの創出、そして魅力あるブランドづくりを進めていくものだ。地方創生先行型予算を活用した、こうした取り組みは日本初となる。

JR北上線のほっとゆだ駅

JR北上線のほっとゆだ駅

具体的にプロジェクトの実施は、信用金庫のセントラルバンクである「信金中央金庫」、地域企業の経営相談役である「北上信用金庫」、岩手県内企業の商品開発を支援する「地方独立行政法人岩手県工業技術センター」、グッドデザイン賞を主催するプロモーション機関「公益財団法人日本デザイン振興会」が一体となり、「つくる」から「売る」までをトータルでバックアップしていく。

「地方創生 地域づくりデザインプロジェクト」のスタートにあたり、去る9月1日に西和賀町役場湯田庁舎で記者発表会が行われた。関係者が一堂に介してのキックオフだ。細井洋行町長は、「このままのデザインでは売れない。生き残り戦略に挑戦して、魅力ある商品を生み出していきたい」と宣言した。

細井洋行町長

細井洋行町長

プロジェクト参加事業者は、「雪国のだんご屋 団平」「お菓子処たかはし」「工藤菓子店 銘菓およね饅頭本舗」「お菓子のサンタランド株式会社」「株式会社西和賀産業公社」「株式会社湯田牛乳公社」の6社。

プロジェクト参加デザイナーは、金谷克己氏(株式会社エディションズ)、木村敦子氏(kids)、小笠原一志氏(HAND DESIGN)、小笠原雄大氏(OGA GRAPHICS)、岩井澤大氏(ウィーデザイン)、堀間匠氏(ドミノデザインワークス)、岩手県内在住の6名。それぞれ担当は決めつつも、個別対応ではなくチームでデザイン提案・商品開発を行っていく。

プロジェクト参加事業者の代表6名

プロジェクト参加事業者の代表6名

プロジェクト参加デザイナー6名

プロジェクト参加デザイナー6名

公益財団法人日本デザイン振興会の鈴木紗栄氏は、本プロジェクトについて以下のようにコメント。
「オリジナリティのある優れた商品やサービスを生み出すためには、デザインの力だけでなく経営的支援も両方必要という考えから、地域金融機関とタッグを組んだ中小企業へのデザイン導入支援の可能性をここ数年探ってきました。この事業では、地元の企業と地元のデザイナーを結びつけるという点も大きなポイントです。地域の方々が一丸となって今後も継続して協働できる、サステナブルな取り組みを目指しています」

記者会見後、デザイナーから事業者に対しての提案、意見交換が行われた。まず、プロジェクトのスキームを共有。事業者の課題の解決~ブランド戦略・商品開発~全国での発表~西和賀への集客へつなげていくイメージだ。

この日発表されたデザインプロジェクトのコンセプトは「雪」。西和賀町のイメージとして、雪、水のまち、錦秋湖、温泉などのキーワードが挙げられ、「雪」に改めて着目して展開をしていくことになった。西和賀町は冬季には6m以上の累積降雪量となる特別豪雪地帯であり、町民にとってはうんざりするような邪魔者でしかないのだが、逆転の発想で「雪」を観光資源にかえる狙いだ。特に海外からの旅行者に向けて強みとしていきたいところ。商品開発は白を基調したイメージ展開を予定。現行の商品のリメイク、パッケージやネーミングの再考、そして新商品の開発をしていく。いまは、バラバラに展開されているものを、このプロジェクトから生まれた商品が一緒に並べて立体的にアピールし、西和賀町のブランドイメージを強固なものとしていくことを目指している。

雪があるから溶けて水になる、その水があるから美味しいものがある、というブランドストーリーを描ければという意見もあがった。

商品リニューアル対象となっている「雪国のだんご屋 団平」の極西わらび餅と雪ほたる

商品リニューアル対象となっている「雪国のだんご屋 団平」の極西わらび餅と雪ほたる

プロジェクト参加事業者「株式会社湯田牛乳公社」のプレミアム湯田ヨーグルト

プロジェクト参加事業者「株式会社湯田牛乳公社」のプレミアム湯田ヨーグルト

現在決定しているスケジュールでいうと、2016年3月に六本木の東京ミッドタウンで開催される、「復興デザインマルシェ」での発表会がひとつの通過ポイントとなるだろう。同時にPR展開として、「西和賀ネット」と連動したデザインプロジェクトのWEBサイトの構築や、商品の特性や生産者の人柄などを伝えるタブロイド(フリーペーパー)の発行などを検討している。

当然のことながら、すべての事業者に「雪」に結びつく商品があるわけではないので、短い期間でそれをどう形にしていくのかが目下の課題だろう。

デザインを通じた社会問題の解決は、これから多くの場所で求められるミッションといっても良い。私たちもJDN(ジャパンデザインネット)と名乗っている以上、こうした取り組みを積極的に紹介していきたい。